そんなやつ、知らない
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「太郎〜〜!会いたかった〜〜〜〜!!」
観察ケースの中で騒ぐカメ吉を見ると、少年・太郎くんは嫌そうな顔をした。
「お主からの連絡が途絶え、どれだけ心配したいことか!」
「で、何の用っすか?」
騒ぐ亀を見事にスルーしてわたしたちに目を向けるも、直ぐに不審そうな顔をする。
「誰が御使い様なわけ?」
尋ねているのに目線は私のロックオンされている気がする。
ごんは小さいから目に入らないのかな?
「わしじゃが?」
ごんが一歩前に出ると太郎くんは目を丸くした。
「え?あんた、ガキじゃん。」
「おい、口のきき方に」
剣呑な言い方になるにぶんちゃんをごんが片手をあげて制する。
ごんは軽く跳躍すると、くるんと宙返りした。
ぽん、と小さな音と同時に辺りが一瞬白い煙に包まれ、煙が消えるとそこには小さな白いいつもの姿のごんがいた。
「やれやれ、やはりこの姿が一番楽じゃな。」
ごんは肩が凝ったと、体をぶるっと震わせた。
ぽかーんとしていた太郎くんだけど、急に慌てだした。
「早く中に入れ!」
わたしたちは押し込まれるように部屋に入れられた。
「は〜」
わたしたちを押し込んだ太郎くんは玄関先にそのまま座り込んで頭を抱え込んだ。
「どうしたの、大丈夫?」
声を掛けると勢いよく顔を上げ睨みつけてきた。
「大丈夫な訳無えだろう!カメラついてんだぞ!?見られたらどうするんだ!」
カメラーああ、防犯カメラが付いているのね。
「さすがタワマンだね。セキュリティしっかりしているんだ。」
「タワマンじゃなくても防犯カメラくらいあんだろ!ああ、もう!」
太郎くん頭を掻きむしりだした。
「映ってて、ネットにでもあげられたらどうするんだよ。」
心配してくれているんだ。口の利き方はあまり良くないけど、優しい子なんだな。
「俺まで巻き込まれんじゃん。勘弁しろよ!」
前言撤回。ただの自己保身だった。
でも、ネットに流されたりしたら厄介だよね。
「案ずるな。どうにでもなる。」
「どうにでもって、どうやってだよ。」
「それはお主次第じゃな。」
睨みつけてくる太郎くんをごんはサラリと交わす。
「お主の態度次第で映像はどうにかしてやるが?」
「オレの態度次第って…」
太郎くんは口ごもった。
「ごん、太郎くんの態度次第ってどういうこと?」
わたしもわけが分からなくて口を挟む。そんなわたしをごんが呆れたようにみる。
「はれ、わしらは仕事で来ておるのじゃ。」
「仕事?何の?」
ごんは懐から紙を出し太郎くんに差し出した。
「わしは稲荷神からの指示で来た、こちらの界の萬相談処じゃ。」
太郎くんはごんの差し出した紙をまじまじと見つめている。どうやらそれは紹介状的なものみたい。
「はあ…」
「で、どうじゃ。元の界に戻った訳じゃが困っていることはないか。」
「ない。」
太郎くんはきっぱり言い切った。
「困ってることなんか無いからさっさと帰れ。」
その言い草に、背後から怒気が流れて来ているけど、まあ、スルーしよう。
「まあ、わしらもさっさと帰りたいから良いのじゃが、一応依頼もあってな。」
ごんはぶんちゃんに視線で合図すると、ぶんちゃんは観察ケースのカメ吉を太郎くんに差し出した。
「こやつが養い子の安否を依頼してきたからのう。無事を確認させるために連れてきた。」
「太郎〜」
カメ吉の姿を見ると、太郎くんの表情が厳しいものに変わった。
「そんなやつ、知らない。連れて帰れ。」
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