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ごちそうの詩 Season2  作者: bashi
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コーヒー

今日もまた鬱々としていた。


ああでも、こうでもないと堂々回りを繰り返しているうちに、ガード下の喫茶店に入っていた。


老舗らしいモダンな喫茶店。照明の蛍光色も淡く照らした。シナイグレーのような年季の入った壁。微かに流れるジャズの音色。


1杯のブレンドコーヒー。静かに昇る湯気の質感。褐色のコーヒー。小さなカップのミルク。銅板の灰皿。


温かい質感。しかし、今の僕には慰めにならない。


コーヒーを一口。苦み、深いコク。それと交わる強い酸味。心は晴れない。しかし、落ち着く。


タバコの仄かな香り。昭和の香り。カウンターに並ぶコーヒー豆の缶。


全て僕の視界に入る。芳ばしい。こういうのも悪くない。ノスタルジックな情景。


しかし、僕は昭和を知らない。僕は昭和を生きていない。自分の妄想の中の昭和。ちっぽけな想像力で描く昭和。


コーヒーをゆっくり飲む。酸味の余韻。それが旨みに変わる。大人の余韻。


僕にはそんなものはない。コーヒーの味など、分かっていないのかもしれない。


絶対そうに違いない。いや、そうだ!


僕は黙って喫茶店を出る。振り返えらない。微かに冷たい風の中、今日もまた1人・・・。


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