表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

思い出

作者: 竹巣 世虫

 初夏の暮れ。照る向日葵、熟れた無花果、黄色く輝く梅の核果、赤く燃ゆる大紅団扇、紫玉の花を咲かせた矢筈豌豆。どれも幽遠のような黄昏に染まり、その真性を失っている。


 彼女はその幻を解く魔術師だった。一つの莢果に触れて千切り、土を払って細工をした。そして唇を莢の端に付けて、息を吹いて鳴らした。ピュー、と高い音が響いた。


「これはカラスエンドウ。夏の終わり頃に蟻が好む蜜を出して、それを吸わせる代わりに他の害虫も食べてもらうの」


 彼女が触れて語ると、森羅万象はその存在意義を訥々と現していく。例え、そのものがどんな幻惑に迷い、夕闇に翳ろうとも、その手は神域であった。


 もしも、あの手に今一度だけ触れて貰えたなら、その言葉をどんな一言でも告げてくれたなら、貴方が居ない世界でも、私が生きる意味を見つけられるだろうか。貴方の魔術で、私にかかった呪いは解かれるのだろうか。それが貴方に拠るものだったとしても。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ