5話眠り
少し遅れましたすみません。
「グルルル」
『アイススピア・フィフティー』
そう私が唱えると五十本の氷柱が敵に向かって飛んで行った。
「さすがお前の二つ名のもとになった魔法だ。威力が桁外れなうえに複数同時に使用可能とはな。これならどうだ?蘇れ」
ディーラがそう言った途端死体が立ち上がり動き出した。
「死んだはずじゃ!」
「俺はアンデットを作ることができるからな!」
「なっ」
アンデットは邪神の魔力や瘴気が溜まった場所にある死体が汚染されることによって誕生するモンスターであり、服従させることは不可能だ。まして生み出すことのできるのは邪神だけである。
「あんたまさか邪神の加護を受け取ったの?」
「そうだ」
邪神はこの世を崩壊させようと目論む神でありその加護を受けたとなると世界のすべてを敵に回すのと同義である。
『サンクチュアリ』
私がそう唱えると半径500メートルにアンデットの侵入を拒み浄化する結界が張られた。
「これほどの広域に結界を張るとはさすがだな。だがこれ以上の魔法の使用は無理であろう?」
ディーラの言う通りこれ以上魔法の使用は魔力が足りなかった。
「行け!」
ディーラが言うと魔物たちが一斉に襲い掛かってきた。
『ソニックスピア』
私は全方向に神速の突きを放つ槍術をくりだした。
「的確に急所を狙うとは、槍の腕前もさすがとしか言えんな」
「さっきから褒められても全く嬉しくないけど」
「さあどんどん行くぞ!」
・・・
戦いが始まってどれくらいたっただろう。私の周りには山のように積みかななった魔物たちの死体があった。しかし私の槍は穂先がボロボロでもう使い物にはならないだろう、そして私自身も満身創痍だ。
「ここまでずいぶんと頑張ったようだがもう限界だろう。もう一度聞くが仲間になるつもりはないのだな?」
「何度聞かれても答えは同じだ!」
「では死ね」
そうディーラが言うと魔物が襲い掛かってきた。
『原点回帰』
私がそう唱えると体の傷はなくなり、武器も元に戻った。
「なんだそれは!」
「奥の手だよ。最初セットって言ったでしょ?」
原点回帰はセットと言ったときの状態に任意のタイミングで戻すことができる一日一回の奥の手だ。
『オーバーマジック』
『コキュートス』
『アイススピア・サウザンド』
オーバーマジックは限界を超えて魔法を行使することができる。
「ほとんど死んだか、これ以上兵を減らしたくはないから俺が相手だ!」
『影槍』
『アイスウォール』
『シャドウフレイム』
『氷塊』
魔法が飛び交い一進一退の攻防が続いた。
ゴゴゴゴ
急な地響きがした。
「!」
私の後ろの地面が割れ、大きな谷ができた。私は足を踏み外し谷のふちにつかまった。
「どうやら天は俺の見方だったようだな。最後に聞くが俺の味方にならないか?」
「なるもんか!」
「残念だよ。加護だけ奪っておくか」
ディーラが手を伸ばし私の手に触れた。すると光る何かが四つ私から抜けていき空へと飛んで行った。
「失敗か、おしいがしょうがないか。では消えてもらおう」
そういってディーラは私の手に剣を突き刺した。私は手を放してしまい谷に落ちてしまった。
(王都に急いで向かわないといけないのに、どうすれば)
焦り様々な思いが駆け巡る中地面はゆっくりと近づいてくる。
(?)
おかしい。普通なら落下速度はもっと早いはずだ。しかし私はそのことに気が付かなかった。
(アカツキ、シント、ジンライ、クリム…)
薄れゆく意識の中で最後に幼馴染のクリムの顔が浮かんだ。
時が止まるように私は落下をやめ、思考が止まり、意識を失った。