僕たち、戦います!
入学式から2週間たち、僕たちは学園生活に慣れ始めていた。
今は、昼休憩で、僕、テシー、オウガは学校の屋上で昼食をとっている。
「うーむ。」
「オウガくん何か悩みでもあるんですか?」
オウガは腕を組み、何か考えているようだ。
「ここは魔法の学校だよな?」
「はい。」
「入学してから毎日6時間目には教科、魔法があるよね~。」
「うむ。しかし、この2週間、本当に基礎的なことしか学んでいない。」
「確かに。雷魔法のサンダー。火魔法のフレイム。水魔法のウォーター。これだけは誰でも使えるよ。ということや魔法の出し方。入学する前から知っていた魔法の知識ばかりですね。」
うーむ。誰でも使える魔法がその3つていうのは僕、入学してから知ったんだけどなぁ~。
でも異世界人生経験が足りないって言うことをバレたくないからここは空気を読んで
「そうだよね!もっと魔法学校っぽいことしたいよね!」
僕が両腕を上げてそう言うと
「ほほーう。ワタシの魔法の授業が魔法学校っぽくないって言ってるのかい?」
「「「うっ!」」」
後ろから少し冷えたオーラを感じて恐る恐る3人で振り返ると
笑顔のはずなのに目が死んでいるシドウが屋上のドアに立っていた。
そして、のそのそとこちらに向かっている。
「先生、違うんです元はと言えばオウガが、」
「おいフレイ!・・・シドウさん。俺の独り言にテシーが反応してここまで話が広がった!怒るならテシーだ!」
「ちょっ!オウガくん!君は正義感が強かったはずでしょ!うう!こうなったら爆発で」
「「「まて!自分が悪かったから!やめてくれ!」」」
「おごごごごご。」
爆発しようとしたテシーを僕、オウガ、シドウで急いで取り押さえ、気絶させた。
「「「なんかごめん。」」」
眠ってしまったテシーの顔を見ると罪悪感が。
「シドウさん。なぜここに来たんだ?」
オウガの質問を聞き、我に返ったシドウは
「お、そうだったそうだった。今日の六時間目、ワタシたちのクラスの男子。つまり君たち3人が学園長と戦うことになった。」
「はいぃぃ!?先生!なんでですか!た、た、戦う?」
「俺も新任だから初めて知ったんだが、生徒たちが学校生活になれると、新入生の力を見るために毎年この時期になると学園長がじきじきに相手するらしい。まぁ、多分学園長が戦闘好きなだけだと思うけど。」
「ふむ。クラス全員で戦わないのは何故だ?」
「学園長は女に攻撃をしない男だからだ。」
「「ほほーう。」」
「もちろん。手加減して戦ってくれるそうだから安心してくれ。じゃあな!君たちが成果を上げたら、担任のワタシの評価も上がると思う!期待してるぞ!俺の自慢の生徒たちぃぃ!」
やけにテンションを高くしてシドウは屋上を出ていった。
すると
「うーん。」
「あ、テシーおきた?」
「うっ。気持ち悪い。」
「すまない。やりすぎた。」
テシーは、いえいえ。と言ってから大きく深呼吸をする。そして
「あ、先生はさっきなんの用事があって来たんですか?」
気分が良くなって顔色が治ったテシー。
その顔を見て僕とオウガは泣き顔になりながら顔を見合わせる。
今からこの笑顔の少年にショックな事実を伝えるのだから。
オウガは任せろ。と頷きテシーを真剣な顔で見る。
「テシー。今日の6時間目。俺たち3人が学園長と戦うことになった。」
それを聞きテシーの顔はまた緑色になる。
それから10分後
「「「むりぃぃぃぃ!!」」」
僕たちは学校を脱走し、行先も考えずただただ走っていた!
「学校!まだ終わってないのに!こんなことしてていいんでしょうか!ゼェ・・ゼェ。」
「ばっかやろう!あの後僕たち先輩に聞きに言ったよね?学園長と、戦いましたか?ってそしたらなんて言ったと思う?」
「あれは危険だ。あの頃に戻れるのなら全力で逃げる。だったか?」
裏声で先輩の真似をしたオウガ。普段の彼からは想像しにくいが、それほど焦っているのだ。
「こんなの逃げるしかありませんよねぇ!」
「「ひやっほぅ!!!」」
魔法学校の学園長だぞ?強いに決まってるよ!
そんなのと戦うなんてバカバカしい!
僕たちはとりあえず森の中に入って休憩した。
「はぁ・・はぁ・・。」
「づがれだぁぁぁ。」
「うーーーーむ。」
何となく3人で木になってる葉っぱをかじっていたその時、僕は閃いた。
「そういえば、昨日からフィルムが帰ってきてるなぁ。僕が入学したからお祝いついでに家にしばらくいる。って。」
「「何それ!それなら早く言ってくれよ!」」
「焦りすぎで忘れてた。」
僕たちは深呼吸をして
「「「俺たちの変わりにフィルム・フレイに学園長をたおしてもらおう!」」」
うん。僕たちはクズだ!
へへ。俺って臆病だな!
うむ。助けてもらうのは大切だな!ハッハッハッ!
3人の漢達は各々の強い意志を胸に、再び立ち上がる。自分たちの敵を倒すために。
「ただいま。」
「おっ、フレイ。おかえり。と、フレイの友達か?よろしくね。」
「お兄様」
「「フィルムさん。」」
「ん。」
黒いオーラを放つ3人の漢からただなら雰囲気を感じ、軽く構える。
「「「助けてくださいぃぃぃ!!」」」
「ありぁぁ??」
ポカーンとしたフィルムは3人を食卓の椅子に座らせてから事情を聞いた。
そして、紅茶を飲み干したティーカップを置き
「なるほどな。要するに、学園長と戦いたくないから学校を途中で抜け出したのか。」
「「「はい。」」」
「それで、俺に学園長を倒して欲しいと。」
「「「はい。」」」
「うーん。だめだね。」
「「「うん。」」」
フィルムのその言葉に僕たちは目の光を無くす。
するとフィルムは説明を始めた。
「まず1つ目。これは授業だから俺が手出できない。2つ目。多分俺が学園長に怒られる。以上だ。」
完全にフィルムが正しいから何も言い返せない。
「5時間目もそろそろ終わるし、できるだけ早く帰った方が怒られる強さも低めで終わると思うぞ~。」
フィルムは笑顔でそういった。
すると、
コンコン。っとドアがノックされた。
「ちょっといってくる。」
そう言ってフィルムはドアの前まで行き、ガチャりとドアを開けると
「ロード学園長じゃありませんか!」
僕たち3人「「「およよよよよ。」」」
そこには、長身。スキンヘッド。細目。黒いスーツに青いネクタイ。白い口ひげ。の、強そうな60代ぐらいのおじいちゃんが立っていた。
「んー?フィルムくん!お久しぶりです。帰ってきてたんですねぇ~。」
「いやぁ~。うちの弟が入学したので久しぶりに会いたくなっちゃって。」
「ホッホッホッ。いいお兄様なことで。」
「いや~。学園長こそ元気そうでなによりです。えっと。ここにいらした理由は?」
フィルムの質問にロードは
「弟さんたち、知りませんかね?」
そう言って目を少し開けた。その目は
ドアの奥の食卓の机に隠れている僕たち3人に気づいているようだった。
「どうしよう。」
「これっ俺たちに気づいているんじゃ?」
「うーむ。この状況は怖いな。」
コソコソと作戦を立てていると
「いや、すいません。俺にもどこにいるのか分からないです。」
フィルムは笑顔でそう言った。
「ふむ。3人の気配を感じて来てみたのですが?」
「あ~それは、学園長を俺に倒してもらおうって思ってさっき帰ってきてたんです。まぁ、嫌だね。って、言ったらすぐここを出て行ったんですけどね。」
「あの子たち、そんな恐ろしいことを?あなたが1年生の今頃、ワシとあなたとの戦闘が3時間ほど続き、結局引き分け判定になりましたね。」
ロードは顎に手を当てて懐かしそうにそう言った。
「いえいえ、あれは俺以外にも仲間がいたからですよ。」
「ふふ。それでも今戦っては、ワシが負けるのは変わりありませんよ。」
そんな昔話をすると、
「ふむ。ではワシは帰ります。」
「ん?あの3人を探さないんですか?」
「はい。担任の先生にはあの3人を怒らないように言っておきます。」
そういいながらロードはフィルムに背を向けて歩き始める。しかし、急に立ち止まり、顔だけ少し横にひねり、
「おっと。あの3人に伝えてください。・・・6時間目が終わるまでに来なければ退学ですよってね。」
そう言ってロードは森の中へ消えていった。
フィルムはドアをしめると、
「だってよ。6時間目が終わるまであと30分。まだ間に合うけど、どうするんだ?」
「「「スゥーーー。」」」
なぁ。斎藤太郎お前は異世界転生して、何がしたいんだったけな。女の子からモテたいんだよな。前世では叶えられなかった夢を叶えるんだろ?たとえ相手が強かろうが負けるとは確定してないじゃないか。
退学したら女の子にかっこいい所を見せられない。
目標までの道を失うくらいなら目標に遠ざかる方がマシだ!
もしも、退学したら。退学理由を家の人に言われたら・・・。あーあ。俺って臆病だよね。臆病だっていい。俺は独りじゃないんだから。仲間がいるんだから!
逃げ続けるのが正義か?退学した後、俺は何を考える?・・・俺はカルナが好きだ。
いつも明るいあいつの隣ににいたいから正義感を強くして生きてきた。
退学したら、カルナに合わせる顔がないじゃないか!
3人がズボンのポケットに手を突っ込んだ瞬間
漢たちの雰囲気がガラリと変わった。
「おおっ。」
フィルムはただならぬ雰囲気を感じて盛り上がった。
「「「行くぞ。」」」
そう言って3人並んでファレイス家を出た。
漢達はまたまた立ち上がる。
ある者は1度人生をかけて失敗した諦めきれない夢のために。
ある者は家族のために。
ある者は自分の想い人の隣にいるために。
なにより。敵を倒すために。
森の中を歩いていると、
「「「「「「ガルルルルル」」」」」」
6匹のオオカミがこちらを睨んでいた。
今にも飛びかかってきそうだ。
「「「どけよ。」」」
「「「「「「きゅーーーん。」」」」」」
3人の圧倒的なオーラに野良オオカミは一瞬で去っていく。
それからしばらく歩き、学校のグラウンドにつくと同時にキーンコーンカーンコーン
と、チャイムがなる。
「ホッホッホッ。君たちなら来ると信じていましたよぉ。」
砂煙の中からロードが出てきた。
「「「「あれ、本当にウチのクラスの男子?」」」」
「・・・」
普段の男子とのギャップで女子が動揺している。
ロードが言ってたように、シドウは怒らず、黙っている。
ロードと3人が構えると、シドウが
「開始!」
と戦いの宣言をする。
「「「突撃ぃぃぃぃ!!!!」」」
3人は一気にロードに向かって殴りかかった。
それをロードは両手で捌いたり、避けたりしている。
「えい。」
ロードは右足を上げて軽くキックをする。
そのキックは3人に当たらず空振る。
「「「うわぁぁぁ!!」」」
キックの風圧で後ろに大きく飛ばされた。
「いだい!」
「ううううう。」
「クッ。」
「ホッホッホッ。魔法も使っていいんですよぉ?」
ロードは屈伸をして少し挑発している。
「そうか。では行かせてもらおう!」
オウガはそう言うと、身体を少し大きくして、思いっきり地面を踏み込み、ロードに飛びかかり、羽交い締めにした。
「ほほーう。なかなか速いですね。それで?次は?」
「ウォーター!」
「サンダー!」
僕はロードの顔に向けて水魔法を、その水がロードにあたった瞬間、オウガは羽交い締めを解き、すかさずロードの顔面にテシーが雷魔法を撃った!
ロードの顔面からは黒い煙が出ている。
「「「やったか?」」」
「うむ。いいコンビネーションですね。でも、これじゃあ不合格だ。魔法はね、心を込めて出した方がいい。・・・ウォーター!」
ロードは後ろにいたオウガの腹辺りに向けて右手を出し、手から細く、勢いがある水を出した。
「うおっ!」
オウガは尻もちをつく。
「あんなに細い水でオウガに尻もちをつかせるなんてボクには出来ない。分かってたけど、やっぱり学園長はすごい。」
それを見ていたクウラは少し冷や汗をかく。
「そっか。入学式の時、クウラが出した大量の水をオウガが受け止めた。そのオウガを学園長は少量の水で押し出した。」
カルナのその言葉を聞き、残りの女子2人は
「「つよい。」」
と、言葉を漏らす。
「おわっ!」
「あでっ!」
あっという間に残りの2人も水で突き飛ばされた。
「ホッホッホッ。もうギブアップにしますかね?」
僕は空を見上げて冷静になった。
手加減されててこんなに力の差がある。
全然ダメージを当てえられない。
勝ちたいな~。だってこんな機会無いんじゃないかな?
これに引き分けれたフィルムってどんなだけ凄いんだよ。
「僕はフィルムみたいに強くないんだよ。」
ポツリと、小さく弱音を吐いてしまった。
すると、
「フレイ!頑張って!」
「え?」
アリシアが応援してくれている。
「君はフィルムじゃなくてフレイだから!フレイ・ファレイス!君は君らしく戦ったらいいんだよ!」
僕はその言葉に涙を流していた。
僕はやっぱりどこかでフィルムを意識していたのだろうか?フィルムの弟だから自分もフィルムみたいに強く、かっこよくないといけないって、どこかで比べていた?
「オウガ!あんたはいつからそんなへなちょこになったのよ!」
「!?」
「昔、アタシをモンスターから守ってくれた時みたいに、またかっこいい所を見せてよ!」
好きな女の前で負ける訳には行かない。
動くぞ!俺の体ぁぁ!
「テシーくん!あなたは私と同じで敬語でしゃべる共通点があります!だから・・・立って!」
立つ理由が分からないけど。でも、こんな臆病な俺を応援してくれる人がいる。やらなきゃ!!
3人の男はやる気に満ち溢れた!
「!!!!来なさい!」
ロードはカッと目を開け、戦闘態勢に入る。
「うぉぉぉぉ!!」
テシーがロードにタックルした。
しかし、ロードはビクともしない。
「ん?」
「オウガくん!!!」
「任せろ!」
「これは!?」
通常サイズの30倍になったオウガが、テシーとロードを包む。
「爆発!!」
オウガが包んでいる少々の隙間から光が出てくる。
そして遅れて、ドゥガーーーーーン!!!!
と大きな爆発音がなる!
オウガの周りが黒い煙で包まれた。
黒い煙が収まると、オウガは1歩後退し、通常サイズに戻る。
「ん!」
オウガは、目の前の光景に驚いた
眠っているテシーと、服がところどころ破れていて、膝、腕、顔の全てに少し傷が出来たロードがいたからだ。
「ははっ!テシー、やったな。お前はあの学園長にダメージを与えたんだぞ。これで自分は臆病者じゃないことに気付いただろう。」
「ホッホッホッ。・・・ほう。なかなかのコンビネーションでした。テシーくんのほうは体の限界が来ていたのですね。ゆっくり休ませて上げましょう。」
そう言って、ロードはテシーを抱っこして、女性陣の方に連れていった。
「お待たせました。今度は、ワシの番ですねぇ。見せて上げます。この学園最強の魔法を。」
「ちょっ!学園長、加減を忘れないでくださいね!」
「ええ。シドウ先生。それに、あなたの生徒はこの程度の困難乗り越えられるんじゃないですか?」
ロードは両手を前に突き出すと
「ダークホール。」
と唱えた。
すると、ロードの目の前に、バチバチッ。となっている紫色の電気をまとった黒いくて丸い、巨大なエネルギーの塊が生まれる。
「さぁ、この試験も終わりにしましょうかねぇ。いきますよ~。 えい!」
そう言ってそのエネルギーの塊をオウガに、向かって投げた。
「く、さっき能力を使ったから足が動かん。」オウガが目を瞑って覚悟を決めた時、
「うぉぉぉぉぉ!!!」
「フレイ!」
僕だって見せ場が欲しいんだよぉぉぉ!!!
僕はダークホールに向かって走り出していた。
ドラゴンと戦った時だってそうだ。
もしもまた死んでも転生できるよね。って心の中で思っているのかな?
そんなの分からないけど!
やってやるぅぅぅ!!
僕は心を込めて
「ステラァァァファイアーァァァ!!!」
右手から炎を出した。
ダークホールとステラファイアーがぶつかる。
「ホッホッホッ。」
「ぬぅぅぅ!!」
「ホッホッホッ。」
「ぬぉぁぁぁぁ!!」
「ホッホッ・・・ほほう。」
ステラファイヤーが段々とダークホールを飲み込む。
僕はそれを見た瞬間
「へへ。おやすみ。」
そう言って意識を失った。
「お、起きたか。」
「先生。おはようございます。・・・ここは?」
「ん?グラウンドだが?」
「ほんとだ。」
目が覚めて周りを見渡しなんとなくそう言ってみた。
僕の横には、テシーとオウガが眠っていた。
それから5分後、2人は起きた。
「お前らなぁ~。・・・これから学校を勝手に出る時はワタシにひと言言ってから行け!心配するだろうが。」
「「「はい。」」」
シドウ先生に注意された。
「やぁ、3人とも、具合はどうですか?」
「「「治りました!・・・うっ!」」」
「ホッホッホッ。無理はするものではありませんよぉ。若いんですから、自然としているのが1番です。それと、シドウ先生。」
「はい。」
「あなたのクラス。・・・合格です!!」
「え!合格?」
「はい。あなたのクラスの実力を見せてもらいました。これからは、魔法の授業をする時基礎中の基礎だけではなく、モンスターとの戦闘などをすることを許可しましょう。」
それを聞き、僕たち3人は顔を合わせる。
「つまりそれって、」
「魔法学校っぽいことが」
「できるのか!」
「「「ひやっほい!!!」」」
3人で飛び跳ねていたところ
「「「「3人とも~~!おめでとーーーう!!!!」」」」
女子たちがこっちへ走ってきた。
僕たちのクラスの喜びの声がグラウンドに響き渡った。