そこを動くな!
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『何かトラブルにあった時、起こってしまったことは仕方がないから、その次にどう動いたら最善なのかを考えなさい。』
予想もしない出来事に、パニクってしまい、どうしようかあたふたしているわたしに母が言った言葉を思い出した。
「兄上!」
いきなり塀を乗り越え敷地に入ってきて、ウチの飼い犬を抱きしめている成人男子(多分)。
これの最善は警察か救急車か‥
ポケットに入れていたスマホを取り出した。
ごんの散歩デビューから一月たった。
初めは散歩に行くのを嫌がるーというより怯えたような、怖がるような素振りもあったのだけど、慣れてくるとお外に行くのが楽しくなってきたようだ。
散歩で会う犬たちとも仲良くなり『犬友』もすんなりいっているーそう、ももちゃん以外は。
「何でももちゃんに会うと固まるの?」
散歩の帰り道に聞いてみる。
犬にも相性があるのは仕方がないんだけど。
「うん、まあ‥」
なんかゴニョゴニョ言っている。
ももちゃんのパワフルさに押されているのかな?大きさは大して変わらないのだけど、性格の違いとかもあるし。でもごんだって大人しいわけではないし。
つらつら考えながら歩いていると、うちに着いた。
門を開けて入ると、隣の空き家の前に停まっていた引越しのトラックが出て行くところだった。
隣、長いこと空いていたけど新しい人が入ったんだな。
なんとなくそちらに視線をやると、トラックを見送っていた男性と目があった。
引っ越してきた人かな?意外と若そう。20代半ばくらいかな。
会釈をすると、あちらも軽く頭を下げて、塀越しに話しかけてきた。
「後ほど改めてご挨拶に伺いますが」
そこまで言って、急に大きく目を見開いて口をポカーンと開けたまま固まってしまった。
え?何かあった?貧血?熱中症?
「あの」
「そこを動くな!」
『大丈夫ですか』と聞こうとしたら、突然塀を飛び越えてこちらにすごい勢いで走ってきた。
何この人⁉︎怖い‼︎
「ごん‼︎」
ごんを連れて家の中に逃げようとしたが、男はごんを捕まえ、ひしっと抱きしめた。
「兄上‼︎‼︎」
は?『兄上』?
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