弱点は書いてない
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「ほお、白の君が来られたら随分と強気になったのお。」
「強気になったも何も、自分を殺そうとした相手に遠慮する必要ないって思っただけ。」
ばばあの怒りのこもった眼光もはれは正面から受け止めた。
しかし、やはり恐怖はあるのだろう。膝の上に置かれた手はギュッと握りしめられている。
「殺す?何を物騒な事を。わしは旬のものを食わせてやろうとしただけじゃ。」
「旬の食材って言えばすっごいそそられる気もするけど、何回も言ってるけど食べられないものは食べられないの。」
はれはため息混じりに手元のスマホを弄り出した。
その態度にばばあの眉間に青筋が浮く。
「ぬし、人が話しているのにその態度はなんじゃ。」
まあ、確かに褒められた態度ではない。わしもされたら、拳骨の一つも落とすじゃろうな。
はれはスマホを置くとため息をついた。
「ダメだ。弱点は書いてない。」
弱点?
「何を調べておったのじゃ?」
「いや〜同じことされたら少しは分かってもらえるかな〜って思って調べたんだけど。」
机に置かれたはれのスマホを覗き込むと『山姥』『弱点』の文字があった。
「妖怪の一種じゃからな。人とは違う。そうそう無いじゃろう。」
「あったりするじゃん。カッパが瓢箪嫌いとか。鬼に鰯とか。」
かっぱの瓢箪はともかく鬼に鰯は、焼いた時の煙が嫌いという事で‥まあ、いいか。
「一応、山姥はタバコのヤニが嫌いってあるけどタバコのヤニって何?食べられるの?タバコの葉っぱって食べたら死ぬよね?」
こやつ、何を言っておる?
「ヤニは煙の中に入っているものじゃから食べるのはむりじゃな。」
「それに、うちタバコ吸う人いないし。」
確かに、この家にタバコを吸うものはおらぬ。
以前は母君が嗜んでいた事もあったらしいが、いまはすっぱりと辞めておる。
辞めた理由は風邪を引き、喉が痛いのにタバコを吸って余計喉の痛みがひどくなり、自分の愚かさが身に染みて辞めたらしい。
この話をはれから聞いた時、痛い目見ないと身に染みないのは親子じゃなとしみじみ思った。
「いっそ、何処ぞの喫煙スペースに連れて行って経験してもらうとか。」
やれやれ。何を言い出すかと思えば。
「やめておけ。それは拷問じゃ。」
「わたし、殺されかけたんだよ?」
それを考えるとーいやいや。いかん、いかん。
「んーじやあ、仕方ないか。」
はれは諦めたように重箱に手を伸ばし、山菜の握飯を手に取った。
その姿に嫌な予感がする。いや、予感ではない。
「一応聞く。何をするつもりじゃ。」
「こんちゃん、お水まだあるよね?」
「は、はい。まだ御座いますが。」
急にふられたこんは驚いたように返事をする。
「じゃあ、症状がでたらよろしくね。」
にっこり微笑むはれ。
笑顔じゃが、何処ぞ寒気がするような顔じゃ。
「聞きたくもないが、何をするつもりじゃ。」
握り飯を待ったはれがわしに笑みを向ける。
「どう言っても分かってもらえないなら、みてもらおうかなって。」
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