表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/93

元来た道を戻りましょう

お越しいただきありがとうございます。

 後に文治郎殿にお聞きしたのですが、あの日お会いしたのは偶然ではなかったとのことです。

 偶々、わたくしとはれ様が散歩に出かけるのを見かけ、中々戻らないので迎えに来てくれたそうです。

「よく場所が分かりましたね。」

とお聞きすると、スマホとやらを取り出し、

「神の技のような術がございますので。」

と、申しておりました。

 彼が人界に戻りまだほんの僅かの日々しか経って居らぬのに、人の成長とは早いものだと、しみじみ思いました。

 しかし、その『術』とやらを聞いてみても、笑顔でかわされ何も教えてくれませんでした。


 色々なことがございましたが、神無月も本日で終わりです。

 そこでわたくしも隙が出てしまったのでしょう。


「ねえ、こんちゃん。ここどこなんだろう‥」

 はれ様が困ったようにわたくしに呟きます。

 はれ様がわからない道をわたくしが分かるわけありません。

 いつもの散歩道を曲がったわたくしたちの目の前には、大きな川が流れていました。


 やられました。わたくしは己の迂闊さに心の中で絶賛歯軋り中でございます。

「曲がり角を間違えたのでしょう。」

 言葉はあっさりと、何も心配ないように紡ぎます。

「でも、こんな大きな川、うちの近くにはないよ。」

 はれ様の家の近くに川は流れておりますが、確かにこのような川ではありません。城下町に合わせたような、ちょっと古風な橋がかかっているものです。

 目の前に流れている川は、向こう岸がやっと見えるほどのものです。川の雰囲気も表面的には綺麗ですが、嫌な雰囲気が漂っております。

 この場は一刻も早く離れた方が良さそうです。

「道を間違えたら戻れば良いのです。」

「そうだね、こんちゃん。」

 何かを感じ取ってか不安そうな表情をしながらも、はれ様はわたくしににっこり笑いかけてくださいました。

「そうです、戻りましょう。」

 道を戻ろう、と振り返ったわたくしたちは言葉を失いました。

 なぜなら、振り返った先は暗闇が広がっていたのです。

  

「え、これどうゆうこと?」

 はれ様の声が困惑を含んでいます。

 それはそうでしょう。先程まで歩いてきた道は何も見えない闇になっていたにですから。

「どうしよう。帰れないの?」

「大丈夫ですよ、はれ様。こんは鼻が効くのです。来た道は分かりますから、手綱をしっかり握っていて下さいね。」

 わたくしは必死で気配を探ります。ヘタをするとこのまま迷い続ける事になりかねません。

 意識を凝らし、風の流れを読みます。澱んでねっとりした気配の中、僅かに‥ほんの僅かな流れを見つけました。

「はれ様、行きましょう。」

 急足で進みましたが、手綱は引っ張られるばかりではれ様の動く気配がありません。

「はれ様?」

「こんちゃん、どうしよう。体が動かないの。」

 振り返ったわたくしの目に映ったのは、川から伸びてきた無数手がはれ様の体を捕まえ、身動きを取れなくしておりました。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ