きゅるん
お越しいただきありがとうございます。
はれ様をお守りすることにあたってのお言い付け。
その2 はれ様の買ってくるものにも気をつけること。
はれ様は年頃のおなごらしく、買い物がお好きなようです。
わたくしにもよくお土産と沢山のものを下さります。身につけるものも、襟巻きとかチョッキとか被り物などをくださるのですが‥あれ、あまり好きではないです。正直、いらないゴニョゴニョ。
でも、珍味などは大変美味しく!しかし近頃
「こんちゃん、太った?」
と言われてしまい、散歩の量が増えそれに反してご飯とおやつの量が減ったような気がします。
今日は学び舎がお休みだったとか、お友達と出かけておられました。
「こんちゃん、ただいま。」
お土産だよ〜と下さった鞠は転がすとピカピカ光り、それに逃げるのです!ついつい夢中で追いかけてしまいました。
いやいや、遊んでいる訳ではございません。そのような姿を見ると御家族の方々がお喜びになるので、つまりこれは演技!演技なのです‼︎
けっっっして遊んでいる訳では‼︎
動き回り少し疲れたので、長椅子に飛び乗り身を横たえました。何やら不快な空気を察し、横を見るとはれ様が本日お持ちになられた鞄がありました。
どうやら、鞄の中から漂っている気配のようです。
わたくしは迷わず鞄に頭を入れ、気配を探ります。
見つけました。わたくしはそれに齧り付き、鞄から引き摺り出しました。
「あ、こら。」
運悪く、はれ様に見つかってしまいました。
わたくしの口元から小さな人形を奪いました。
「こんちゃん、駄目だよ。人の鞄を勝手に漁ったら。」
「‥申し訳ありません。」
怒られて、少しシュンとした態度を取ります。
いや、わたくしも中々役者ですね。
はれ様はわたくしから取り上げた人形をポンポン叩いておられます。
アレは何の形なのでしょうか。見たこともない面妖な人形です。
「はれ様、それは何の人形ですか?」
「これ?」
はれ様は人形をわたくしによく見えるように目の前に置いて下さりました。
「お化けの人形だよ。ハロウィン近いから、つい買っちゃった。」
「はろういん、とは?」
聞きなれない言葉に首を傾げます。なんですか、それは。
「あ、そっか。知らないよね。西洋のお盆、って言っていいのかな?死者の魂が戻ってくる、ってやつ。」
ああ、それでお化けの人形ですか。よく分かりませんが。
何はともあれ、あの人形をはれ様から離したいです。
「はれ様、お化けの人形なんて怖いです。」
キュルン、とした目ではれ様を見つめます。
「う、こんちゃん可愛い。大丈夫だよ、こんちゃんはわたしが守るから!」
ああ、はれ様。お気持ちだけ、本当にお気持ちだけいただきます。
「駄目です!わたくしがお化けからはれ様をお守りするのです!そんな、お化け、やっつけてやります‼︎」
「こんちゃん‥」
はれ様はわたくしを抱き上げてくださいました。
「わかった。こんちゃんに守ってもらうね。じゃあ、このこもこんちゃんに退治してもらおうかな。」
そう言って、お化け人形をわたくしに渡してくださいました。
「はい!お守りいたします‼︎」
はれ様はわたくしの頭を撫でると他の荷物を持って部屋から出ていかれました。
わたくしはそれを見送ってから、そのお化け人形とやらの頭を咥え体部分は足で抑え、頭と胴体を引きちぎりました。
そして、困ったように母上様のところにお持ちしました。
「あれ?ごんちゃん、壊しちゃったの?」
綿の飛び出た其奴を母上様は「直すの無理だね」とごみの袋に入れ、口を閉じられました。
形のあるものには実態を持たない者たちが入りやすいようです。全てのもがそうとは限りませんが、今回はれ様がお買い上げになったものは、偶々タチがよろしくないものが取り憑いておりました。
取り敢えず、何事もなく安堵いたしました。
お読みいただきありがとうございました。




