男と女
「雪ちゃんがたくさんいるな。」
修一郎が言う。 この表現は修一郎が雪の積もった日によく使う擬人法だ。
「それにしても雪女と雪男じゃ全然雰囲気が違う。妖怪の雌雄とは程遠い。」
修一郎は弥生に話しかけているのだが、弥生は窓の外を見たまま返事をしない。由利はそんな弥生を見て、修一郎の話を聞いているんだなと納得している。弥生の表情は修一郎が話す内容によって微妙に変わる。修一郎が〈雪ちゃん〉と言った時は少し唇を尖らせ、雪女と雪男の話になった時は少しニヤッとした。
弥生は相変わらず外の雪景色を見てみている。 由利は弥生が特に修一郎と話すことはないんだと察し、修一郎に話しかけた。
「課長、雪男と雪女って雪の男と女なのに全然雰囲気違いますよね。」
「そうだね 、雪男はどちらかと言うと凶暴で攻撃的、怪物のイメージが強い。でも雪女はどこか儚げな怖さがある妖怪かな。」
修一郎が喋っている時、弥生は修一郎にチラリと視線を向けた。弥生のその反応に由利はホッとしたものを感じ、修一郎に言葉を返した。
「あー、その表現いいなと思います。」
「せっかくだから、由利ちゃんに雪男の屁理屈論でも話してあげたら。」
弥生が言った。