何歳までか知ってる?
お越しいただきありがとうございます。
「なにするんじゃ、この小娘!」
「ごめんねー箸より重たいもの持ったことがない小娘なんで、重くてびっくりして落としちゃったあー」
ぎゃんぎゃん喚き立てるカメ吉の入ったケースをわざとらしくゆっくり拾い上げて、ぶんちゃんに手渡す。
ふん、わざわざクッションの上に落としてやったんだから、感謝しろってんだ。
「ごん、前にぶんちゃんをこちらの界に戻す事を決めたのって、ある程度育って独り立ちできるようになったら、って言っていなかった?」
ごんはこくりと頷いた。
「迷い子達をそのまま戻したところでこちらの界に順応できるのは難しい。陸の方では、いわゆる学校のようなものを作って、教えられることは教えている。」
一応、そういうものあるのね。あったにしても、初めの頃のぶんちゃん、あれ結構いやかなりズレていたぞ。
あれ?
「『陸の方』って言った?龍宮には無いの?」
「陸の界じゃと迷い子も多い。しかし、海じゃと竜宮までたどり着くにはかなり難しいから少ないんじゃ。」
まあ、たどり着く前にお亡くなりになられるんだろうな。絶対数が少ないから、学校的なものは無い、と。
「でも、太郎くんネットのこととか知っていたよね?」
「流れ着く遺体とかあったりするんだよ、たまにだけど。それにまだ霊が離れていないときがあって。そいつらが話してくれた。」
幽霊と話しているってこと?怖!
「龍宮も水の界で亡くなった者たちの御霊を慰める場所でもあるからな。」
「皆、おれの名前聞くと絶対びっくりすんの。」
まあ、そりゃあびっくりするわ。日本人なら誰もが知っている有名人だもんね。
「偶にさ、スマホとか持ったままの奴がいて、使い方教えてくれたり陸のこと話してくれたりしたよ。」
沈んでも離さないスマホ。死んでも、スマホが無いと詰む!って思いからかな。
それより、海の底でも使える防水加工すごいな。龍宮城ってWiFi飛んでるのかな?
「龍宮電気ないから、充電切れたらそれ迄だけど。」
太郎くんは苦笑いしてみせた。
まあね、水の中だもんね。
それはさておき。
「カメ吉さんに一つ聞きたいことがあるんだけど。」
目線をカメ吉に向けると、奴はそっぽを向きやがった。
どっち向こうが知ったこと無い。聞こえてるならそれでいい。
「『児童福祉法』って知ってる?」
誰も口を開かなかった。わたしはごんに目線を向けた。
「詳しくは知らぬが、子どもの権利を守るための法律ではなかったかの。」
「まあ、ざっくりいうとそうだよね。児童の福祉と権利を保障するためのものだよね。」
「それくらい、わしも知っている!だから太郎を」
ケースの中から騒ぎ出すカメ吉。わたしはそれを冷たい目で見てやる。
「ふーん、知ってたんだ。そうかーふーん。」
「なんじゃ、その言い方!」
カメ吉はツバを撒き散らす勢いで喚いてくる。
生意気だの、態度が悪いだの。
あまりの暴言にぶんちゃんがケースに手を伸ばそうとしたのを目線で止めた。
「知っているなら聞くけど、『児童』って何歳までか知ってる?」
お読みいただきありがとうございました。




