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ごちそうの詩 Season2  作者: bashi
19/21

早朝のかけそば

もう朝の5時を過ぎていた。徹夜した後で初めて駅前を歩くと、もうだんだん日が出始めていると分かる。まだ薄暗く肌寒いが深夜の危険な香りはなく、駅前の雰囲気は清々しいものだ。


しかし、体は正直だ。いつもの生活習慣と違うことをすると、悲鳴を挙げる。まだ動けるが意識が遠退いていく。そうしたらまたハッとしてテンションが上がる。


仲間が朝飯を食べようと言うので、特に理由もなく朝から開店しているからと立ち食いそば屋に入った。腹が空いていればカツ丼とミニソバといきたいところだが、今日は寝不足とそれに伴う疲れから空腹感がなく、軽く済ませようと思い一番安いからとかけそばを頼んだ。


注文してから数分で茹で上がった。そして、店員が番号で読んでくれる。飲食店で働くのは大変である。それでありながら朝から働いている店員には頭が上がらない。


席に戻り、相変わらずの眠気の中でネギとワカメというシンプルなかけそばを食べた。地元の蕎麦屋のような感じの山の湧水で作ったそばとは違う。出汁もどちらかというと醤油の風味が強い。


しかし、疲れた体には凄くしみてくる。汁を飲んでいると湯気が顔に当たり寒い顔を温めてくれる。そしてこれが落ち着くのである。値段よりもはるかに高品質の旨い出汁と強めな醤油の風味が眠気を優しく緩めてくれる。そして汁の暖かさが体を温めて僕のボイラーに火を入れてくれた。


そしてそばをすすってみる。固すぎないで柔らかめに茹で上げられた麺はストレスなく体が受け入れていく。いつもは胃に若いんだからとたくさんの食べ物を入れてきたが、シンプルで少なめな食べ物を食べるのも良いなと思った。まるで今日のような日は疲れたろう?どうかゆっくり休んでくれよと胃に言っているみたいだった。


トッピングのネギは出汁のかおりにパンチを与え、汁に浸かると甘さが出てくれて美味しい。ワカメも出汁と合っていて良いな。


こうしてあっという間に食べ終わり店を出ると、すっかり日が登り駅前は明るくなっていた。掃除をしてくれるボランティアの方々。これから目的地に向かう清清しい顔の人達。みんな駅に集まってくる。これを見て僕も、さっきの眠気と疲れが嘘のように感じた。僕も清清しい気分になった。しかしこんな気持ちにさせてくれたのは、他でもないかけそばなんだ。気味が僕を温めて元気をくれた。だから一日頑張れた。君がいなかったらこんな気持ちにはなれなかっただろう。本当にありがとうね、かけそば!

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