期間限定かき氷
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「大体、わしの何処に詫びる必要があるのか。礼こそ言われるなら分かるが、このような扱いをされる謂れはないわ!」
「だから謝ったじゃん!申し訳ありませんでした!今後気をつけますって!!」
「それの何処が謝っておる?逆ギレしているだけでは無いか。」
わたくしはお二人の間に挟まれ、オロオロしてしまいます。
どう、お止めすればよろしいのでしょうか。
「あの、お二人とも、あの、落ち着いて」
「お主は口を挟むな!」
白の君に一喝され言葉がもう出ません。
「一生懸命やってくれていたこんちゃんに何てこと言うの!」
「其奴はわしの下僕じゃ!何を言うても問題はない。」
「ひどい。パワハラじゃん!」
ああ、はれ様がわたくしのために怒ってくださっている。何とお優しく恐れを知らないのでしょう。白の君にものを申し上げるなど何とわたくしは想像するだけで、この身の震えが止まらなくなります。
でも、本当にどうしたら‥
「おや、お二人とも気が付かれたのですね。」
襖が開き、本を片手に持った文治郎殿が入ってこられました。
わたくしはそおっとはれ様の膝の上から抜け出し、文治郎殿の下に行きました。
「文治郎殿、どうかお二人を止めてください。」
「大丈夫ですよ。」
わたくしがこんなに困っているのに、文次郎殿は何も起きてないかのようにわたくしの前に塩と盃を置きました。
ああ、清めですね。
ありがたく頂戴すると、やっと人心地着いたような気がします。
「ここは何処ですか?」
小さく息を吐き、聞きたかったことを文治郎殿にお尋ねします。
「わたしの家ですよ。」
空になった小皿と盃をお盆に戻しながら、文治郎殿はおっしゃいました。
「もっと詳しく言うなら、はれ殿の家の隣です。」
そうでした。文治郎殿ははれ様の隣人でした。文治郎殿の家だから知っているような気配がしたのですね。
はれ様と白の君の言い合いはまだ続いております。わたくしは不思議だったことをお聞きしました。
「わたくしたちの場所をどの様にして見つけられたのですか?」
「ああ、それは。」
文治郎どのは頬を苦笑いしながらかきました。
「鋭い勘と文明の力のおかげです。」
鋭い勘?文明の力?わたくしの頭の中は混乱してきました。
そんなわたくしの疑問を感じ取ったのでしょう。
「はれ殿の兄上から『嫌な予感がする』と一報が入りまして、はれ殿と貴方の位置情報を確認して迎えに行ったのです。」
文治郎殿は話しながらわたくしに座布団を勧めてくださり、ありがたく使わせていただきました。
「迎えに行ったのは良いのですが、お二人を示す場所は川の中になっておりまして。」
文治郎殿はため息を付くとわたしの前に茶を置き、自分も一口飲みました。
「わたしでは対応しきれない事態ですので、兄上に連絡をし至急お戻り頂いたのです。」
淡々と話しておられますが、わたくしとしては冷や汗が止まらぬ気分です。いつの間にわたくしたちは「界」を跨いだのでしょう。そして最終日とはいえ、白の君の神無月のお勤めを邪魔してしまったのです。
これはどうお詫びしてもお詫びしきれません。
「兄上に関しては大丈夫ですよ。元々、今回の同行の中に入って居なかったのに無理矢理、半ば嫌がらせ同然に連れて行かれたのですから。」
「白の君は何をなさったのですか?」
恐る恐る訪ねます。白の君はお狐様の中でも特別な方です。その方にこんな‥
「期間限定かき氷を食べに連れて行かなかったからだそうです。」
ん?聞き違いでしょうか?
お読みいただきありがとうございました。




