知らなくていいこと
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家の中にいるってことは、稲口さんの知り合い?でも、こちらには来たばかりみたいだし。え、じゃあ、大家さん、とか?
「白のが、頑張って情報入れてくれているから、最近の子たちは大丈夫なんだけどね。ぶんちゃんはちょっとタイミングがズレちゃっているのよね。」
わたしが悶々と考えている中、お姉さんは自然な手付きで稲口さんからごんを受け取って抱っこした。
そして、ごんの体の向きを変え、自分と顔が向き合うようにした。
「報告書、中々好評よ。」
「それはよろしかったですな。」
ごんは吐き捨てるように言った。あ、やっぱり知り合いなのね。
お姉さんはごんの態度はスルーして、わたしを見てにっこり笑った。
「あなたも元気そうね。この子が何か困らせていない?」
「いえ、別に。」
食欲旺盛で最近太り気味なのは困らせられていることに入るのかな?あれ?おねえさん、私に「元気そう」って言った?わたしのことまるで知っているみたい。
「あら、忘れちゃった?ウチで雨宿りしていったじゃない。」
「あ」
わたしが会ったことがあるか思い出そうとしているのを察したようにお姉さんが言った。
そういえばそんなこともあった。お休み処のお姉さんだ。
「あの時お菓子ありがとうね。うちのコたちとても喜んでいたわ。」
「いえ、こちらこそ。大変お世話になりました。」
慌てて頭を下げる。誰かかは分かったけど、なんでここに居るのかが分からない。
「ごんの知り合いですか?」
やり取りを見ていると十中八九そうなんだと分かるけど、一応聞いてみる。
「聞きたい?気になるわよね?アタシはね」
「聞くな、はれ。ただの仕事仲間じゃ。」
お姉さんは、何かウキウキして言いたそう。ごんは暴れて、お姉さんの腕に中から飛び降り、わたしの足元に走ってきた。流れでそのままゴンを抱き上げた。
「ちょっと、白の、話に邪魔しないでくれる?」
お姉さんは眉をしかめて嫌そうな顔をしている。ごんはお姉さんのことは一切無視で、私としっかり目を合わせた。
「世の中にはな、知らなくていいことと知ってはいけないことがあるんじゃ。知ってしまった故にそこから逃げ出さずに巻き込まれてしまうこともあるんじゃ。」
何この人そんなにやべーなにかなわけ?怖いんですけど!
「ちょっと白、余計なこと言わないでくれる?まるでアタシがひどい人みたいじゃない。」
「あなたこそ、この者をどうするつもりなのです?」
「一緒にお買い物とかお茶とか。」
「却下です。」
ごんはわたしの腕の中からするりと抜け出して、わたしを守るようにお姉さんとわたしの間くらいに下りた。
「なんで?良いじゃない。アンタだけ楽しむのはズルいでしょう。」
「楽しむって、仕事もしています。」
「あのー」
わたしは手を上げて、ぐだぐだ続きそうな二人の話に割って入った。
「ごんの言うとおりにします。お姉さんが何者なのかは聞きません。」
まえにごんがいっていた。必要になった、この人のことを知ることができるんだろう。でも、ゴンは今は言いたがらない。じゃあ、今はその時ではないんだろう。
「え〜お願いしたいこともあるのに〜」
お姉さんは口を尖らせて不服そうだ。
「分かりましたな?こやつを巻き込むのはお止めください。」
ごんは少しホッとしたようだ。
実際、私も面倒事は嫌だ。
ごんがお狐さまと聞いたのはほんのちょっと前。まだその事もいまいち自分の中で整理がついていないのに、これ以上今は遠慮したい。
「でも〜お願いしたいことがあるの。」
お願いしたいこと?
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