残すは……
惚れ薬が切れたセドリックはすぐさま私の元までやってきた。
「ミウ、ごめん。今までオレどうかしてたんだ」
「ううん。正気に戻って良かったよ!」
「オレ、あいつらぶっ飛ばしてくるから。そしたら結婚しよう!」
「は? 美羽と結婚するのは俺だ。住む世界の違う奴は引っ込んでろ」
セドリックと拓海の二人にプロポーズされてしまったが今は戦闘の最中。色恋沙汰は後回しだ。
「セドリック、とりあえず小夜ちゃんとレイラのとこ行ってあげてくれない? ちょこっと押されてるっぽいんだよ」
レイラに迫る炎は土の壁を作って防御するが、攻撃自体は主に植物を生やして戦うようで、ブラッドの炎で一掃されるのだ。
小夜も人間相手に直接矢を射ることは出来ない。今まで同様ブラッドの近くに矢を放っては魔法が発動されるだけなので、直接的なダメージを与えることができないでいる。
「分かった! ブラッドなら任せとけ。オレの得意分野だ」
「あ、ちょっと待って。セドリックの傷が早く治りますように……これで大丈夫かな」
魔王も手加減していたとは言え、セドリックの体は打撲やら擦り傷が無数にあった。そのまま戦闘に挑むより幾らかマシだろう。
「ありがとう、ミウは凄いな。流石オレの未来の花嫁だ。また後でな」
「はは……」
私は苦笑を浮かべながらセドリックを見送った——。
一方、魔王はセドリックが正気に戻ったのが分かった時点でレイラの元へ行こうとしたのだが、シャーロットに捕まってしまったようだ。
『あたし、こう見えて光魔法が使えるのよ。ヒロインだから。しかもあたしのアイテムね、魔力を増強してくれるの。良いでしょ』
『所詮は人間だ。俺に敵うはずないだろう』
強がってはみるが、魔王は内心焦っているはずだ。だって、魔王は乙女ゲームを何度トライしてもハッピーエンド……つまりシャーロットの勝利しか見ることができなかったのだから。
ただ違うのは、シャーロットは攻略対象を惚れ薬で無理矢理従えている為、五人中三人は既に戦闘不能だ。一人に関してはこちらの味方に加わった。
「魔王様! 頑張って!」
私が魔王を一人応援していると、拓海が田中の方を指さして言った。
「美羽、田中がアレックスからアイテム奪い取ったっぽい」
「え、マジ? やるじゃん田中!」
田中がアイテムを私達に見えるように掲げて手を振ってきた。私は手を振り返さず、大きな声で田中に注意を促した。
「田中! 後ろ後ろ!」
田中が『え?』という顔をした瞬間、背後からアレックスに思い切り蹴り飛ばされた。
「あいつ馬鹿だろ」
「蹴りで良かったね。斬られてたら死んでたよ」
田中の心配をしつつ、アイテムが再びアレックスの元に返っては困る。そう思った私は脳内会話で田中からアイテムを回収してくるようショコラにお願いした。
アイテム回収後、再び私は魔王とシャーロットに目を移した。
『どうした? 得意の光魔法とやらを見せてくれないのか?』
『ええ、最後のとっておきなのよ。アレックスとブラッドが戻ってきたら使ってあげるわ』
魔王も攻撃してこない相手には攻撃出来ないようで、沈黙が続いた後、対戦相手を変えることにしたようだ。
『それならまた後でな、俺はあっちを先に片付けてくる』
『あ、待ちなさい』
シャーロットの声も虚しく、魔王は田中と兄の元へと向かった。
『魔王ごめんね。二人がかりなのにさ、アイツちょっと強すぎだよ』
兄の声だ。
『アレックスは美羽の最推しだからだろう。愛の力が強い程、その人物の能力も向上するらしい』
なるほど。だから田中と兄の二人がかりでも中々倒せないのか。
私が魔王の見解に感心していると、サイラスがキョトンとした顔で聞いてきた。
「ミウはコリンが好きなんだよね? それにさっきセドリックにも婚約申し込まれてなかった?」
「いや……」
「え、そうなの? やめてよ。僕にはシャーロットがいるんだから。しかも二股とか最低」
「うん。ごめんね」
告白をしてもいないのにコリンに振られてしまった。色恋沙汰について、サイラスに説明するのが面倒だなと思っていると、無線機から聞こえてきた声が直接聞こえた。
「美羽、こいつも頼む」
「アレックス? もう倒しちゃったの? 魔王様流石!」
「そうだろう。魔法さえ使えれば俺は強いんだ! なんてな。田中と兄がかなりダメージを与えてくれたおかげだ」
それでも私たちがよそ見をしている数分で倒したのだ。凄いと思う。
「セドリックももうすぐ勝てそうだな」
「うん。やっぱ炎には水だよね」
セドリックとブラッドは互いに水龍と火龍を出して戦っている。そして、セドリックの攻撃によってブラッドの火龍が徐々に小さくなってきているのだ。
「あ、水龍が勝ったね」
火龍が消えた後、ブラッドは魔力切れになったようでそれ以上魔法は出さなかった。そこへ背後からレイラがコリンの時同様に草木でブラッドを簀巻きにした。
「みんな凄いよ! 残るはシャーロットだけだね!」




