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79 狂人vs天皇

 

 人気動画投稿者東堂悟の配信。今日も挨拶は、笑顔で明るく、見る人全てに元気を与えている。


『はいはーい、今日も配信やってくよー!』

『……遊ぶんじゃなかったのか?』

『えっ、スポーツするよ?』

『はいはい、分かりやした』


 どうやら奴を引き連れている様子。しかし、今回は珍しく、普通に約束をしており、時間通りに奴が東堂家へと訪れていた。だが、奴を待っていたのは娯楽ではなく、配信だったらしいが。


『お母様VSグラウザー!』

『へぇ』

『種目はバスケ!』

『では、グラウザー。参りましょうか』

『男だからと楽して勝てると思わないことです』

『まさか、貴方相手にそのようには思ってはいません』

『お覚悟を』

『ええ、良い試合を』


 今回は、奴と東堂春妃のスポーツ対決。


 奴は完全に乗り気になった。先程まで、文句を言う筈だった奴は、好きなバスケをすると聞くと、直ぐに対応を改めた。更に相手は春妃。プールで、彼女のエリナに負けず劣らずの肉体を見ており、その期待は高まる一方。奴は、相手が強者であれば強者である程、負ける事を度外視してやる気が上がるのだ。それ、向こう見ずの勇気、人呼んで蛮勇。


 春妃は、可愛い息子に良い所を見せるチャンス。しかも、それは趣味であるバスケならば、やる気は更に上がる。後、男性最高クラスの肉体を持つ奴と対決をする機会は、人生あるか無いかなので、非常に楽しみにしている。それに、相手が奴なら体が当たっても文句を言わないから、気を使う必要は無い。故に、存分に力を出せると。



 互いのモチベーションは最高の状態であった。



 一方、可愛い可愛い悟君を見に来た筈なのに、いきなり男子最強VS女子の決戦が始まってしまう事に、女性視聴者は動揺と不満を隠せない。酷いものだと、奴に対してのアンチコメを絶え間無く送っている

 逆に、男性視聴者は、奴の活躍が目当て。待ってましたと言わんばかりに興奮していた。そして、この時ばかりは悟に対して、アンチコメではなく、感謝と賞賛のコメントを送っていた。


 1on1。


 春妃と奴は、スリーポイントラインを挟むように立ち。先行、後攻をジャンケンで決める。春妃が勝ち、オフェンスとなる。


 いつも穏やかな表情している春妃。この瞬間、微笑みは消え失せ、その眼で奴を見据える。無言で威圧感を出し、どの様な動きで出し抜くか考える。


 奴も春妃相手に呑気に喋る余裕はない。だが、肌から伝わる威圧感を受けて気分を高揚させた。しかし、その気持ちを抑え込み、一呼吸おいてから、鋭い目を向け、春妃の僅かな動きを察知できる様に感覚を研ぎ澄ます。


 春妃が奴にボールを渡し、そのボールを返す。

 それが、開始の合図。


 春妃はボールを受け取った瞬間、いきなり高くジャンプして、シュートへと移る。

 奴は、最初の最初で3ポイントシュートを狙いにくる春妃に驚愕。反応するも、その手がボールに触れることはなく、放たれたボールは危なげなくネットを通過した。 


 攻守交代し、奴がオフェンス。


 奴はボールを受け取り、直ぐにドライブ。出来るだけゴールに近づくように動き始めた。しかし、春妃は素早くコースへ入り込み、攻めを潰す。そのまま、左手でボールを弾こうと動いたその時、奴は飛びシュートを撃つ。それは唯のシュートではない。後ろに下がりながらのシュート【フェイダウェイシュート】である。更に、そのシュートは放物線を高く意識して放ったもの。これらの2つの要素を兼ね備えたシュートは、飛んでブロックしようとした春妃の上を通り、リングに触れることなく、ゴールに入る。


 互いの1回目の攻防。点数では、3対2で春妃がリード。しかし、視聴者は、思った。



 本気過ぎる。



 視聴者は、1度の攻防で理解した。これは単なるお遊びではなく、両者がスポーツマンとしてのプライドのぶつかり合いである事を。

 因みに、悟は混ざりたいと思ってはいるが、奴と母親の試合が見たいという気持ちが大きく、今は完全に見る専となっている。


『……』

『……』


 お互い無言。何も、語らない。


 奴と春妃の1on1は、更に続く。



 その30分後、



『……?』

『……!』

『……!!』

『……』 



 2人は言葉を交わすことなく、意思疎通をしていた。周りは喋れやと思うが、そんな思い知らんと2人は、そのまま意思疎通を行う。


 しばらく見ていると、ハーフラインから1on1を始めた。


 それはオールコートの1on1だった。


 どちらかがシュートを入れるか、コートからボールが出るか、反則を行うまで、コート内を駆け回る。


 コートからボールが出れば、出さなかった方が。


 シュートが入れば、入れられた方がハーフラインからオフェンス。


 ダブルドリブル、トラベリング、チャージングをすれば、反則をしていない方がオフェンス。


 どれ程ゴールを決めたのか、ボールを奪取したのか。


 見ている者も分からなくなった頃、春妃がオフェンスとなって攻め込む。しかし、いきなりドリブルをフリースローラインの側で辞め、ボールを持ち、一歩二歩。そして、飛んだ。


 奴は、春妃の狙いをボールを持った時点で、理解した。それと同時に、足に力を溜め、今日最高のジャンプをする。理解して飛んでいた為に、ボールに触れることが出来た。後は弾くだけと手に力を入れる。

 春妃もこの時ばかりは驚いた表情を浮かべた。しかし、冷静を欠くことはなかった。片手で直接ゴールに入れようとしていたが、奴に弾かれんよう両手で力強く掴み押し込もうとする。


 互角の勝負と思えた。しかし、それは奴の圧倒的な不利。大人の女性と子供の男性の元々の力の差。そして、身長差を少しでも無くす為に、左肩を下げ、右肩を上げることにした結果、春妃の両手で加えられた力に対し片手で対応しなければならなくなったこと。


 完璧なタイミングでのディフェンスではあったが、それを上回る圧倒的な力。奴の手は、呆気なく弾かれ、バランスを崩し、地に背をつけた。

 春妃は、ボールをゴールに叩き込んだ。そして、そのままリングを掴んで、倒れている奴を静かに見下ろしていた。


 それは、勝敗を決した瞬間でもあった。



 100対76



 どうやら、2人は100点先取制でしていたらしい。そして、春妃は勝負の締めとしてダンクをしたのだ。


 互いに健闘を称え合いながら、握手をする2人。それは、スポーツをする者として、正々堂々と対決した結果である。春妃の表情は、歓喜溢れていた。対する奴は、いつも以上にテンションが高いので、ご機嫌なのだろう。


『凄かったね〜! では、今日はこの辺で、またね〜』


 そして、最後に完全に存在が空気になっていた悟が映り、配信が終わった。


 今回の配信。新たなブームを引き起こすのに、十分過ぎる内容だったのは言うまでもない。




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