言い忘れちゃってた
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亀は持ち上げられた虫かごの中で暴れている。
『虫かご』って言ったけど、これ透明プラスチックで作られているから観察ケースってやつなのかな。まあ、どうでもいいけど。
「招かれてもないのに勝手にやってきて、そんな失礼な態度をとっていたわけだ。」
「失礼はキサマじゃ!ここから出さぬか!!」
「はれ、どうした。何を怒っておる。」
わたしの纏う雰囲気がいつもと違うことに気がついたのかごんも驚いているようだ。
そうだよ、ごんにも言いたいことあった。
「大体ごんもなんで言われっぱなしになっていたの。言い返せばいいじゃない。」
「言い返す程のものでもないじゃろう。それに実際言われた通りだしな。」
ごんは苦笑いを交えながら言う。本当に何とも思っていないようだ。
でも、それは。
「それはごんがこちら側の都合に合わせてしてくれているからじゃない。」
こちらの都合に合わせたことでごんが卑下されるなんて嫌だ。
「ふむ。」
ごんは何かを考えるような素振りをしてから、わたしに座るように言った。
座ったわたしの膝に乗り、わたしの口元をぺろりと舐めた。
「わしは此奴の戯言に怒るより、そのことを怒ってくれたはれが嬉しい。」
「何言ってるの!」
口説かれているように聞こえたのは、気のせいかな?
でも、ごんは本当に嬉しそうで、わたしが赤面してしまう。
「お主ら、いい加減にわしを解放しろ。」
隣から聞こえてきた声に我に戻った。
こいつ、本当にどうしよう。
「このまま、ケースごと川に流してきちゃダメ?」
相手にするの面倒くさいし、相手にしたくもない。
「一応其奴、海亀だから問題はないと思うが。」
よし。わたしは膝の上のごんを降ろし虫籠を持って立ち上がった。
「お散歩ついでに、川に流してこよう。いずれは海に届くよ。」
「しかし、辿り着く前に籠が壊れたら環境にもいかんじゃろう。」
言われてみればそうだよね。
それに、それやったら箱に子猫を入れて川に流す奴らと同じだよね。いかん、いかん。怒りのあまりの最低なことをしそうになっていた。
「んーじゃあ、動物保護団体に持っていってもらおうか?」
「亀も良いのか?」
犬や猫は聞いたことはあるけど、亀はどうなんだろう。
「ちょっと待って、調べる。」
スマホを出して検索をかける。
水族館に持ち込むってのは迷惑なんだろうしな。
「ちょっと待て!わしは神の使いじゃ!」
亀がまた騒ぎ出した。籠を一所懸命登ろうとしているけど滑るのか、登っては落ちを繰り返している。
「だから?」
「だから!神聖なるものなんじゃ!」
「神聖な生き物だからって何言っても許されるってわけじゃないでしょう。」
わたしは冷たく言い放った。それを言うなら、それらしい態度を取れってやつよ。
「白の!そなた、こちらの界の萬相談を受けておると聞いた!」
「ごん、そんなのしているの?」
ごんも首をひねっている。
「心当たりはない。」
「ごっめーん、言い忘れちゃってた。」
誰もいないはずのリビングから、美女が扉を開けて出てきた。
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