大金星
お越しいただきありがとうございます。
「まあ、確かに。変なもの拾う才能は納得できます。」
近頃、いっしょに買い物に行く機会が多かった文治郎がうんうんと頷く、
買い物に行った先でも、はれが「欲しい!」というものは、自分としては手を伸ばしたくないようなものが多い。それは趣味の問題ではなく、本能からくる忌諱だ。
「だろ?犬ーげんを飼ってから随分と落ち着いたんだけど、あいつが死んでからはかなり変な空気が溜まっていたんだよな。ここ数ヶ月、なんか落ち着いてるなーって思っていたら。」
がくはごんをじーっと見つめた。
「まさか、よりによってお狐様拾ってくるとは。」
「大金星じゃな。」
しれっと言うごんにがくは本日何度目かのため息を付いた。
「金星だかなんの星だか知らんけど、確かにあいつのほどの周りの空気は変わっていないし、変な気配も減っている。お前がどうにかしてくれているんだろ?」
「はて、何のことかの。」
実のところごんは密かに頑張っていた。はれたちが出かけているときに、家の中にある「これ、やべーな」と思われる物々に圧をかけ悪さをしないようにさせるか、それでも歯向かって来ようとするものはこっそり処分をしていたのだ。
もっとも「これ、やべーな」的なものは大抵はれの部屋にあるものが多いので、バレることも少なかった。
「とにかく。」
がくはその場で座り直し、ごんに頭を下げた。
「うちの妹を守ってくれてありがとう。」
ごんは驚いたように目を丸くした。そして、ふいとそっぽを向いた。
「なんの事を言うておるのか分からんな。」
「今後もよろしく!」
「図々しいのう。」
「茶でも入れてきましょう。」
張り詰めていた空気が和んだことを感じて文治郎が立ち上がった。
「いや、けっこういい時間だからお暇するよ。」
「ぶん、一緒に酒と塩を持って来い。」
立ち上がろうとしたがくはキョトンとした顔をでゴンを見た。
「なに、その良い酒のつまみは塩だけでいい、って?渋いおやじのセリフじゃん。」
これから酒盛りすんの?不思議がるがくの横で文治郎が「ああ」という顔をした。
「清めですか。」
ごんは頷いた。
「大丈夫かと思うが念を入れておいたほうが良いじゃろう。」
「界」を跨いだのだし、残滓でも残っていて引きずり込まれたりする可能性がないとも言えない。
「お祓い的なものなわけね。じゃあ、はれは?」
「あやつは大丈夫じゃ。念入りにおくちペロペロしておいたしの。」
「ああ、あれそういう意味あったんだ。止めて、肌が荒れる!ってさんざん嫌がっていたけどな、はれが知らないだけでちゃんと意味があったんだ。」
そこまで言って、がくはあることに気がついた。
「俺もその『お口ペロペロ』ってやつでいいんじゃね。?」
ごんはがくの顔をじーっと見た。
「お主、わしに口元をペロペロされたいのか?」
「…やっぱいいです。塩と酒いただきます。」
ごんはほら見ろとばかりに鼻を鳴らした。
「でもさー俺今小腹空いてるんだよ。これで酒飲んだら酔いそう。」
「何か作るか?」
文治郎の問いかけにがくは一瞬考えたが、すぐに首を振りポケットに入れていたスマホを取り出した。
「いいよ、イーバーかオカモチ館で注文しよう。この辺店少ないかもしれないけどーあ、ピザもまだやってんだ。」
「「ピザ!!」」
その言葉にごんはがくの膝の上に飛び乗り、文次郎もがくに走り寄った。
「なになになに!何なのお前ら急に!!」
「がく、わしピザ食べたい!ピザってあの、牛の乳で作ったのがトロ~ってやつじゃろう!?」
「私もぜひ頂きたい!」
グイグイ寄ってくる一人と一匹にがくは座りながら後ろに下がる。
「近い近い近い!何、お前ら食べたこと無いの?」
「はれが『何入っているか分からないから駄目』ってくれない。」
「ネット注文は敷居が高いです!」
がくは、はあーと今日一番のため息を付いた。
「先ず、落ち着け。そして離れろ。それから何を食べたいかまとめろ。」
お読みいただきありがとうございました。




