異世界運動会!開戦中!
「それでは、生徒の皆さんは1度団席にお戻りください。」
準備体操が終わり、保健室の先生のアナウンスがなった。
1年生、2年生、それぞれが自分達のチームの席に座り始める。
そして、1年生も全員座ったところで、
「ん?フレイが居ないぞ?」
「あっ!シュタウトも居ないよ!」
「先生、フレイくんとシュタウトくんがいません。」
団席の1番前に立って人数確認をしようとしたシドウにテシーが報告する。
「ん?男子二人が居ないんだし、トイレに行っているんじゃないか?」
自然な感じでそういうシドウ。
カルナは小声で「男ってそういうもんなの?」
とオウガに聞くと
オウガは「うむ。」と、言って深く頷いた。
「まぁ、目立ちたがり屋なアイツらの事だ。自分たちの競技の時には必ず戻ってくるだろ。じゃあワタシは教員の席に戻るから、みんなも自分の競技頑張れよ!」
そう言ってシドウは1年生の団席を出て、教員のテントへと歩いていった。
そして、保健室の先生のアナウンスが鳴る。
「5分後に第1種目、リレーの部が始まるので選手の皆さんはグランウドに並んでください。」
アリシアは椅子から立ち上がり腕を上げた。
「みんな!優勝目指して頑張ろう!」
「「「「「おおおおおお!!!」」」」」
1年生のみんなはやる気が出た!
グラウンドのスタート地点に第1レーン、1年生、第2レーン、2年生で1列ずつに並ぶ
「それでは、選手を紹介します。まずは1年生から。
第1走者、能力は背中から羽を出すこと!アリシア・アリサ! 第2走者、能力はどんな怪我でも一瞬で治せること!カルナ・フルン! 第3走者、能力は緊張すればするほど威力が増す爆発!テシー・トレイン! そして、アンカー、能力はどんな「もの」とも仲良くなれること!ストル・サリア!以上がリレーの部に出る1年生です。」
1年生の紹介が終わり、頑張れ!や、応援してるよ!
などの観客からのエールが送られてくる。
「続いて2年生!第1走者、能力は時間を止めること。フリー・リシン!第2走者、能力は自分の視界に映る範囲ならどこでも沼地にできる!チョウヤ・スプリン!第3走者、能力は、手から、どんな相手でも最低1分は閉じ込められる鉄製の箱を作ること!モウル・ハルコン!そして、アンカーは、能力は、あらゆる方向から強風を出すことが出来る!ウィン・ベクルト!」
長い銀髪のお嬢様のような見た目のフリー。
少々チャラチャラしてそうな男のチョウヤ。
あまり全速力で走るイメージがない、お坊さんのような男、モウル。
髪の毛が逆だっている緑髪の男、ウィン。
それぞれが紹介された。
第1走者以外はコース外に並ぶ。
アリシアとフリーが構える。
「位置について、よーい・・・フレイム。」
リレーの審判役をしているロードが空にフレイムをうち、それが、ドン!!と音を立てて炸裂した。
リレーの部、開始!!!
アリシアは開始の音を聞き純白の羽を出す。
羽を出して第2レーンを見るとフリーの姿はない。
「おおっと、フリー・リシンはもう一周してきたというのか!」
保健室の先生の実況を聞き、勢いよく後ろを見てみるアリシア。
目の前には10メートル程前からこばしり気味に走っているフリーの姿があった。
「チョウヤ!バトンを受け取る準備!」
「はいよ!」
フリーの声を聞き、第2レーンにチョウヤが入ってきた。
そしてチョウヤがバトンを受け取った瞬間!
「えい!」
アリシアはチョウヤの手元を狙って羽を仰いだ。
「うお!バトンが!」
アリシアが起こした強風により、バトンは大空を舞った。
「ふふ。あれだけバトンが飛んじゃったら戻るのに2分はかかりますよ!」
得意げにアリシアが言うと
「くっ!確かにその能力はいいね!でも、沼地になーあれ!」
チョウヤが両手を空に向かって掲げると、空を待っていたバトンは急に止まる。
「!?」
「驚いたか1年生。俺様の能力は視界に映る範囲を沼地に出来る。さっきのは視界に映っているバトン付近の空気を沼地にしたんだ。ここからバトンが戻ってくるのは5秒くらい。こんだけの時間1周分の差、埋めれるか?」
「楽勝です!」
アリシアはそう言って羽ばたき始めた。
そして3秒後にはスタート地点から10メートル後ろまで来ており。そこで能力解除!
「カルナ!来て!」
「まかせな!」
そして5秒が経つとカルナにバトンタッチをした。
「まじかよあの1年、速すぎるだろ!」
ちょうどバトンが手元に帰ってきたチョウヤが驚く。
「へへ!1年だからって舐めんなよ!先輩!」
「舐めてねぇよぉ!」
カルナとチョウヤが同時に走り出す。
チョウヤが、「沼地になーれ!」っと言って第1レーン
を沼地にする。
カルナは
「ごめん。多分それアタシに効かない。」
カルナが、沼地を踏んだ瞬間、そこは元のグラウンドの砂に戻った。
それを見て、団席で少し大きくなったオウガに肩車をしてもらっているクウラが驚いた。
「え!カルナの能力って傷を治すことじゃなかったの?沼地を地面に戻す能力なんて初めて聞いたよ?」
「カルナの能力は治すと言うよりも、元々あった状態に戻す。と言う能力だからな。状態異常系統はアイツには効かない。」
「ほぇーー!!」
「そんな!俺様の能力が効かないなんて!ありえないいいい!!!」
「先輩、両手を振って走ってるアタシと、バトンを握ってる片手しか振っていない先輩じゃアタシの方が有利だよ!能力にこだわるのはやめて正々堂々と勝負しようよ!」
「・・・それもそっか!」
「おおっと!チョウヤ・スプリン!開き直った!」
そしてカルナとチョウヤの足の速さ勝負が開始した!
抜き、抜かされの繰り返しが続き、
「テシー!」
「モウルゥゥ!!」
「「たのむ!」」
2人は同時に第3走者にバトンを渡した。
「はぁ。はぁ。1年生。やるなぁ。」
「先輩もさすがっす。」
2人は腕を組んで分かちあった。
第3走者同士の勝負が始まる。
モウルは幸いあまり足が速くなかった。
テシーはあっさりとモウルを大きくリード。
楽勝だと思っていたその時
「うぬぬぬぬ。これで閉じ込めるしかあるまい。」
モウルは両手を合わせた。両手からは謎の火花が飛び出ている。
5秒ほどたち、モウルの手からはルービックキューブ程の大きさの銀色の四方体が出てきた。
「なんですかそれはぁぁぁ!!」
後ろを見ながら走っていたテシーは謎の物体に驚く。
モウルはニヤリと笑ってそれをでしーに投げつけた。
「うわぁぁぁぁ!!!」
その物体はテシーにぶつかる直前にテシー程の大きさに変化し、箱の形になった。
「閉じ込められるんだなぁ~。」
「ひょぇぇぇぇ!!!」
「おーっと!テシー・トレイン!モウル・ハルコンの作った箱に閉じ込められた!モウル・ハルコンの作った箱の中は最低1分間は出られない!これはピンチだ。」
「これでさっきまでのリードもチャラなんだなぁ~。」
「モウル・ハルコン。ゆっくりな全力走りでとうとうテシートレインを抜かした!」
え?抜かされたの?・・・俺はみんなの足でまといになりたくない!!絶対にリレーで勝つんだ!!
ドン!バコン!ドゴン!
「むむむむ!!皆さん!ご覧下さい!テシー・トレインが入った箱が跳ねながら前進しています。しかも、奇跡的に曲がり角も曲がっている!」
「ありえないんだなぁ~。そんなの内側から強い空気を生み出すしか!」
俺の爆発の衝撃、上手く利用したら進めるんじゃないかなって思ってやってみたけど。いいね!これ!
でも、動きが激しすぎて気持ち悪い。
テシーは酔いと戦いながらも前進し続けました。
「テシー!前進!前進!前進!モウル!逃げる!逃げる!逃げる!いい勝負です。・・・おっと?これはまずい。テシーの箱が思いっきり跳ね上がりモウルの頭の上まできたぁ!」
「な、なぁぁぁぁぁん!」
「う、気持ち悪い。」
第4走者まであと30メートルというところでモウルの頭に箱が直撃した。
モウルはそこで気を失う。
テシーも酔いと戦いながら箱に籠った。
「「・・・・」」
「5分たっても2人とも動きません。」
「「・・・・」」
「20分たっても動きません。」
「「・・・」」
「もう!1時間だったんだから動いてよ!繋ぐ実況も大変なんだからね!」
すると、
「なぁ。」
モウルの目が覚めた。
それと同時にプシューーー。という音と同時に顔色を緑色に変色させたテシーが、大量の白い煙に包まれて
箱から出てきた。
「なんか、アイツいつも変色しているな。」
観客席で見ているオウガがそう呟いた。
「おーっと!今フラフラと歩くモウルと、ヘロヘロとよろけながら歩くテシーが熱い戦いを繰り広げています。」
「「「「「「2人とも頑張れぇぇぇ!!!」」」」」」
観客席からの大きな応援!!
「「う、頭に響く!!」」
2人は全力を振り絞って歩き出し、
「「アンカー!!!!」」
前に倒れながらそれぞれのアンカーに同時に渡した。
「ナイス!モウル。」
ウィンはそう呟いて風の力でモウルが地面に倒れるまでに優しくコース外へ送った。
「テシーさん。お疲れ様です。」
ストルはそう言って地面をモコモコにし、コース外へテシーを優しく流した。
「じゃあ、行こうか。」
「はい。」
2人のアンカーは同時に能力を使った。
ウィンは自分の真後ろから強風を出し。軽く飛んでいる。
ストルは、砂でボードを作り、地面を波のようにして前へ押し出し進んでいる。
「おお!!ここに来て固有能力VS固有能力が、来ました。」
「砂さん!ウィンさんの前で柔らかい大きな壁になって!」
「!?うわぁぁ!」
ウィンの目の前に大きな砂の壁ができて、それにぶつかったウィンはトランポリンを踏んだ時のように後ろに弾き飛ばされた。
「ウォラァァ!」
「きゃぁぁぁ!!」
今度はウィンの強風が前からストルを襲う!
「おおっと!両者、相手の固有能力に寄って後ろに戻されました。」
2人はこのままでは勝負が決まらないと悟った。
「・・・もっと能力を上手く使わないとかない。」
ストルはそう呟き、
「ウィンさんの足元に大きな穴をお願い!」
「!?」
ストルが地面に右手を付けた瞬間、立ち止まっていたウィンの足元に穴ができた。
その穴にウィンはあっさりと入り、尻もちを着いた。
「落とし穴で俺を足止めしたつもりか?これくらい俺の能力なら」
「登ってこれるんですよね。でも、」
ストルは左手を高々と上げて握りしめ、
「空気さん、重力さん、風さん、ウィンさんの入っている穴に向けて下向きの力を!」
「ぐぁ!重、い!!」
ウィンは様々な下向きの力をくらい、段々と下へと埋もれていく。
「ストル・サリア!の力でウィン・ベクルトは前へ進めなくなったぁ!」
「ウィンさん。ごめんなさい。」
悲しそうな顔をしたストルはそう言って波に乗って走っていった。
「ストル・サリア、勝利は確定かぁ~!」
実況がそう言った瞬間、地面が激しく揺れる。
「え?なになに?地震?」
「ぬぅぅぅぅ。」
クウラとオウガが険しい顔をしている。
「・・・ええええええ!!!!」
波に乗って残り半分の所まで1人で走っていたストルが後ろを見ると、自分の後ろから何かが追いかけてきている。
そして、その追いかけているものが通った場所が荒れていることに気づいた。
「おおっと!謎の者がとうとうストル・サリアに追いつき、抜かした!」
「え?」
ストルを抜かしたということは、ストルの近くを通ったということだ。
ストルの足元にあった砂の波は段々と腫れ上がり、爆発した。
「きゃぁぁぁ!!!!」
ストルはバランスを崩して大きく前にコケる。
そして、実況の声が聞こえる。
「謎の者がゴールのロープ手前に来たところで止まりました!そして、地面から出て来たのはぁぁぁ!」
地面に穴が空き、人の手がゆっくりと出てくる。
「ウィン・ベクルトだぁぁぁ!!そのままベクルトは飛んでゴール!!」
地面からは逆立っていた髪の毛が全部前に下ろされ、顔が見えないウィンが出てきた。
「ストル・サリアもここでゴール!1位、2年生、2位1年生となり、リレーの部はここで終了となります。」
その放送が聞こえて選手たちは自陣に戻っていく。
その中で
「皆さん、負けちゃってすいませんでした。アンカーだったのに・・。皆さんが頑張ってくれたのに。」
ストルが泣きながらそう言うと、
「全然!楽しかったよ!」
「気にすることじゃないって!相手も強かったし!アタシらも強い!」
「うん!うん!青春です!」
そう言って仲間が励ました。
その優しさにストルはまた泣き出す。
「あ、サリアさん。」
後ろから声が聞こえると、困ったような顔のウィンが立っていた。
「いい勝負だったよ。ありがとう。あと、勢いよくこかしちゃってごめん。」
その言葉を聞きストルは
「いえいえ、あれは私の力不足です。それに・・・ウィンさん!あなたはどうやって私の全力から脱出出来たのですか?」
「うぇ?」
目をキラキラさせて詰め寄ってきたストルにウィンは同様するが、気持ちを切り替えて
「ああ。あれはとにかく前にまっすぐ進めるように、全力の強風をオレの足元と後ろから出したんだ。・・・進んでる時は顔面に土とかが当たって痛かったんだけどね。」
笑顔でそう言ったウィンを見てストルは手を出し、
「またお話しましょう!」
「うん!」
2人は手を組んで分かちあった。
「「おつかれ!!」」
自陣に戻るとオウガとストルが出迎えてくれた。
そして、談笑をした後、放送が流れてきた
「ええ~。次は戦闘の部なので、会場をガラッと変えます。」
ガコンッと、何かが作動する音が聞こえた。
すると、客席が段々と縦に伸びて行き、最終的には闘技場のような会場が出来上がった。
「まずは、一般の方VSノワル・ロード生をするので準備をしてください。」
「行こう!オウガ!」
「ああ!」
1年生からの声援を受けて2人は闘技場へ続く階段を降りて向かった。
闘技場に入ると、目の前には2人の一般人がいた。
「あれ?この部に出る一般の人って2人だけ?」
「いえ、全員で20人です~。」
そう答える実況。
「じゃあ、20人全員でかかってきなよ。全員倒すから。」
「クウラ・サイレン!チャレンジャーだぁ!」
「嬢ちゃんカッコイイぃぃ!!」
「ひゅーーー!可愛いよぉぉぉ!!」
「オイラのクウラたぁぁんん!!」
「ん?なんか1人キモイのいたな。」
クウラのその宣言に歓喜客達が盛り上がる。
「おい、クウラ大丈夫なのか?」
心配するオウガ。
「オウガ。」
「ん?」
クウラはニヤける。
「ボクたち二人が負けると思ってるの?」
「・・・いや、負けるとは思わないけど心配だ。」
「確かに危ないね。でも」
クウラは目を閉じて、次に大きくパッと目を開いて勢いよくオウガを見た。
「これで勝ったらカッコイイ!みんなに褒めてもらえる!」
「目、めっちゃキラキラやん。」
そう言ってオウガは顔をパンッと叩き、構えた。
「それでは、クウラ・サイレンの望み通り、残りの挑戦者を一気に投入します!!」
すると、階段から大勢の一般人が降りてくる。
大根を持っている人や、筋骨隆々な人、ズボンを頭にも被っている人など様々だ。
「2対20をどうやって勝ち抜く!頑張れうちの生徒!それでは、試合開始!」
ゴングが鳴った!
「これでもくらえええ!必殺!クウラ大洪水!」
クウラが斜め上に両手を出すと、広げている手と手の間から勢いはゆっくりだが、ちょうど闘技の場所を飲み込めるであろう大量の水が出てきた。
初めはまっすぐ飛んでいたが、徐々にその水は横にも広がっていき、最終的にはバラバラに散らばっている目の前の20人全ての頭上まで広がり、
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
一気に20人を流し込んだ。
頭上から大量の水が降ってきて全員気絶した。
あまりの一瞬の出来事に周りは静止したかのように静かだ。
実況がやっと、口を開く
「い、一般人VSノワル・ロード生。勝者はノワル・ロード生です!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」
観客や生徒たちの賞賛を受けて、クウラはぴょんぴょんした。
「やったね!オウガ、オウガ、いえーい!」
「ハハッ。クウラは凄いな。あと、俺の出番が無かったからもしも次があるのなら俺に戦わせて欲しい。」
そう言いながらもオウガは笑みを浮かべてハイタッチした。
目が覚めた一般人達は「負けたァ!!」や、「強すぎだろぉ!」
など。楽しそうに観客席へ戻るのだった。
「よし、俺達も戻るか。」
「うん!」
そう言って2人が後ろを振り返ったところで
「お二人さん!ちょっと待ってくれへんか!」
空から大きな人影と男性の声が!
その人影は闘技場の真ん中へ落ちると大きな砂埃を上げた。