転ぶなよ
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ごんは光を追って走った。「界」を渡るまでは、本来の姿で走った方が早い。
はれの近くに辿り着いたらまた小さくならなければならぬがな、ごんは走りながら思った。
地を駆けている今がまだ信じられない。
消されるのは覚悟の上であった。
良くてはれだけどこか出されるか、もしくは「あちら」側で保護される。ただその場合は「こちら」にはれが戻ってくることは難しいだろう。「巫女の血」には色々と使い道がある。もし、「あちら」で保護されてもすぐにその事は気付かれ何かに利用されてもおかしくは無かった。
「まさか、彼の方が御出でになるとは。」
誰が手を回したのか予想はつく。助かった。だが後始末が厄介そうだが、それは後から考えよう。
「界」を渡る気配でごんはいつもの姿に戻った。姿を変えたり、自分よりかなり高位の「気」を浴びたり短い時間に色々なことがありすぎて、ごんの体にはかなりの負担がかかっていた。それでもできる限りの速さで光を追った。
もう少し、もう少しではれを見つけることができる。無事に帰してやることができる。だから、もう少しもて、崩れるな。
光が唐突に消え、ごんは立ち止まった。
困惑したが次に瞬間何もない空間から飛び出て来た者に飛びついた。
「はれ!」
時間はほんの少し遡る。ごんがはれを探し回っているそのときに。
わたしは肩を叩いてきた相手をじーっとみた。
「なんでお兄ちゃんがここにいるの?」
「帰ってきたから。」
「お母さん、何も言ってなかったよ?」
「帰ってくるの決めたの今日だし。母さん言う暇なかったんじゃね?それか、お前に黙っていて驚くとこ見て面白がりたかったか。」
「どっちもありそうだね。」
お兄ちゃんとわたしは2歳違いだ。お兄ちゃんは県外の大学に行っているので長期の休みとか、用事のあるときにちょこちょこ帰ってくる。
「で、今回は何の用で帰ってきたの?」
「探していた本がウチの近くの図書館にあったんだよ。」
送ってもらうこともできたけど早く読みたいから、と兄はわたしの手を握って歩き出した。
「ちょっと!」
「腹減った。時間も時間だから帰るぞ。」
気が付けば辺りは結構暗くなった。
「お参りしていかない?」
せっかくここまで来たんだし。
「荷物が重いんだ。」
兄はわたしの手を握ったまま、振り向きもせずにずんずん歩いていく。
この年で兄妹で手を繋ぐって…あれ?
「ねえ、前もこんなこと無かった?」
兄に手を引かれて帰るのは今回が初めてじゃない事を思い出した。
お祭り迷子になるたびにいつも兄が見つけてくれた。そして、いつも手を繋いで家まで帰った。
何か懐かしい。口元が緩んでくる。
「大学生になってまで迷子ってどうよ。」
兄がため息交じりに言う。
「迷子になってないじゃん。ただの寄り道だもん。」
「どんな寄り道だよ、あ。」
「ん?どうしたの。」
何かあった?私の質問には答えないで、兄は空いている方の腕を伸ばし、真っ直ぐに指をさした。兄の指の方向を見ると、ぽかりと明るいのが分かる。
「はれ、あそこまで競争な。」
「何、急に。」
「負けたらそうだな~」
わたしは兄がなにか言う前に握った手を離して走り出した。負けて無理難題吹っ掛けられられるの嫌だし!
「こら、はれ!フライング!!」
後ろからの声は無視してそのまま走り続ける。
周りが暗いせいか足元がよくわからない。
「転ぶなよ。」
意外と兄の声が迩くて距離を確認しようと振り返ろうとした。
「危ないぞ、前を見てまっすぐ走れ。」
やばい、抜かされる!ラストスパートをかけ、光の中に飛び込んだ。
「はれ!!」
何故かごんが飛び込んできた。
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