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平和な日常②

 私は学校に到着し、靴を履き替えているとあることに気がついた。


「田中、メガネ変えたの?」


「分かる? 美羽はやっぱ俺のこと見てるんだな」


 田中が至極嬉しそうにしている。それを横目に拓海が言った。


「それ、例のアイテムだよ」


「え……メガネが? てか、階層のボス倒せたの? 田中が?」


 私は信じられないといった目で田中を見つめると、田中の頬が赤く染まった。


「美羽、そいつ何もしてないんだ。そんなに見つめるな」


 拓海のその言葉に田中がムッとした。


「そんなことないだろ。コアがどれか見つけたのは俺だ。それにあれのおかげで一気にレベルも上がったんだから」


「そこの愉快な仲間達、喧嘩しないの。後で私が説明するよ」


「小夜ちゃん、なんか頼もしいね!」


◇◇◇◇


 一時限目と二時限目の間の休憩時間に私は小夜の元へ行き、小夜の前の人の椅子を借りて話を聞いた。


「てことは、田中はただ転んだだけ?」


「うん。幸運にも程があるよね」


 小夜は二十二層のボスがゴーレムだったこと、そこにシャーロット達が現れたことを順を追って説明してくれた。


 ——ブラッドの炎魔法が盛大に展開されたおかげで、ゴーレムに近づくことすら出来なかった拓海と田中と兄。


 そんな中、小夜はブラッドを煽って魔法の使用をやめさせた。更には一人握手会を始めて、ブラッドをゴーレムに近づかせないことにも成功。


 炎魔法が展開されなくなったのを確認した拓海と田中は、すぐさまゴーレムのコア目掛けて走った。そして、兄は拓海達の援護に。


 しかし、ゴーレムの攻撃で弾き飛ばされたり、サイラスの氷が矢の如く襲いかかってくるのを避けたりと、二人は中々コアに攻撃が出来ないでいた。


 そんな時だった。再びバラバラになったゴーレムのコアめがけて拓海が斬りかかろうと構えた瞬間、アレックスの風魔法で拓海は吹き飛ばされた。同時に、少し離れていた田中もその風によろけて転んだ。


 その拍子に田中のメガネが外れたのだ。メガネがないとほぼ何も見えない田中は、ゴーレムは後回しにしてメガネを探した。そして、思い切り蹴躓いた。


 おでこをゴーレムのブロックの一つに打ち付けた瞬間、ゴーレムは大きな音を立てて崩れ落ち倒れたのだ。つまり、田中のおでこに当たったブロックがコアだったようだ。


「だから田中、今日前髪下ろしてるんだね。朝セットする時間がなかったのかと思ったよ」


「おでこのタンコブ、美羽に見られたくないんだろうね」


「それにしても運が良いよね。サイラス達も何度もそのコアを攻撃してたんでしょ? まさか田中のおでこが最後の一撃になるなんて思ってもなかっただろうね」


 田中の方を見れば、田中もこちらを見ており照れたように目を逸らされた。


 ちなみに、こんな話を堂々と教室でしていても誰も私たちのことを変な目でみない。と言うのも普段から私と小夜はアイドルの話やゲームの話ばかりしている。きっと、またゲームの話をしているくらいにしか思われていない。


「でもさ、二十二層のアイテムは手に入れられたけど、六十五層のは? シャーロットに取られちゃった?」


「ううん。なんかね、六十五層ってAランク以上じゃないと入れないんだって。向こうはブラッドしかAランクじゃないからって今回は帰ってったよ」


「そっか。てことは、こっちも無理だね」


「うん。ところで美羽は」


 キーンコーン、カーンコーン。


 二時限目の開始のチャイムが鳴った。


「あ、じゃあね。小夜ちゃん」


 それから休憩の合間に互いに情報交換していった——。


◇◇◇◇


 昼休憩。屋上にて。


「田中は来るなよ。美羽がまた嫌な思いしたらどうするんだよ」


「良いじゃん。俺ら以外誰もいないんだから」


 私は小夜と拓海とついでに田中とお弁当を持ち寄って食べている。拓海と田中はいつものように喧嘩をしているが、小夜はそれを気にしたそぶりも見せずに私に話しかけてきた。


「セドリックは美羽が攻略したから逆ハールートはなくなったね」


「そ、そうだね。それはそれで困ってるんだけどね。それよりさ、シャーロットがアイテムの存在知ったから早く回収した方が良いよね。やっぱ今日も行った方が良いのかなぁ」


 連日だと流石に体力的にもしんどいし、何より勉強が出来ない。このままでは特待生枠どころか受験に失敗してしまう。だが、シャーロットのことも気になる……。思い悩んでいると小夜が言った。


「今日はとりあえず大丈夫だよ」


「何が?」 


「アイテム探し。シャーロットが言ってたんだよ」


『キー、ムカつく。それは私たちのなのに。まあ良いわ、次は古代遺跡よ!』


「って言ってたから、今頃古代遺跡に向かってる頃じゃない?」


「そっか」


 それなら今日は安心して勉強に専念出来る。私は拓海と田中の喧嘩が終わったのを見て二人に声をかけた。


「昨日は二人ともありがとね。二人も受験勉強しなきゃなのに」


 私の言葉に拓海と田中は口々に言った。


「ああ、俺はスポーツ推薦でもう決まってるんだ」


「拓海すげーじゃん。あ、美羽俺の事も気にするな。総合選抜で合格してるから」


「え、そうなの? 二人ともおめでとう。じゃあ私と小夜ちゃんだけだね」


 そう言うと、小夜も平然と言った。


「私のことも気にしないで、私は魔王様と結婚するから。若しくは使用人になるから」


「小夜ちゃん、一番心配だよ……」


「まぁ、とにかく俺と拓海は今日から放課後はダンジョンで経験値積んで、ついでにあっちのお金稼いでくるよ。そしたら、万が一の時は課金アイテム買えるだろ」


「良いの? ありがとう」


 それなら気兼ねなく皆を頼れると言うものだ。小夜は例外だが。


「じゃあ、魔王にもそう言っとくね」


 そういえば、昨日家に送ってもらってから魔王を見ていない気がする。魔界の様子でも見に行っているのかもしれない。

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