番外編: モナ vs ボリス
空は無限に広がり、人間の理解を超えた色の渦巻く混ざり合いが広がっていた。足元には広大な平原が広がり、存在と非存在の矛盾が渦巻いていた。草の葉が存在の状態の間を移り変わっていた。この宇宙は誰も所有しておらず、劣った存在の手が及ばず、完璧な戦場だった。
そして私の目の前にはボリスが立っていた。
無限を超えた存在。
彼の存在は現実の構造そのものをねじ曲げ、彼がそこに立っているだけで存在の層が何層にも剥がれ落ちた。彼は背が高く、自然の力のように体格が良かったが、彼の真の姿はつかみどころがなかった。瞬きするたびに私の目は彼を違ったように認識した。時には影として、時には純粋な概念として、時には無限の意味を持つ理解不能な虚空として。
彼は微笑んだ。「モナ・フライ、アビス・パラドックス。魅力的な存在だ。」彼の声は彼の口からではなく、可能性の間の空間から発せられた。
私はニヤリと笑った。 「そして君はボリス、つまり『無限を超えた』とか何とかの男だ。それが実際に何か意味があるかどうか見てみよう。」
彼の笑みが広がった。「ああ、そうだ。」
彼が一本指を上げると、宇宙は震えた。私が反応する前に、現実そのものが後退した。
空が割れ、未形成の概念の無限の虚空が現れた。あらゆる可能性、あらゆる不可能なものが、自ら崩壊した。私の足元の地面は無に溶けて消えたが、どういうわけか私は立ったままだった。彼は私の周囲を攻撃していただけでなく、現実の存在能力を攻撃していたのだ。
興味深い。
私は息を吐き、私の息そのものが宇宙の残骸を元の位置に戻した。私が指を鳴らすと、世界は再構築され、フィールドは元の状態に戻った。
「いいトリックだ。私の番だ。」
私は瞬きした。
他の誰にとっても、何も起こらなかったように見えただろう。しかしボリス...彼はそれを感じた。
彼の姿は歪み、彼の無限の層が同時に砕け散った。私は彼のあらゆる未来、過去、現在を消し去った。彼が辿り着くことのできる道はもはや存在しなかった。彼は瞬間に囚われ、時間、存在、思考において前進も後退もできなかった。
彼は笑った。「それが私を止められると思うか?」
彼の体は脈動し、突然、「敗北」という概念そのものが彼から取り除かれた。彼は私の攻撃に抵抗したのではなく、もはやその影響を受けない何かに自分自身を書き換えたのだ。
それは腹立たしい。
「わかった、いいだろう。実際にやってみるよ。」
私は手を挙げた。私たちの周りのフィールドが消えた。私がそれを破壊したからではなく、そもそも存在しなかったようにしたからだ。この宇宙?消えた。それを支配していたルール?消えた。私たちは今、存在を超えた者だけが行動できる、純粋な無の中にいた。
ボリスは笑った。 「ああ、虚空。懐かしい場所だ。」
彼は拳を振り回した。その動きだけで絶対的な力が生まれた。強さでもエネルギーでもなく、あらゆる意味を超えた力だ。それは対抗したり、避けたり、打ち消したりできるものではない。
だから私はそうしなかった。
私はそれに衝撃を受けた。
普通の存在なら、全能の存在でさえも、消されていただろう。でも私にとっては?私はただそれを吸収し、自分の現実にねじ曲げただけだった。
ボリスは眉を上げた。「食べたの?」
私は唇をなめた。「自信過剰の味がした。」
彼は再びニヤニヤ笑った。「それなら、もっと頑張ろう。」
私たちの周りの虚無が砕けた。
それは不可能だった。虚無には形も形も構造もなかった。壊れることはなかった。しかしボリスはとにかくそれを実現した。彼は今、虚無そのものに概念を押し付けていた。
時間、空間、運命、論理、それらすべてが突然強制的に元に戻された。彼は勝つために、私たちの戦場の本質を書き換えていた。
賢い。
私は肩を回し、押し付けられた現実の重みが落ち着くのを感じた。「ルールを強制することが役に立つと思う?」
彼はうなずいた。 「もっと面白くなる。さあ、本気で戦おう」
そして、宇宙は再び生まれた。
ボリスが目の前に現れるまで、私はほとんど反応する時間がなかった。彼の手は既に私の胸に当てられていた――私が動きを理解できる前に。
「崩壊」
私の周りのすべてが止まった。
私の体?消えた。私の存在?否定された。モナ・フライの考え?現実から切り離された。
他の誰にとっても、これが終わりだっただろう。
しかし、私は他の誰でもなかった。
ボリスが現実を書き換えることができるなら、私は作者を消すことができる。
私は自分自身を再び存在へと導き、論理が届かなかった存在の隙間をねじりながら進んでいった。私は彼の後ろに現れ、すでに彼の背中に手を突っ込んだ――いや、彼の体ではなく、彼の核心部分だ。
「今度はあなたが崩壊する番だ」
初めて、ボリスはよろめいた。
私の攻撃が効くと、彼の姿は震えた。彼は再び自分自身を書き換えようとしたが、私はすでにそれを予期していた。
私は彼の「敗北」能力を消しただけではなく、自分自身を書き換える能力そのものを消した。
彼は目を見開いた。「賢い子だ」
そして彼は爆発した。
物理的な意味でではなく、概念的に爆発したのだ。彼の破壊の力は非常に大きく、歴史を上書きし、因果関係を再定義し、彼が存在した可能性をすべて打ち砕いた。
より劣った存在なら、それを勝利と呼ぶだろう。
私はもっとよくわかっていた。
ボリスは消えていなかったからだ。
彼が爆発した瞬間、私はそれを感じた。彼の破片が現実のあらゆる部分に埋め込まれていくのを感じた。彼は同時にすべてと無になっていた。
そして、彼は口を開いた。
「すでに存在を超えたものを殺すことはできない、モナ。」
私たちが立っていたフィールドそのもの? 今はボリス。
空? ボリス。
すべてのものの向こうにある虚空? ボリス。
私は息を吐いた。「あなたは本当にしつこい野郎だ。」
彼は笑い、その声はすべてのものにこだました。「同じことだ。」
私は指の関節を鳴らした。「わかった。もしあなたがすべてになるなら…」
私は手を伸ばした。
そしてすべてを奪った。
ボリスは現実のあらゆる場所に広がり、存在のあらゆる法則、あらゆる概念、あらゆる基本的な側面に自分自身を埋め込まれていた。だから私は唯一の論理的なことをした。
私はそれをむさぼり食った。宇宙全体がねじれ、再び生々しい無へと解けた。しかし今回は、ボリスが引き起こしたのではない。
それは私だった。
私は彼を消費した。彼の本質、彼の意志、彼の全能を。比喩的にだけではない。私は新しい現実、新しい法、新しい存在になった。
そしてそうすることで...
私はボリスを可能性そのものから消し去った。
沈黙。
場が戻った。空は安定した。現実は機能を再開した。
私は一人立っていた。
ボリスの痕跡は残っていなかった。この宇宙にも、どの宇宙にも。過去や未来のどのタイムラインにも。
私はため息をついた。「それは迷惑だった。」
すると、私の耳元で声がささやいた。
「また会おう、モナ。」
私はにっこり笑った。「楽しみにしてるよ。」




