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63 5年を迎えた男はバスケが好き

 

 小学生5年目の春を迎えたある日、


「ねぇ悠人君。バスケしてみない?」

「んぉ? いいぞ」


 1日5時間以上ゲームするのが日課の里奈から、運動の誘いをされる。思わず変な声が出てしまったが、俺としてはありがたいお誘い。


 球技大会の時は、人数制限無視であったから、遊び程度でやっていた。


 実際は本来のルールで、全力でやりたかった。しかし、バスケをやりたい男を集めるのがまず面倒。そして、女性陣に混じるのも怪我などの理由であまり良い顔をされない。



 本当にあの時は、運が良かった方だということ。



「悠人君は知らないけど、私だって鍛えてるんだよ?」

「なら見てみよう。日頃のゲームの仕返しをするチャンス。男だからって、全てが女より劣るというわけではないよ」

「分かってるよ。悠人君だもの、楽に勝てるとは思ってないよ! 全力でいくよ!」

「助かる」


 全力でバスケを出来るということに喜びを隠せずにいる。しかし、下手にプレイスキルがあることを知られるのは、不審がられるので避けるべき。

 一応球技大会の時は、男性特有の片手でのシュートは控えて、両手でシュートをしていた。


 いや、俺異常だから軽く流されるか?

 ていうか、ここ数年で結構ボロ出してるし、今更プレイスキルがどうこう言われるだろうか?


 まぁ、いいか。


 誰も居ない学校の校庭で2人で1on1。

 彼女に、里奈に感謝しながら、全力で相手をした。






 その数日前、


「悠君がしてもらいたいこと?」

「はい」


 里奈は、真夏にある相談をしていた。

 それは、悠人は何をしてあげれば喜ぶのかということ。


 日頃から、女性に囲まれ振り回されている(実際は振り回されに行っているようなもの)。自分もその1人であり、悠人が里奈にお願いや我儘を言うことがなかった。

 なので、自分から悠人のやりたいことを誘うことにしようと思い至った。


「運動にでも誘えばいいと思うわ」

「やっぱりそうですか」

「エリナの所に行く時点で、溜まりに溜まっているってこと」

「真夏さんから誘わないんですか?」

「最近じゃ、よく誘ってるわ。ほら、文通しなくなったから逆に悠君も暇なのよ」


 悠人との文通は、始めてから4年の時間を経て、ついに禁止するようになった。

 文通をしていた者は目を覆いたい気分になる。告白を断られたのにもかかわらず、未練がましく我儘を言って、悠人の時間を奪い、繋がりを得られたことに満足していたのだから。

 しかし、悠人は嫌な顔せず、文句1つ言わずにしていたのだから、文通していた者達は、謝罪するのではなく感謝をするのだった。


 まぁ、いきなり文通相手が居なくなって、生活感覚が狂って苦労したのは言うまでもない。



 閑話休題



 とりあえず、里奈は柳田から情報を集め、悠人の好きなスポーツはバスケと予想。

 そして、学校終わりに、いざ誘って1on1をすると、


「里奈、大丈夫か? 」

「だっ、大丈夫ぅだぁよぉ」

「無理は良くない。少し休憩しよう」


 里奈の体力がもたなかった。

 里奈はふと思い出す。新体力テストにおいて、殆どは下位にいる悠人だが、持久走においてはマリアと常に周りと圧倒的差をつけて1位2位争いをしていることに。


「私とだとつまらない?」

「全然」

「でも、全く疲れてないじゃん」

「それは日頃のトレーニングの賜物」


 息を切らさず、良い顔で笑っている悠人を見て、直ぐに目を逸らす。里奈自身、1度柳田や明日香と参加したことがあるので、その苦行がよく分かっている。

 なので、それ以上なにかを言うことはできなかった。


「でも、良かった。バスケとかは、まともに出来ると思ってなかったし」

「それ、悠人君が怪我しやすいからでしょ」

「そうかもな〜」


 悠人は軽く笑いながら、指先で器用にボールを回し始める。

 悠人自身、自分が気を抜いているとよくやらかすのは理解している。しかし、怪我をしたならともかく、怪我をする可能性があるという理由で、行動を制限されるのは納得いかないのだ。


「もう遅くなる、そろそろ帰ろう」


 口ではそう言っているが、もう少しやりたいと思っていることが里奈には分かる。


 だが、安全には代えられない。


 悠人を見送り、里奈も自分の自宅へと向かう。

 里奈は帰路を歩きながら、考えていた。

 悠人は異様にゴール下でのプレイが上手かった。

 ゴール下はプレイヤー同士が1番接触しやすい場所なので、避けると思いきやガンガンゴール下で攻めてくる。ガンガン体が接触する。何度胸と胸が当たったことか。


 バスケは、ラッキースケベの宝庫だった。


「そうね、私も今度誘ってみるとするわ」

「きゃあ!?」

「あら、そんなに驚かなくてもいいじゃない」


 いつの間にか隣にいた柳田。

 彼女のストーカーの範囲は校内ではなく、学校内。当然、校庭もその中に含まれる。

 彼女のストーカーはエスカレート?し、写真のみならず、動画も撮影するようにもなった。


「1人だけ良い思いなんてずるいわ」

「なら、柳田ちゃんも混ざれば良かったじゃん」

「私はこの前、バトミントンしたから譲ったの」

「そうだね」


 明日香は卓球。マリアはテニス。早苗と優奈はランニングと全員各々誘っている。


「本当にずるいわね」

「まぁ、あんまり意識する暇もなかったけど」

「ええ、必死だったもの。でも、比率で言えば8:2で里奈ちゃんの負けよ」

「うそぉ」

「球技大会の時も動けると思ったけど、1on1を見て確信したわ。悠人君は、バスケが1番上手い」


 だが、柳田はどうにも腑に落ちない。上手いのは確かだったが、やりにくい感じがしていた。両手でシュートはどこかぎこちなく慣れていないようだった。

 レイアップシュートもそうだった。


(もしかしたら、片手でのシュートの方が彼にあってるのかも)


 そんな考えを持ちながら、後日エリナに報告。

 エリナは、即座にトレーニングにバスケを追加したらしい。



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