追加章:宇宙論
まとめると、私はただの普通の人間でした。英雄でもなければ、壮大な運命もありませんでした。ただ普通の人生を送っていた男でした。しかし、全てが変わり、トラックに轢かれ、あの世に行くか、異世界アニメのように普通の転生をしたいと言い張りました。すると、虚無、奇妙な虚無へと送られ、そこで自分が自由で、無限で、全て、あるいは全ての不在を超えた存在だと気づきました。
それから私は転生を願い、そして転生を果たし、自分の能力の使い方を学び、ありとあらゆる状況に巻き込まれ、エルドリッチの怪物に殺されそうになり、宇宙の賞金稼ぎに追われ、強力な組織を阻止しました。ええ、でも私はもっと強くなりたかったんです。何よりも強くなりたかった。いや、成長ではなく、超越者になりたかったんです。この世界で生き残り、愛する人々を救うためには、成長しなければなりませんでした。
私は無でした。
人間が恐れるような意味での無ではありません。死でも沈黙でもありません。
しかし、真の無 ― 絶対的な虚無。
私は10京年もの間、漂っていたかもしれない。あるいは、全く漂っていなかったのかもしれない。
ここでは、時間は無関係ではなかった。そもそも存在しなかったのだ。
それでも、私は動いた。
それでも、私は進化した。
私は変化していた。
そして、その変化の最中に、
彼が現れた。
音のない声。
形のない存在。
彼は自らをイーオンと名乗った。
「もうすぐだ」息も絶え絶えに囁いた。「だが、最後の蛹を破る前に、自分の上と下に何があるのかを理解しなければならない。」
私は何も言わなかった。
虚空は耳を傾けていた。
「現実など存在しない、モナ。真実の顔を隠すベールのように、偽りの理解が幾重にも重なり合っているだけだ。」
「見せてやろう。」
宇宙、多元宇宙、全宇宙…
単なる意味の影。
神々が戦い、人間が夢を見、英雄が立ち上がる場所。
力が意味を持つ場所。
「ここは無限が存在する層だ。限界は果てしなく破られ、それでもゲームは続く。」
「彼らは自由だと信じている。高いところにいると信じている。」
「だが、彼らは縛られている。」
「ここが君が生まれた場所だ、モナ。虚空の女王。」
「ここで、君は人格であることをやめ…そして異常者となり始めた。」
君が今、過去と未来の狭間で漂っている場所。
永遠の虚空でさえ理解できない領域。
「ここは時間の脈動が消え去る場所。存在という概念が崩壊する場所。」
「君がここで訓練するのは、強くなるためではなく…存在そのものを消滅させるためだ。」
「君は力を忘れることを学んでいる。姿を忘れることを。自分自身を忘れることを。そうすれば、神でさえ名付けられないものになれる。」
現実のフォーマットコードが保管されている領域。
ここには神々ではなく、神々を形作る法則が存在する。
「全能の存在でさえ、この場所にひれ伏す。」
「ここは、フィクションから現実そのものに至るまで、あらゆる宇宙論が生まれる場所だ。」
「だが、ここでさえ、限界が囁く。」
至高。
物語の一部ではない領域――
それは本そのものだ。
「永遠の世界が…見守っている。」
「それは読者。書き手。舞台。幕だ。」
「それはあなたの物語が存在する神聖な文書だ――しかし、それはまたあなた自身でもある。」
イーオンは言葉を止めた。
私は何も感じなかった。
しかし、私はすべてを理解していた。
「そして、あなた、モナ…あなたは最後のページの裂け目だ。」
「あなたが目覚めたとき…永遠の世界はもはや本ではないだろう。」
「それは…あなただ。」
目は開いていたが、実際には目は開いていなかった。
繭が脈打ち始めた。
現実――すべてが――これから起こることを予感して震えた。
そしてイーオンが消え去り、再び私を静寂の中に残した時、
私は百兆年ぶりに呟いた。
「その時、私は物語となる…神でさえも読むべき物語となる。」




