部屋空いてなかった?
お越しいただきありがとうございます。
「取り敢えず、今日からこの部屋を使ってください。必要なものは明日買いに行きましょう。」
ぶんちゃんが物置部屋として使っていた部屋の扉を開けた。
物置部屋とは言っても、ぶんちゃん自身も住んでからそう時間もたっていないので、夏に使った扇風機1台置いてあるくらいだったから片付けもすぐだった。
「…世話になります。」
太郎くんはおずおずと部屋に入り、頭を下げた。
あの後、これからどうするかを太郎くんも入れて話し合った。
ちなみに亀は口出し禁止。こちらからの許しがないと話してはいけない、という条件付きでこの場にいる事を許可した。
まず話したのは、家庭の事情とかで一人暮らしをしている14歳の人もいるかも知れないけど、太郎くんの場合には誰かの助けがあったほうが良いということ。
今の年齢から言って、保護者が必要なこと。
学校はどうするか。それとも年齢になるまで待って、働き出すか等など。
「わしが保護者とやらになる!わしが今度こそ太郎を守るじゃ!」
「お主には無理じゃ。」
早々に喚き出し、カメ吉の飼育ケースをベランダに出してやろうかと腰を上げかけたけど、その前にごんがきっぱり言い切った。
「何故じゃ!おぬしかて、こちらの界に居るではないか!」
「わしは許可を得ておる。」
「あ、そんなのあるんだ。」
へーごんも許可取っているのか。
「じゃあ、カメ吉も許可を取ったら問題ないんじゃない?」
「無理じゃな。」
「無理です。」
ごんとぶんちゃん同時に言った。
「許可はそう簡単に降りない。それに太郎は一応戻された身じゃから、1人前と見なされておるから、そのための許可を得るのには難しいじゃろう。」
「必要な『保護者』は成人ならカメ吉…殿では無理です。こちらの界で神獣が人化出来るのはかなりの『力』が必要です。それに、もし人化出来たとしても先程の兄上同様、子供の姿が精一杯だと思われます。」
「それに、おれが嫌だ。」
太郎くんまで反対派に加わっちゃったよ。
でも、そうか。必要なのは『保護者』だもんね。意味ないな。
「じゃあ、どうするよ。」
誰も口を開かなかった。
うーん、まじどうしよう。
あ、でも肝心なこと聞いていなかった。
「太郎くんはどうしたい?何かこれからやりたい事とか行きたいとことか無いの?」
「お、おれ?」
突然振ったせいか、太郎くんはたじろいた。
「正直、考えたことなかった。やりたい事行きたいとこなんて。外に出てみたいって思っても最初は出方すら分かんなかったし、ものの買い方も分かんなくて諦めたし、おれ一生ここにいて死んでいくんだなって思っていたし。」
…何かすごいこと言っていた。出方分からない?買い物分かんないって言ってた?ほんっとに何一つ教えないで放り出したのか、このクソガメ。
「はれ、はれ、海の界は陸の界以上に情報が入りにくいんじゃ。」
わたしの怒りを察し、ごんが慌てたようにフォローに入る。
そんな言い訳聞きたくないんだけどね。もっときっちり調べろってんだ。
「だから、外に行きたい。普通に1人で歩けるようになりたい。」
ああ、こんな当たり前の望みでもこの子にとっては特別なことなんだ。
なんか、泣きたくなってきた。
精一杯のフォローをしてあげたいけど、ここうちから遠いんだよね。うち、お兄ちゃんの部屋空いているけど、いきなり連れ帰って住まわせるわけにいかないし。
あれ?
「ぶんちゃんの家、部屋空いてなかった?」
それからは話が早かった。
ごんの上司、おねーさんに連絡を取り、おねーさんが海の方と話をつけ、太郎くんはしばらくぶんちゃんの家でお世話になることとなった。
ぶんちゃんも最初は渋っていたけど、
「お主が適任じゃ。」
ごんの一言で苦笑いしながらも頷いてくれた。
そんなこんなでお隣の住民一人増えた。
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