動く空気清浄機
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わしは狐じゃがそこらの獣とは違う。
神に遣える狐。
神獣。
人は我らのことをお狐様と呼ぶ。
その神獣の中でもわしの家系は名家と位置付けられておる。
わしもその一員として『白の君』など二つ名で呼ばれておる。
我らは神の御使として、人と神の間の橋渡しや有事の際には主人や人を守る為、この身を挺しても闘うこともある。
相手が悪鬼であれ化け物であれ守るべきものの為には獰猛にも守り手にもなる。
恐れなどはない。
この身が消えて無くなろうが、悔いなどもない。
無いはずだったのじゃが‥
「ごん、大丈夫?」
今わしは、はれの寝床の上でぐったりしている。
すっごく疲労感を感じる。
指一本、いや毛の一本も動かしたく無い。
あの後、母君は帰ろうとした山姥を笑顔でもう一度座らせ、鞄の中から機械を取り出して何かを見せながら山姥に穏やかに、丁寧に話をしていた。
話の内容はアレルギーについてのものじゃった。
口調は穏やかで怒ってもいない。分かりやすい話だったと思う。
じゃが。
「はれ。今更じゃが母君は何者じゃ。」
話している時の雰囲気、体から放っている気がとてもとても攻撃的と言うか、冷ややかと言うか、こちらが消え去ってしまいそうなほどの恐ろしいものであった。
実際、連絡を取ったぶんが一刻にも満たない間に飛び込んで回収していったのじゃが、その頃には山姥は正気を抜かれたような、しおしおのしわしわ状態になっておった。
「何者って、お母さんはお母さんじゃん。」
はれはわしを寝床から少しずらし、横に座った。
「ああ、でも昔、わたしの友達から動く空気清浄機って言われてた。」
「何と?」
動く空気清浄機?はて。
「空気清浄機とはあれよな?この間、父君がふぃるたーとやらを掃除していた。」
夏には冷たい空気、冬には暖かい空気が出る便利なカラクリじゃ。
「うちに空気清浄機は置いてないよ。ごんが言っているの、多分エアコンね。まあ、空気清浄機の機能も付いていたかもだけど。」
そこは知らないな〜とはれは眼鏡を外した。
最近は花粉が多く飛んでいるので、コンタクトよりこちらが使いやすいとのことじゃ。
「昔の話何だけど、同級生にお家が除霊師?みたいなことをしている子がいて、偶々学校行事で見かけたお母さん見て、そう言ってた。」
はれは言いながら布団にもそもそ入った。
「ごん、重いから上どいて。」
「もっと詳しく聞きたいのじゃが。」
「え〜今日は疲れた。もう眠い。」
眠たげに目を擦っている。
「大事な事じゃろう。」
「家系がそんなんだって昔言ってた。でも、お母さん幽霊とか見たことないし、怖いから見たくも無いって。でも、変な空気とかいやなモノついている人とかは分かるって。」
はれは欠伸をした。
「分かって如何すると。」
「散らす、って言ってた。」
は?散らす?それ、人間?
「もう、いいでしょ。夜にこんな話してると嫌な空気が来るからいやなの。おやすみ。」
はれは瞼を閉じると寝息を掻き出した。
色々聞きたいことはある。が、恐らく聞いたところで答えは出ないのだあろう。
何より、わしも今日は疲れた。
「寝るか。」
はれの布団に潜り込む。
明日の自分に任せよう。
お読みいただきありがとうございました。




