茶庫
由利達三人は雪を踏みしめながら茶庫へと向かった。茶庫は弥生がお気に入りの喫茶店だ。値段は少し高く、それもあってお客はそれほど多くない。弥生はそこが気に入っていた。由利も初めは一人で行くのは自分へのご褒美の時だけにしていた。でも毎回、マスターは飲み物の料金だけにしてスイーツはサービスにしてくれる。〈失礼な言い方だけど、由利ちゃんは店の動く高級インテリアなんだ。店内が落ち着いて映える。そのアルバイト料。〉とマスターは言う。後で修一郎から聞いたのだが飲み物以外の料金は弥生が寄った時に払っているのだと知った。修一郎も〈気にしなくていいからね。週に一、二回のペースでも構わないよ。マスターも喜んでる。〉と由利が茶庫に行きやすいように助言してくれた。
由利は弥生に良くしてもらってる理由を聞きづらく修一郎に尋ねた事がある。
「弥生は男の子二人だろ。女の子が欲しかったんだ。由利ちゃんみたいに友達感覚で話せる女の子がね。だから親孝行じゃなくて他人の親孝行だと思って行ってあげて。」
そう言われた。
夕方、店に寄るとマスターは簡単な食事を出してくれる。調理法は簡単だが一つ一つが高級な食材なのは由利にも解かった。そのせいもあって週に二〜三回行くこともある。