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こんちゃん?

お越しいただきありがとうございます。

 目を閉じて、鼻の先から尻尾の付け根まで白い手に覆い尽くされているのに、白い光が降り立ったのがわかりました。

 それと同時に、わたくしを潰さんとばかりにのしかかっていたものが無くなり、恐る恐る目を開けてみました。

 

 そこにいたのは、闇も飛ばすほどに光り輝く美しい『白』。凛と佇む清廉な気を身に纏った方。

 

 わたくしはこの方を模してこの身を与えられたのですが、もし並べられたとしたら誰も見間違えはしないと思います。それほど圧倒的な‥


「白の君‥」

 わたくしの囁くような声にこちらに視線を投げかけましたが、すぐに厳しい視線で川のあった方向に走り出されました。

 あの白い手に覆われたものははれ様なのでしょうか?奴らは白の君がお出でになったのにも関わらず、はれ様を連れ去ろうとしているようです。

 白の君ははれ様を覆い尽くす、何匹もいる大蛇のような大きさの白い手に追いつくと、一声鳴かれました。

 たったそれだけで、今の今まではれ様を連れ去ろうとしていた手たちは消え失せ、辺りには明るさが戻ってきました。

 手たちが消えた後には、横たわるはれ様の姿がありました。

「白の君!」

 急いで走り寄ろうとしたのですが、押さえつけられていたせいか足元が覚束ずに歩くこともままなりません。

「はれ様!」

「ここは長くいる場所ではない。場を変える。そこを動くな。」

 白の君に言葉に目の前がぐにゃりとします。何か術をかけられたのでしょか。

 

 気がつくと見知らぬ部屋の中にいました。

  

 移動時に気をやってしまっていたのでしょうか?板敷ーフローリングというらしいのですが、の部屋に椅子などが置いてあります。

 白の君は長座布団が敷かれた床の上に体を伸ばすように横になられ目を閉じ、眠っておられるように見えます。

 わたくしもふかふかの座布団の上に寝かされていました。

 ここは何処でしょう?来たことはないのですが、何となく知った気配があり辺りをキョロキョロ見回しました。

「目覚めたか?」

 眠っておられると思っていた白の君はゆっくり体を起こされました。

 わたくしも慌てて体を起こし、いわゆる『お座り』の姿勢をとりました。

「この度は‥‼︎」

「此度はようやってくれた。」

 震える声でお詫びをしようとしたわたくしの言葉を白の君が留めました。そして、わたくしを見ると一瞬不思議そうな顔をして、それから納得したように「ああ」と頷かれました。

「そなた、名を持ったのじゃな。」

 わたくしはその言葉に冷や水を浴びせられたかのように、体がサーっと冷えていくのをかんじました。

「申し訳ございません!わたくしごときがお名前をいただくなど!」

 わたくしはこれ以上無いくらい頭を下げてお詫びをいたしました。

「構わん。どうせはれじゃろう。呼びずらいから名前をつけるとか言いいそうじゃ。」

 そこは全くその通りなのですが。

 わたくしのようなものどもにとって『名前』を頂くのは特別な事にございます。名前を与えられた事で『個』が確立して揺るぎないものになれるのです。

「そうか、名を持ったか。なら都合はいい。」

 白の君は想いを巡らせてからおっしゃいました。

「今後も何かの折にはわしの身代わりを頼む。」

 今後?今後など、わたくしには‥

 わたくしは今更ながらやっと気がつきました。

「白の君、はれ様は?はれ様はご無事ですか⁉︎」

「安心せい。はれならそこじゃ。」

 白の君の視線を辿ると長椅子があり、そこにはれ様が横たわっているにが見えました。

「眠っているだけじゃ。もうじきに目を覚ますじゃろう。」

「お側によっても?」

 白の君が頷かれたので、そっとはれ様に近づき長椅子の上によじ登りました。

 はれ様は目を閉じていらっしゃいますが、確かに息をしておられます。頬のあたりをそっと触ると温かいです。生きていらっしゃいます。

「はれ様‥よかった。」

 目元がツーンとして涙が溢れそうになりました。

「して、先ほどに話じゃが。」

「白の君。」

 わたくしは恐れ多くも白の君のお言葉を遮りました。

「わたくしははれ様のお側にいる事はできません。」

「それは、はれを道連れにしようとしたからか?」

 ああ、やはり分かっておられたか。わたくしは頷きました。

「あのものたちに取り押さえられ、はれ様だけでもお救いしたいと願ったのは本当のことです。でもそれ以上に、はれ様がわたくしを庇って下さった時、この上ないほどの喜びを感じたのです。何をおいてもお守りしなくては行けない方なのに!」

 あのまま、朽ち果てても良いと思えるくらい満ち足りた気持ちになってしまったのです。


「じゃが、お前はわしを呼んだ。」

 

 穏やかな声に振り返ると、優しい眼差しで白の君がわたくしと目を合わせました。

「最後まで諦めなかったじゃろう?」

「それは‥」

 わたくしは目をそらし、俯きました。

「それでよい。結果が最悪でなければそれで良いんじゃ。」

 白の君のお言葉にわたくしは今度こそ涙が溢れそうになりました。

「で、どうする?頼みを聞いてくれるか?」

 わたくしはこくりと頷きました。

「今後このようなことが無いよう、精進いたします。」

「おう、精進しろ。ん?はれが目覚めそうじゃ。」

 白の君の言葉にはれ様の顔を覗き込むと、目元がちょと顰めた後にゆっくりと目が開きました。

 そして寝ぼけ眼でわたくしをみました。


「こんちゃん?」


お読みいただきありがとうございました。

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