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いやじゃ

お越しいただきありがとうございます。

急に寒くなりました。体調にはお気をつけください。


ブックマークありがとうございます!本当に‥心から嬉しいです!

「いやじゃ。」


「いや、じゃないの。これをつけないとお散歩行けないの。」

 

 ごんはソッポを向いて、ツーンと従いませんポーズをとり続けている。

 

 何回同じやり取りを繰り返しているんだろう、いい加減こっちの方が嫌になる。

 わたしはため息をつきながら持っている首輪をごんにつけようとして、また首をブルっと振るわれ避けられた。


「ワシを愚弄する気か!そんなものを付けなくとも礼儀正しく散歩ぐらい行けるわ!」

「そんなこと言っても、何かあると周りの人に迷惑かけるでしょう!」


 ごんがうちに来てから一か月が経った。

 

 結局飼い主が現れなかったので、我が家の飼い犬として正式に登録して、ワクチンとか予防接種とか色々あって今日が初散歩になるのだけど、首輪を着けるのを嫌がってる。


 そう、一か月‥学校で起きたあの事はいまだによく分からない。


 ごんが黒いモヤを食べた後、何も連絡をしていないのに数人の職員がやってきた。

 犬を連れ込んでいた事を怒られるかと思ったのだけど、倒れている彼女を担架に乗せて連れて行き、わたしはゴンと一緒に医務室というか、医務室の続き部屋の応接室みたいな部屋に連れて行かれた。

 

 ソファーに座らせられると、直ぐに机の上に用意されてい小皿に入った白い粉末をひとつまみ口に入れるように言われた。


 白い粉って何⁉︎警戒するわたしに、職員は笑いながらただの塩だと言った。


 なんでこの状況で塩を勧められるのか分からなかったけど、取り合えずひとつまみ口に入れた。

 

 あの時の衝撃は忘れられない‥


 めっちゃくちゃ苦かった!塩だと聞いていたのでしょっぱいだろうと思っていたソレは今まで食べた中で一番と言っていいくらいの苦味だった! 

  

 口の中の苦さに耐え足られず、職員が手渡してくれたペットボトルの水をごくごくと飲んだ。

 水の冷たさに一息つく。

 

水を飲んで落ち着いたわたしを見て、職員は向かいのソファーに腰を下ろし状況を聞かれた。

 何が起こったのか、と。


 正直、なんと応えていいかわからない。

 当事者である自分でさえ、なにがあったのか良く分かっていないし、あれが現実のことだったかそれすらもよく分かっていない。

「同級生と揉めていたら、彼女が急に倒れました。」

 そういうしかない。


 職員は、うん、と一つ頷いてから

「中々、言葉にしづらいかったり、何があったか理解できないこともあったとおもいます。

なので、起こった事を話して言ってください。君が話したことを驚いたり疑ったりはしません。ただあった事を順番に話してください。」


 自分でもよく分かっていない事を‥


「それにね、人に話してスッキリしませんか?こんな事家族に話しても信じてもらえるか分からないでしょう?」


 確かに。誰かに話してスッキリしたいし、自分の中も整理したい。

 

 わたしは話しだした。

 彼女とイザコザがあった事、暴力を振るわれた事、様子が急変した事、そしてーごんが助けてくれた事。


 職員はわたしが話し終わるまで黙って聞いていた。

「怪我はありませんか?乱暴されたのでしょう?」

 掴まれた肩や腕は服の下に隠れているから分からないけど、手首は赤くなっていた。

 職員は立ち上がると棚の中から小さな瓶を取り出して渡してくれた。

「痛みがある箇所や気になるところにかけて下さい。お連れ様が居られるので大丈夫かと思いますが、万が一の為に渡しておきます。」


 あれから特に変わったことは起きていないーというか、彼女とは会わなくなった。

 元々、学部も違うから会わなくても不思議では無いのだけど、共通の授業でも見掛けない。 

 何かを知っていそうなごんに聞いてみても

「必要なことならその内分かる。今分からないという事は必要がないという事じゃ。」 

と、分かるの分からないのか意味がわからない事を言われた。


「あれ?まだお散歩行っていなかったの?」

 台所にいた母がリビングにやって来て、持っていたコーヒーをテーブルに置き、足元にやってきたごんをひょいと抱き上げた。

 ごんも嬉しそうにパタパタ尻尾を振り、母の口元をぺろぺろ舐めだした。  

 ごんを撫でながら母が目で合図をしてきたので、わたしはゆっくり立ち上がると母に抱かれているごんに首輪を付けた。

お読みいただきありがとうございます。


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