ゴンパンチ!
ホラー的な表現があります。
「ふー」
ベットに横になって息を吐いた。
「疲れた‥」
今日は本当に色々あった。
休みだったからフラフラ散歩に行ったら変な場所に迷い込んで、それから仔犬を拾って飼うことになって。
「あいつ、今晩眠れるのかな?」
名前は結局「ゴン」になった。多数決は最強としか言えない‥って
「ウチのネーミングセンスってさ〜」
私の名前といい‥
スマホにメッセージが入っているのに気付き、あけてみると兄からだった。
さっき、犬を飼う事になったことと写真を送った返事かな?
『名前わろたwww』
うん、全く同感。
『昭和か!』
平成も終わって令和だけどな。
ちなみに、兄の名前は「がく」という。
両親が言うには「学ぶ時も楽しむ時も」との想いを込めて付けたらしい。
わたしの名前は「いつも晴晴と」という想いを込めたらしい。
が。
せめてもう少し座りのいい名前にしてほしかった!
体が動かなくて目を覚ました。
コレは金縛り、ってやつかな。
金縛りは『睡眠麻痺』というもので科学的には解決されている、らしい。心霊的なものではない。
でも、このあざけるような笑い声とか、ブツブツ何か言っているようなモノとか、声を出そうとすると奥歯に釘が打たれるよな痛みとか、これも何か理由をつけてくれるのかな。
重たいまぶたを無理やり開ける。経験上、目を開けると金縛りが解けることが多い。
でも、今回は目を開けても黒い霧のようなモノが渦巻いていて、身動きが取れないのは何もかわらない。
怖くて堪らなくなった。
体が動かないのと訳の分からない現象に頭が一杯になる。
だれか‥助けて‥
泣きたい気持ちになった時、頬に温かい何かが触れた。
びっくりして、目だけそちらを動かして見てみると、白い毛玉ーゴンがいてわたしの顔を覗き込むように見ていた。
何でここにいるの?
キャリーの中に入れられていたんじゃないの?
手を伸ばして頭を撫でたいのに体が動かない。歯痒い思いをしていると、ゴンの後ろに黒いモヤモヤしたものが集まるのが見えた。
アレが何かは分からないけど、絶対いいモノのはずはない。逃げるように言いたいのに、口の中に何か詰め込まれたみたいにうめき声さえ出せない。
逃げて、ゴン!
せめて危ないことだけでも伝えたいのに!ゴン!!
焦るわたしに何かを察したように、ゴンは体を丸めて飛びかかるような体制を取った。
いいの、ゴン!守ってくれなくていいから早く逃げて!
成り立て飼い主を庇ってくれようとする心意気に胸がジーンと熱くなる。
ああ、本当にいい子だ‥そんな事を思った次の瞬間。
びたん!
そんな音がした気がした。
わたしのおでこは、ゴンの両前足で踏まれていた。
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