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かくれ鬼

お越しいただきありがとうございます。

 人の子?つまり、人間ってこと?

 狼に育てられた子供とか、猿が人間の赤ちゃんを攫って育てたとか、むかし話的な事を聞いたことがあるし、有名なアニメでもあったけど、いわゆるソレ?


「言っておくが、拐かしてきたとか、手下にするために育てたわけではないぞ。」

「イヤダナ〜ソンナコトオモッテナイヨ〜」

 やば、心の声が読まれてたらしい。

 ごんは疑っているような目でわたしをじーっと見てから、軽くため息をついた。


「あやつはいわゆる『神隠し』にあってしまったのじゃ。」



 『神隠し』それこそ昔話のワードだ。


「人界と異界、普段は閉じられて行来など出来ないものとなっておる。しかし必要に応じて意図的に界を繋げることも可能じゃ。」

 それには手続き等色々面倒くさい手順を踏まなければいけない、とごんはこれまた面倒くさそうに言った。


「ただし、稀に突発的に道が繋がるときがある。」

 急に開く道、それはなんの規則性もなくいきなり開き閉じられる。


「ぶんは兄弟と隠れ鬼をしていたそうじゃ。」

 隠れ鬼ーああ、かくれんぼうね。昔話よくお兄ちゃんたちとやったな。


「隠れ役だったぶんは、たまたま扉が開いていた納屋に隠れたそうじゃ。そんな広い納屋ではないから入口付近にいたらすぐ見つかってしまうと思い、奥の隅の方に隠れようとしたそうじゃ。」

 

 暗い納屋の中を恐る恐る進んでいく。端っこに座っていれば見つからないだろう。


「進んでも進んでも壁にはぶつからず、気が付けば知らぬ街の中にいたそうじゃ。」


 隠れ鬼を始めたのはお昼を食べてすぐの明るい時間だった。

 なのに、どうしてもう薄暗くなってるの?提灯に火がついているの?道行く人たちは、はっきりと見えないユラユラとした影みたいなの?


「怖くなって逃げ出して、近くの森の中に逃げ込んだそうじゃ。」

 

 大きな木によじ登り、食べれそうな木の実を食べたり川の水で喉を潤したりして数日過ごした。

 でも木の上ではよく眠れなくて、ウツラウツラしていたら木の上から落ちてしまった。


「たまたま近くにいた我が父が見つけてな。そのまま連れ帰ってきたという次第じゃ。」

「人界に戻さなかったの?」


 ごんはため息をついた。


「あやつが通ってきたじゃろう『道』の痕跡見つけて人界に戻そうとしたのじゃが、生憎数十年の時が経っておってな。下手に戻しても騒ぎになるだけじゃと、我が家で養うことになったのじゃ。」

「数十年って…」


 わたしは言葉が出てこなかった。

 浦島太郎もそんな感じ?ん?じゃあ


「何で今更、人界に戻すの?」


 ごんはお座りの体制に疲れてきたのか、コロンと丸くなった。


「ずっと異界で過ごすことは出来ないんじゃ。界のバランスが崩れるからの。ある程度育ち、独り立ちできるであろうと判断されると戻される。」


「でも、何も知らないところにたった一人でって」

 かなり過酷だと思う。進学や就職とかで生まれ育った土地を離れる人はもちろんいるけど…


「わしらもできる限りのことはしているつもりじゃ。衣食住は勿論のこと様々な補助もな。」

 現代における一般常識やマナーなども教える。生きるすべも教える。

「ただ、わしらのようなものがおいそれと人界に来るのはゆるされていないんじゃ。」

 ごんは話し疲れたかのように目を閉じた。

「巣立ちはいわゆる別れと同じこと。もう会うことはできないのじゃ。」

「でも、現にお隣に引っ越して来たんだし。」

「どうせ、誰ぞかに入れ知恵でもされたのじゃろう。」

 ごんは気に入らない様子で、ふんと鼻を鳴らした。


 そっか。本当はもう会えない筈…ん?あれ?


「おいそれと人界に来ることが許されていないなら、どうしてごんは人界にいられるの?」

「………」

 

 ん?返事がない。


「ねえ、」

「ぶんのところににぎり飯を持っていくなら付き合ってやってもいい。おなご一人で男の家に行くのは感心できぬからな。」


 急にすくりとごんは立ち上がってドアの前まで行った。

「さあ、行くぞ。」

「あ、うん。」


 わたしもドアを開けて、ごんにリードを付けた。

 あれ?なんか誤魔化された?


お読みいただきありがとうございます。

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