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第5話 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っている

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってるよ」

「そうですか。なんとなく、わかってはいたんですが」

 Nの話はこうだ。

 諸々の事情(話したくない)で前の、職場(言い淀んでいた)から追放され、行く当てもなく、独り身も寂しく(そういう人はおおい)、食うために仕事も必要で(当然)、この町に来て、一番稼げて人が多いという冒険者に転職した。

 そんな話だ。

「ダンジョンは稼ぐ場だ。仕事場。出会いはこの街で起こる」

「そうなんですか」

「そうだよ」

 そういってむしゃむしゃと朝食を食べる間にも人が入れ替わる。

 忙しい店。そんな中でも帰り際や入ってきた際にここの店主とメッサーに声をかける人たちがいる。

「出会い、ではないが、仲間が欲しいならファミリーに入ればいい」

「それも聞いたんです。ギルドで。だから入ろうとしたんですが、話を聞いてくれなくて」

 ギルドとは冒険者というビジネスを行う人間が加盟し彼らを支援、統制する集団。

 この町の冒険者の定義は一種だ二種だとある法律なんかよりもっと単純明快で「中央のダンジョンに挑戦する人」のこと。

 ギルドに所属する冒険者の小さな集団であるパーティー、その冒険者のパーティーや支援する人間が集まって集団で効率的にダンジョンに挑戦するための集団がファミリー。

 メッサーの認識はこんなものだ。この町の冒険者以外の人間の認識も大体こんなものなので、大きく間違っていない。

「新人歓迎、みたいなところはいくらでもあるだろ。胡散臭い、というか新人を使い捨てることしか考えてない連中みたいな糞の山も同じくらいあるが、そんなのはギルドに聞けばいい」

「ファミリーについて詳しいんですね」

「商売柄な。それにここは俺の街だ」

 彼にも何か事情があるのか。


「まぁ聞いたんです。でギルドのおすすめというか、いろんなギルドの話を聞いて、その拠点に行って話をしたんですが、入れてくださいみたいな。でもどこでも断られる。なぜなんでしょうか」

「そりゃ、なぜだろうな」

 メッサーの目の前にいる男は、まぁコミュ力が高いというほどではないが特別低いわけでもなさそう。

 粗雑なやつも多い業界だが、インテリ崩れや一山当てたいインテリもたくさんいるのがこの町のダンジョン。多少偏屈だから追い出されるとも思えない。

 恰好はいかにも新人だが、実際新人なのだ。経験者を募集するわけじゃなければそこは割り引くべきだ。

 つまりなぜかといえば、なぜなんだろうな。

「適当なこと吹聴したとかじゃないか」

「嘘は言ってません。よそから来たとかちょっと訳アリでみたいなことは言いましたが」

「じゃぁ、なぜなんだろうな」

 なぜなんだろうな?

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