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雪女〜真夏の雪女〜  作者: 黒井 羊
7/15

モナリザの微笑

「確か雪男って、もう正体が分かってるんですよね。」

  由利がそう言うと修一郎は喋り始めた。

「動物学者がヒマラヤとチベット高原に残る雪男(イエテイ)の毛・骨・毛皮をDNA鑑定したら大型の熊だった。でもこの結果をどう解釈するかで面白くなってくるんだ。」

 動物学者が鑑定したサンプルの中には糞便等の排泄物も含まれていたが場所が喫茶店でもあり修一郎はその言葉は敢えて口にしなかった。

 由利は弥生も話を聞いているのかなと弥生を見た。弥生はモナリザのような微笑みを浮かべて窓の外を見ている。ありふれた表現だが絵になる光景だ。この表現を修一郎が使い始めると弥生は〈モナリザと一緒にするな。〉と一蹴したらしい。由利には弥生の気持ちが理解できる。修一郎が〈モナリザ以上の微笑みだ。〉と言っても弥生は納得しなかっただろう。弥生はきっと〈モナリザと比べるな。〉と言ったに違いない。

 確かにモナリザの微笑みには何とも形容しがたい不思議な魅力がある。でも弥生の微笑みは目の前にある生きた微笑みだ。由利は修一郎が弥生の微笑みをモナリザの微笑に例えた話を聞き、物事の見方が少し変わった。〈モナリザ〉が名画なのではなく〈レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザ〉が名画なのだ。ダ・ヴィンチがあの女性にあの微笑みに魅力を感じたからあの絵が誕生したのだと。

 弥生と修一郎が空から舞い降りてくる雪を見ている光景。それは弥生と修一郎に雪女が見えているからなのだろう。今は由利も雪女が存在するんだと何となく解るような気がした。

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