最強の戦い方
「という訳で、ワタシの透明になれる能力のように人には、それぞれ1つ、自分だけの固有魔法がある。」
この授業が終わったら今日は終わりだ~。
少々の睡魔と戦いながら僕たちは先生の授業を受けている。
「せんせーい!」
「ん?クウラどうした?」
「その固有魔法って魔力を使わないんだよね。」
「ああ。そうだな。みんなも今まで固有魔法を使ってきて魔力が減っているとか感じなかっただろ?」
シドウがそうみんなに質問すると、
僕とシュタウト以外が頷いている。
クウラが続けて質問する。
「じゃあ、何を代償に出せるんだろう?」
転生者の固有能力発動の条件は体への負担。
こっちの世界ではどうなんだろう。
クウラのその質問を聞き、さっきまでウトウトしていたシュタウトは真面目な顔に戻った。
「ん?そんなことか。固有魔法はその人の特技だからな!代償とかないぞ?基本ポンポン打てるようなもんだから、みんなも気にせずに能力を使うんだぞ!」
白い歯を見せてニカッと笑いながらそういうシドウ。
それとは非対称に僕とシュタウトは顔が真っ青だ。
そうなるのが普通だろう。
僕たちにとっての必殺級の能力がこの世界の人達の通常攻撃みたいなものなのだから。
ギュルルル。
何故か分からないけど急に腹が痛くなってきた。
「先生、トイレに行ってきます。」
「おう、フレイ。気をつけてな~。ん?シュタウトは顔が真っ青じゃないか、2階の保健室に行ってこい。」
「分かりました。」
僕とシュタウトは一緒に教室を出て廊下を歩く。
「なぁ太郎。」
「ん?」
「この世界の人、ずるくね?」
「だよなぁぁぁ!!」
「うらやましぃぃぃ!!」
そう叫びながら僕は廊下を走り、3階のトイレへ、悠太は走りながら階段を飛び降りて保健室へ向かった。
それから2分後
キーンコーンカーンコーン
急に放送の予鈴が鳴り、全校生徒の動きが止まった。
「あー!あー!全校生徒のみなちゃまぁ?聞こえますかー?聞こえたら返事してね~?・・・あ!ここ放送室だから返事しても聞こえないかぁ!俺っちったら天然天然!」
ヘニョヘニョした気味の悪い男性の声が学校内に響き渡った。
「えぇっと!俺っち合わせた総勢21人がぁ!この学校を襲うんでぇ~。・・・覚悟してね?」
男のその声と同時に、教室の後ろのドアがドン!と蹴り飛ばされ、10人程の武装した人間が入ってくる。
生徒たちは驚いて椅子から立ち上がり、後ろを振り向いた。
シドウは急いでその先頭へ。
「お前ら。なんだよ。」
シドウが聞いても無言だ。
廊下からドタドタと足音が聞こえてきた。
誰かが来るようだ。
「んんんんん!!!いやっほーーい!主様の雰囲気はーーー!こ・こ・か・らぁぁ!」
さっきの放送の声の主である男が走って教室に入って、武装集団の先頭に立ち、シドウと睨み合う。
「へい、どうもこんにちは!僕ちゃん!ビルキン・グリス!ビルキン様って呼んでねぇ!」
ビルキンは舌をぺろっと出してウインクして
挨拶する。
「この騒ぎの元凶はお前か?」
「いや~ん。先生こわぁい。」
「!!」
「ぎゃお!・・・え!殴った?いっでぇぇ!!」
ビルキンはシドウのパンチに反応出来ず、その場で倒れて転げ回る。
「おい、いますぐこの学校からでて」
「お、俺好みのかわい子ちゃん発見!」
「!?」
「え?」
ビルキンは低い姿勢のまま足に力を入れ、強く地面を蹴り、シドウの後ろを抜けて、即座にアリシアの背後に回った。
「ちょっ!ウチのアリシアに何してんだよ、」
「アリシアさんを、離してください!」
「うわぁ、変態じゃん。」
「くっ!!」
「先生!アリシアさんを助けてください!」
生徒たちが泣きながら叫ぶ中
「おおーい!ガキどもぉぉぉ!!そんなボロカスいわないでよぉ。お兄さん悲しいぃぃ。」
「てめぇ。」
シドウが能力を使おうとする中
「おっと、あんたの能力は知らないけど、俺っちに攻撃してもいいのかにゃぁぁ~?俺っち1人に集中したら生徒、守れないんじゃないのぉぉぉ?」
ビルキンの言葉にシドウは足を止める。
「どうしたら、いい?」
「「「「「先生!」」」」」
シドウのその言葉にビルキンはニタァァ。と笑い
「俺っちとこの女の子をこの教室で2人っきりにして欲しいから~そこの10人と、一緒にこの教室をでてほしぃぃぃ。」
「・・・分かった。みんな行こう。」
シドウは生徒を連れて教室を出た。
ビルキンは、10人の仲間にこう命令した。
そいつらをグラウンドまで連れていく道中で2階で2年生を同じように襲っているもう10人の仲間と合流する。
グラウンドまで連れてきたら20人で2階に戻ってきて警備をする。と。
そして、グラウンドには担任含め、1年生と2年生がグラウンドに集まる。
「・・・こっちは人質を取ってるんだ。ここから動かないでくれよ?」
そう言って20人の武装集団は学校へ戻っていく。
「先生!アリシアが中にいるんだよ?先生が行かないならボク1人で行く!てか学園長はどこにいるのさ!」
「クウラ。学園長は風邪をひいて休みだ。後俺は1年生の担任だ。クラスの生徒は全員守る。教師になる前にそう誓ったんだ。」
「「「「「先生。」」」」」
歩き出したシドウの背中を見て安心した生徒たち。
「2年の先生は、この子達も見ててください。」
「でも、シドウ先生1人では危険です。1人では行かせられません。」
「じゃあ、2人ならどうかな?」
急に聞こえた青年の声にシドウ以外のその場の全員の鳥肌がたった。
「おい!少年!起きろ!起きてくれ!」
「うわぁ!カトリさん!」
俺は保健室に行ったあとぐっすり眠っていた。
そして、ここは俺がカトリさんとお話をする時にいつもいる場所だ。
「このスクリーンに映されているのは、今の校舎2階の状況だ。」
「どうして廊下に人がぎっしりと?」
「学校が21人の悪者に占拠されてるんだとよ。で、ここに20人いる。」
「つまり、俺が今保健室を出たら占拠しているその20人と戦うということですよね?」
「おう。・・・どうしたい?」
「こういうの、1度妄想したことがあるんですよ。占拠された学校を自分が救う。カッコいいじゃないですか。」
「戦うのかい?相手も全員反則級の能力持ちなんだぜ?」
カトリはニヤッとして俺にそう聞いた。
「もちろん!」
「それでこそアタシの少年だぜ!作戦は分かるな?」
「はい!」
俺とカトリさんは深呼吸して、同時に、勢いよく言った。
「「殺られる前にやるだけだ!」」
元佐藤悠太。現在シュタウト・カリス。
出動だ!
俺は保健室のドアをゆっくりと開けた。
そして、ドアの目の前には後ろを向いている人間がいた。
そして、その武装集団はそいつを先頭に、横に1列に並んでいる。
俺はまず1人の頭を手から作った剣でポンっと叩く。
「うお!」
そいつは大きな声を立てて前に倒れた。
おぃぃぃ!!そんなに大きな声で倒れたら奇襲できないよ!
俺が心の中でそう叫ぶと、集団は俺の存在に気づき始める。
「おい!部屋から誰か出てきたぞ!」
「1人ずつ順番に相手しろぉぉぉ!!」
まずい。でも戦わなくちゃ。
「先手必しょぉぉぉぉうううう!」
俺は同じ柄の剣を両手に握ってブンブン振り回し、確実に1人1人に当てながら敵を倒していく。
俺が10人倒したところで15人目が異変に気づく。
「なんだ?次々と仲間が一撃で倒れていくぞ?って次は俺かよぉぉぉ!!」
「ひゃっほい!俺特性の一撃で敵を倒せちゃいます剣は最高だぁぁぁぁ!!」
15人目突破!16、17、18
残り2人。と思ったところで、
「危ねぇ!」
「え?」
19人目の武装人間が首だけを動かして避けた。
その後ろの20人目は銃を構えている。
うん。2対1か。まずいな。
「あのー。大の大人が子供相手に2人がかりってダメだと思うんですけど~。」
「悪いね。こっちは金貰ってるんだ。」
「・・・・」
なんで20人目は喋らないんだよ!
そう思っていると、20人目から聞き覚えのある声がした。
「いや、シュタウト2対2なら公平だろ?」
20人目の後ろからシドウが現れた。
「先生かよぉぉぉ!!」
「ええ!?カッコよく助けに来たのにぃ!」
「おいまじか!」
「!!!!」
武装集団の2人がシドウの方を振り向きあわて始めた。
「シュタウトはそっちのチャラチャラした方。俺はこっちのガタイが良い奴を倒す。」
「先生!2人とも倒してくれてもいいんですよ!」
「甘えるな!」
「へ~。俺達も舐められたもんですなぁ。」
「・・・」
戦闘開始!
「アナタは、もしかしてシドウ・タイルか?」
「お?喋れるじゃねぇか。おう。俺がシドウだ。」
「大ファンです。手合わせお願いします。」
ガタイのいい男は俺にお辞儀をして、拳を握り、構えた。
その瞬間俺は能力を発動。
「あれ、ワタシは一体。ここは」
「バカ!敵は目の前だぞ!」
「敵?」
チャラチャラした男が言った時にはもう遅い。
俺は男にチョークスリーパーを決めた。
「オゴゴゴゴ。・・苦じい。」
そう言ってそいつは倒れ込んだ。
「悪いな俺は今本気なんだ。まぁ、上はアイツが行ったから心配ないだろうけどな。」
シドウVSガタイがいい男決着!
「まじかよアイツ。」
「お前の相手は俺だぁ!」
俺はそいつに向かって何度も立ち向かう。
しかしそいつは剣を避けて
「君の攻撃は当たらないから無駄だよ。」
「ぐっ!」
剣が空ぶったところで腹や顔を殴られる。
戦いの基本。相手を観察をやってみるか。
「動体視力が凄く高まる剣!」
「名前ダサいね。」
「うるさい。」
俺は両手で剣を握って振り上げながら男に突進していく。
俺が男の間合いに入った瞬間そいつは右に移動した。
俺は足を止める。
「はい?なんで急に右に行くのさ。」
「ありゃ?俺が見たものと違う?」
俺はもう一度男から距離を取って同じように剣を振り上げたまま突進していく。
また俺が間合いに入ると、男はその場で右にクルクル回った。
そこで俺は足を止める。
「あれ?また俺が見たものと違う。」
うーん。俺はさっきアイツを突こうとしてたからあのまま進んでたらまた避けられてカウンター食らうとこだったな。
ん?カウンター? そういえば俺が見たものと違うなって言ってたな。ふーむ。・・・
いや、アイツの能力がこれなら、ポンポン攻撃を避けられる理由にもなる。
俺は考え事をしながらもう一度距離をとる。
そして聞いた。
「あのさ、お前の能力って未来視だったりする?」
「ハハッ!正解!で、タネが分かったからって何?タネが分かっても対策できないのが最強だ。えーっと。一応先手が見えてるから、こっちが先手必勝だねぇ。」
なるほど。羨ましい能力だ。
「いや、対策はあるよ。」
未来が見える?確かにずるいよな。でも、そんな能力、日本で何度も妄想した。
当然弱点も分かるさ。
「え?・・・おい、やめろ。それは危ない。」
「シュタウト。お前そんなに悪い顔が出来るんだな。」
俺と目が合った瞬間男の顔は真っ青に。
先生が俺に向かって何か言っているが今は無視だ。
「そいつに当たるまで一生追いかけるブーメランの剣を1本。どんな敵も一撃で倒せる剣をとにかく沢山。」
俺はブーメランの剣を男に向かって投げた瞬間、大量のどんな敵も一撃で倒せる剣を投げつけた。
「う、うわぁぁぁ!」
「ひゃっはーー!未来が見えるから何だよ!未来が見えてても対策出来ないくらいの手数の攻撃をしたらいいんだ!後手必しょぉぉぉぉう!!」
ノータイムで一生投げ続けられる剣を避ける男だがついに限界が来た。
「疲れたぁぁぁ。・・・しまった。」
「百発百中!」
走り疲れて足を止めた男の顔面にブーメランが直撃し、男は倒れた。
シュタウト・カリスVSチャラい男決着!
「よくやったシュタウト。」
「へへ。俺、なかなか強いですね。」
「ああ。お前たちは俺の自慢の生徒だ。さぁグラウンドへ避難しようか。」
「オッス!」
俺はシドウと一緒に階段を降り、みんなと合流した。