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今なんて?

お越しいただきありがとうございます。

 ん?コンちゃん今なんて?

 聞き捨てならない名称を言わなかった?


 老婦人は困ったような顔をコンちゃんに向けた。

「いいえ、お約束はしておりませんが、至急ご相談をお願いしたい事がありまして。」

「困ります。現に白の君は不在です。どうぞお引き取りを。」


 コンちゃんの口調は結構きついものだ。


「そこを何とかお願いできませんか?年寄りがわざわざ足を運んで来ているのです。」

「致しかねます。第一、この家に許可なく訪問することも禁じられています。」

 冬場にカメ吉の事があってから、アポ無し凸は禁止という事になったらしい。

 確かに家の前に動物やら何やらが頻繁に来られてはご近所の視線も痛くなる。


「どうか、どうか。」

「お引き取りください。」

 懇願する老婦人に冷たい態度のコンちゃん。

 コンちゃんの言っていることは正しいのだけど、見ているこちらが罪悪感を感じてきた。

 いや、何かか弱くて困っているお婆さんをいじめているような。

 だからつい言ってしまった。

「いいよ、コンちゃん。わたしが入れちゃったんだから、ごんが戻るまでわたしがお相手するよ。」


「どうぞ。」

 客間として使っている座敷に婦人を通し座布団を勧める。 

 婦人は軽く頭を下げ座ったのを確認してから、わたしも座り荷物を横に置いた。

 座敷には二人きり。

 コンちゃんはお茶を入れに下がってしまった。

 わたしが淹れてくると言ったのだが

「滅相もない!」

 と怒られてしまった。

「えっと、本日いらしたご要件は?」

 沈黙が気まずくて尋ねてみる。

 婦人はほんの少し目を細くした。

「それは白の君にお話します。」

「ああ、そうですよね。ごんに相談に来たんですものね。」

 話しづらい。あと、どことなく圧を感じる。

 ごんが帰ってくるまで間が持つかな。正直自信がない。

 えーと、何か会話


「先ほど『山姥』と言われておりましたが。」


 焦ったせいか突っ込んじゃいけないことを突っ込んでしまった。 


 わたしがもつ山姥の印象は、山に迷った旅人を親切にもてなして、夜中に襲って食べようとするとか、昔ばなしで聞かされた川の水をすべて飲み込むとか、化けることが出来るとかそんなかんじ。

 いわゆる日本版魔女、ってかんじかな。


「そうですね。私はそのような呼ばれ方もされております。」

 婦人はさらりと肯定した。


 部屋の温度がヒンヤリしたような気がした。

 今更だけど、わたしこの人と2人っきりでいていいの?人食い種族と一緒にいるのとおんなじじゃん。

 リアルまな板の上の鯉状態? 


「山姥にどの様な印象を持たれているかは存じませんが、私は人を喰らいませんよ。」

「あ、そうなんですね。」

 心の中が読まれたかと思った。

 老婦人は軽くため息をついた。

「昔はともかく今は山に入るも記録が必要だったりしますからね。」 

 ああ、入山記録のことね。

 ん?それが無ければ何とでも出来たってこと?

 何か闇を感じる。

 やばいやばい、こわいこわい。 

 

「失礼します。」

 襖が開かれ、コンちゃんがお茶を持ってはいってきた。

 いつも可愛いコンちゃんだけど、ぃまはとても頼もしく見えるよ。

「コンちゃん、ごんは何時ごろ戻るの?」

 わたしと山姥さんにお茶を出してくれるコンちゃんに問いかける。

「はれ様がお帰りになるまで戻られると仰っておられましたのでもうじきかと。」

 もう少しで帰ってきてくれる。

 良かった。もう少しの辛抱だ。


 安心すると同時に、気が緩んだせいか盛大にお腹がなってしまった。


「あら、昼食はまだでしたの?」 

 かなり大きな音だったので山姥さんにも聞こえたらしい。

「ええ、まあ。」

 曖昧に笑って誤魔化す。

 あなたが凸って来たから食べ損なったとは到底言えない。

「ちょうどいいものを持ってきたのでどうぞ。」

 山姥さんは手提げかばんから何かを取り出すと私の前に置いた。

「あの、これは。」

 目の前に出されたのは時代劇とかレトロ雰囲気のおにぎりに使われる、笹の皮で包まれた何か。

「節のものですから。お裾分けです。」

 嫌な予感しかしないけど取り敢えず開けてみる。

   

 そこには筍をふんだんに使ったオニギリが並んでいた。





 

お読みくださりありがとうございました。

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