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あんた、なに?

暴力的な表現、ホラー的な表現があります。

 男の子は元友人を見ると面白いものを見るように笑った。 


「何とも深くつけ込んだのう。其奴はそんなに美味いのか?」


 元友人は訳の分からない声をあげて男の子に掴みかかってきた。男の子はあっさりそれを避け、逆に足をはらって転ばせた。そして彼女が立ちあがろうとする前に眉間のあたりを「ポン」と音が出たような感じで叩くと後ろに飛び去った。

 

  男の子に飛びかかろうとしていた元友人はその体制のままピタリと動きかなくなり、どさっと地面に倒れ込んだ。 

 

 あっさりと、終わった。


「何も終わっとらん。動くな。」


 元友人に近づこうとしたのを察していたかのように、男に子が振り向きもせずに言い放った。

 そして軽く舌打ちをした。


「それで隠れているつもりか。甘く見られたものよ。その体に居れんことは分かっているはずだがの。」



 倒れている彼女にかけた言葉にちょっと身構える。あれ、倒れているフリなの?油断させてまた襲い掛かろうとしているの? 

  

 倒れたままの彼女はピクリとも動かなかった。でも、身体の中から黒い煙のようなものが少しずつ出てきて、彼女の体の上をまるで生きているかのように蠢いていた。


 よく分からない状況に目を離せないでいると、目のないそいつと何故か目が合ったような気がした。そして、なんとなく嫌な笑いを向けられた気がする。

  

 そんな事を思っていると、黒いソレがあたしを目掛けて飛んできた。

 まるで獲物を捕まえる網のように広がって。

 

 捕まる。逃げなきゃ!分かっている。でも間に合わないこともわかっていて、せめて!顔の前に腕を組んでガードしてソレに備える。

  

 でも、いつまで経っても何も変わらない。

 

 腕の間からそっと目を開けて覗いてみると、黒い靄は私に周りを何か分からない言葉のような音のようなモノを出しながら蠢いていた。


「見縊られたものよの。」


 男の子の声に怒気が含まれているのが分かった。

それでも黒い靄は獲物を捕えられそうなのに捕らえられない、苛立ったように何度も飛び込んでくるようにかかって来る。 

 その度に見えない何かにぶつかり、散らばり、また集まって、ぶつかって‥を繰り返している。


 どうしたらいいんだろう。自分からは動けないというか、ここから動くな言われてるし。この靄なんとなくだけど、口みたいなところとか目みたいに見えるところはあって気持ち悪いし。

 

 悩んでいる間に男の子はゆっくりこちらに歩いてきた。  

 そしてあたし捕らえようと見えない壁に張り付いて蠢いている靄に手を伸ばし、「ベリ!」と音がするぐらいの勢いで剥がした。

 男の子に捕まれた黒い靄は彼の手の中で暴れて逃げようとしている。

 彼は黒い靄を両手で、まるで紙をグジャグジャにするように丸めると、口の中にぽいと投げ入れて、飲み込んだ。


 え?アレって食べれるものだったの?丸めて?え?

 

 頭の中がぐるぐるになっているあたしを他所に彼は溜息をついた。


「相変わらず、口にしたいものではないな‥」


 そして足を揃えてその場でトンと飛び跳ねた。

 何処からか湧き上がってきた白い煙が彼を包んだ。煙はすぐに風に流され、その場には白い小さな子犬がいた。


 もう、何が何だか分からない。

 もう立っている力も無くなって、あたしはその場に座り込んだ。

 

 白い犬はテクテクとあたしの前まで歩いてきた。


「はれ〜疲れた〜なんぞないか?」

「‥‥え」

 近寄ってきて急に何を言い出すかと思いきやまさかのおねだり。

 私はまだ呆然としながらも応える。

「さっきもらったチョコなら‥」

「ちょこ?それ何じゃ?」

その言葉を聞いた白い犬は不思議そうな顔をして私の膝に乗っかると、兎に角早く出せと催促する


 疲れた身には甘味が‥と続ける白い犬を抱き上げて膝に乗せた。

 白い犬は悪戯が成功したような「どや!」とした顔をしてあたしをみている。

 

 あたしは犬に口に手をかけてカパっと口を開けさせて中を覗き込んだ。


「あがががー!」

 見たところ普通の‥ゲンの口内と何の違いもないと思うんだけど。

「何するんじゃ!」

 ゴンは暴れてあたしの手の中から逃げ出した。

「いや、ほら犬が喋るなんて、どんな声帯してるのかなって。」

「そこ⁉︎」

 せっかく助けてやったのに、ゴンはぶつぶつ言いながら前足を伸ばし、うーんと伸びをした。


 見たところは普通の犬。

 白いモフモフ。

 尻尾は身体の割に少し長め。目の色は茶色というより金色に近い。普通にいそうな‥


「あんた‥なに?」

 ゴンは一瞬迷うような、何処か痛そうな顔をしたよう気がした。

 気に触るような言い方だった?と思った。

 間に流れたほんの少し気まずいい空気を蹴散らすようにゴンはあたしの顔を見た。


「わしはゴンじゃ。お前が付けた名じゃろう?」

 

 その声は楽しそうで、何処かからかいを含ませているようだった。

 そう、この子はゴン。昨日あたしについてきた白いモフモフ。 


 あたしは手を伸ばしてゴンを抱き上げておでこをくっつけた。


「あたしが付けた名前じゃない!あたしのネーミングセンスはそんなにひどくない‼︎」

 

 ゴンはちょっと目を見開き、あたしの口元をペロリと舐めた。


お読みいただきありがとうございました。 


ずっと頭の中で書いていたお話を実際の文字にして、誰かに読んでもらいたい、でも勇気が出ずにしまい込んでいたものでした。

 拙いお話ですが、目を通して下さり、心から感謝しております。

ありがとうございます!


 お話はまだ続きます。お付き合いいただけると嬉しいです。

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