おれ、ポチにもう会えないのかな
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「誰が犬じゃ。」
なんということでしょう、白の君を犬扱いするとは!
わたくしは白の君のお心を考えると腸が煮えくり返るようでした。
が、白の君は面倒くさそうに文治郎殿に目を向けただけでした。
「わしはきつねじゃ。」
犬ではない、そう応える白の君に文次郎殿は目を丸くしました。
「だって、白い狐なんて見たことない。」
「見れてよかったのう。」
白の君は大きな欠伸をして丸くなられました。
激務でお疲れなのでしょう。
文次郎殿も空気を読んでさっさと部屋に戻れば良いものを、何故か白の君のお隣におずおず座りました。
二人共何も話さず日にあたっておられます。
「…何じゃ。」
文次郎殿がチラチラ見ているのに気がついた白の君が、面倒くさそうに片目を開きました。
「あの…触ってもいい?」
何を言い出すのでしょう、この小童が!神聖なる白の君に触るなど恐れ多いことを。
白の君は目を閉じられました。
もちろんですとも、白の君!断って当然です。
「好きにすればいい。」
「うん!」
ええ〜!
わたくしの心の叫びなどお構いなしに文次郎殿は白の君を撫で回し、白の君は文次郎殿の好きにさせております。
何というお心の広さ!わたくし、涙が止まりません。
「ふわふわ!でっかい!!」
「良かったのう。」
「毛がサラサラしていて気持ちいい。家で飼っているポチみたく臭くない。」
「だから犬と一緒にするな。」
そうです、文次郎!白の君とそんな犬を一緒にするなど、万死に値します。其の辺に何ぞ得物がないか、つい辺りを見回してしまいました。
「おれ、ポチにもう会えないのかな。」
ボソリと呟いた文次郎殿の言葉に白の君は瞼をゆっくりと開けられました。
「おれ、もう母ちゃんとか皆に会えないのかな。」
家の事を思い出した文次郎殿はポロポロと涙を溢れています。溢れる涙を一生懸命拭ってはおりますが、止まらぬようです。
泣きじゃくる文次郎殿を白の君はじっと見つめ、ゆっくりと身を起こすと文次郎殿の顔を舐めだしました。
「うわ、何するんだよ。」
「しょっぱいし、ひどい顔じゃのう。」
し、白の君にあんな!何と羨ましい!今すぐその場所を変わってほしいくらいです。
「ここが嫌いか?」
「…分かんない。」
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