心得
お越しいただきありがとうございます。
「お世話?お世話とは。」
はれ様は何やら納得いかないようにぶつぶつ言っているのを見て、白の君のお言葉を思い出しました。『あやつは自覚がないからの』諦めたように出た言葉に日頃のご苦労がうかがわれ、お労しく心が痛みました。
白の君の出雲行きが決まったのは昨夜遅くのことで、候補には挙がっていたもののずっと断り続けておられたのですが、稲荷大明神様に何やら『借り』があるらしく、最後は引きずられるように連れて行かれました。
そのような時間の無い時に最後まで心に置いておられたのは、はれ様のことでした。
我ら配下の者を呼びあつめ、人間に抵抗感がない者を白の君のお留守の間はれ様のお側に付かせることをおきめになりました。
それが私なのです。
はれ様をお守りするにあたって、いくつかの指示を受けました。
その1 はれ様が拾ってくるものには気をつけること。
その2 はれ様の買ってくるものにも気をつけること。
その3 散歩の折に、いつもと違う道を行こうとしたら止めること。
白の君に指示を受け実際に会うまで、はれ様はてっきり幼児と思っておりました。だって‥ねえ、拾ってくるとか迷子になるとか、大人なんですよね?
それともう一つ。
これらのことははれ様に気が付かれてはならぬ、と。
この事については立場をわきまえず進言をしてしまいました。はれ様にお話しして、ご自身も注意していただいたらよろしいのでは、と。
白の君は私の言葉にゆっくり首を横に振られました。
気がついてしまうと、今まで見えなかったもが見えたり余計なものを呼び寄せる発端になる、と。
まあ、確かにそうかも知れませんが、たかが人の子にここまでと思わなくもありません。思わなくも無いのですがーせっかくの白の君からの直々の任務!心してお守りします!
「こんちゃん、疲れたの?」
心してお守りする気はもちろんあります。でもここまでとは‥私は居心地の良い座布団ーラグの上でぐったり身を横たえていました。
ちなみにこの座布団ははれ様が私の為にわざわざ買ってきてくださっいました。ゴンの匂いのするものだと落ち着かないだろうから、と。いや、まあ、確かに恐れ多くて‥決して白の君が臭いわけでは無いからね!
はれ様は私の耳の後ろをカキカキと掻いて下さった。あ、そこも気持ちいいけど顔の辺りも‥私は頭を動かして、掻いて欲しい場所にはれ様の手を誘導しました。
白の君から指令を受けたが、はれ様からもこの家で過ごすにあたっての注意を受けました。
その1 ご飯はきちんと食べる。
その2 触られても嫌がらない。ただし、しつこいのは怒ってもいい。
その3 お散歩は嫌がらないで行く。
元々、私も白の君もいわゆる『お狐様』なので食事を摂る必要はありません。無いのですが、食べないと家族が心配するとのことです。
「お口に合うかな?」と出されたドックフードは中々の美味でした。「こういうのもあるよ〜」と出された犬用のおやつはこれまた!こんな美味いものを現世の犬たちは食べているのか!と羨ましくなりました。いや、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけど!!
触られるのも基本嫌な場所に触られなかったら大丈夫です。
でも、散歩でたまに目つきの鋭い、出会うと寒気がする犬がいるのだが‥あの犬は何なのでしょう。只者ではない気配です。
兎も角、一般家庭で飼われている犬、という立場ではまずまず及第点だと思います。他の家族にも疑われてはいません。生活自体は快適です。
では、何故このように疲れているのか、と?
原因は、ひとえに、はれ様です。
お読みいただきありがとうございました。




