ついて来る〜
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可愛いい子だったな。小さくてモフモフしていて。しかも中々の美人さんだったし。
なんて考えながら歩いていると、後ろに何かの気配を感じた。
さっきの神社でのことを思い出して足を早める。
「キュン!」
え?鳴き声に振り返ると、尻尾をパタパタ揺らしているさっきのモフモフがいた。
えーと‥うん、見なかった事にしよう。
そのまま踵を返してまた歩き出した。
すたすた。
テクテク。
無視だむし。
たったった。
パタパタパタ。
1人と一匹の追いかけっこが信号に差し掛かった。
そのまま信号を渡ろうと進んでいくと左折してくる車が見えた。
わたしの姿は運転手から見えているはず。
でも、小さいモフモフの姿は‥
気がつくとモフモフを抱き上げて信号を渡っていた。
「キュンキュン!」
モフモフは抱き上げられ、尻尾をパタパタ振りながらわたしの顔をペロペロ舐めた。
「だから‥飼えないって‥」
家はもう目の前。ってか、家の前だよ。
でも‥
悩んでいる間後ろから響く車のエンジン音。ああ、やってしまった、この人には見つかりたく無かったのに
「はれ?どうしたの?」
後ろを振り向くと車から母が降りてくる。
「何、それ。」
わたしの腕の中のモフモフを母が指差した。
「犬?」
「ぬいぐるみ?生きてる方?」
「生きてる方デス。」
母は、で?という顔でわたしを見た。
「えっと‥たまたま自販の前であって、そこで別れたんだけど、ついて来ちゃったというか‥」
「つまり拾ってきた、と。」
「いや、そういうわけじゃ」
「でも、結果的にはそうなっているよね?」
「うん‥まあ‥」
拾ってきた気はないけど、この状況ではそうなるの?
母はため息をつくと車のドアを開けた。
「乗って。」
「え?」
戻してこいってこと?
わたしはモフモフを抱いた手に少し力が入った。
連れて帰る気なんて全然無かったけど。この温かい生き物を手放したくないと思った。
お読みいただきありがとうございました。