やれる事をやろう
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「界」を渡った社の前は大変賑わっていた。
当然だろう、今日はこの社の主人の大祭だ。神々や人ならざるものなどが多数呼ばれている。
ごんはそれを眺めつつニヤリも笑った。
「さて、若気の至りがどこまで許されるか。」
まあ、もとより期待はしていないが。
今のごんの姿は、いつもの小さい子犬姿ではなく、堂々とした成獣の白狐姿だった。
人化も考えたのだが、自分と神々の力の差など歴然。下手な見栄を張るより真っ向から行ったほうがいいとの判断だった。
今からすることを人界に例えるなら、大名行列に直訴する農民といったところだろうか。
「やれるとこまで、やるしか無いの。」
そのまま社に近づくと、番のものに頭を垂れた。番の者もゴンの姿をみると「おや」という顔をした。
「稲荷大明神様の御使い殿か?あいにく、御神は来られておらぬが。」
「稲荷神は関わりのないことで参りました。わたくしはこの地に縁があるものにございます。火急の次第にて大神様にお目通り頂きたく参上いたしました。」
番のものは気づかれない程度に眉を潜めた。
「火急のこととは?」
「一刻を争う事態に御座います。直接主様にお会いしお伝えしたいと。」
番の者は軽く咳払いをした。
「そなたも理解っておるだろう。常であっても我が主とそなたが顔を合わせることは無いであろう。しかも今宵は大祭じゃ。」
「重々に存じ上げております。」
ごんは深々と頭下げた。
「わたくし如きが厚かましいことは承知の上です。どのような罰も受けましょう。」
ただ今は、急いでおるのです。
ごんの言葉に番の者は難しい顔をしていたが、軽くため息を付いた。
駄目か…絶望が心を覆った。
「仔犬が何を騒いでおるのじゃ?」
圧倒的な「気」が辺りを覆った。
「主様!」
番の者も目をむいた。
「このような場所に来られるなど!」
「きゃんきゃん、耳についたからのう。」
子犬かと思ったら子狐か、と大神はひれ伏すごんの前にしゃがみ込んだ。
「して、なにようじゃ。ここまでの無礼、子狐の悪巫山戯では通らんぞ?」
一つの社を治めるだけあり「気」の重さが尋常ではない。意識を緩めると、気を失ってしまいそうなほどだ。
だが、ここで諦める訳にはいかない。
ごんはゴクリと唾液を飲んだ。
「この地の鬼門を護る御神にお願いがございます。祭に乗じ『道』がいくつか開いております。そして、その道に迷い込んだ者たち、その者たちの身柄の保護を願いたく、参上いたしました!」
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