白の君
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「当たり前じゃろう。はなから言っておるではないか。」
稲口さんは呆然とした顔をしていると思ったら、また座卓にバン!と手を打ち付けた。
この人、いい加減に人んちの机をばんばん叩くのやめてほしい。傷んだらどうしてくれるの。
イラッとしたのだけど、次の発言でそんなものどこかに行ってしまった。
「犬として人に飼われるなぞ!稲荷大明神の御使いとしての誇りと尊厳は何処にいったのです!?」
ん?なんて?
「其の辺に転がっているのではないか?」
「尊き御身であられることをお忘れか⁉」
「尊いも何も、偶々この姿に生まれ出ただけじゃ。中身は何も変わらぬよ。」
「白の君が何を言っておられる⁉」
「あの~お聞きしたいことがあるんですけど。」
言い合いをしている二人の会話に恐る恐る口を挟む。
「なんじゃ、はれ?」
「うるさいぞ、小娘。いま兄上と話しておるのだ。余計な口を挟むな。」
「誰が『小娘』じゃ!無礼も大概にせんか!!」
「わたしに比べれば『小娘』です!」
「はれが『小娘』ならお主は『鼻垂れ小僧』じゃ!」
「いつの話をしているんですか!」
「あのー」
聞きたいことが~
「小娘は黙っとれ、いま兄上と大切な話をしておるのだ!」
「また『小娘』言いおったな、この無礼者が!」
「二人ともうるさい!」
苛立ちがつのり、わたしがキレた。
「で?」
「で?とは?」
「だから何がききたいのだ。」
こいつ態度でかいな。偉そうに聞き返してくる。
「ぶん、何じゃその態度は!」
「ごんは黙っていて。話にならなくなるから。」
「…はい。」
ごんは机に上でお座りをしたままシュン、と項垂れた。
先程のわたしのキレ具合に恐れをなして、稲口さんの手前まで逃げたのだ。
「貴様、兄上に対して!」
「それはもういいから、話にならないから、こっちの質問にまず答えて。」
この繰り返しにもいい加減うんざりしてきたので続きはぶった斬る。
「『稲荷大明神の御使い』って誰のこと?」
「そのようなことも知らずに」
「わしのことじゃ。」
上から目線で話そうとした稲口さんの言葉を遮り、ごんが静かな口調で話しだした。
「わしは稲荷大明神の使い、この姿から『白の君』と呼ばれておる。」
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