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閑話 母と息子で恋愛ゲーム

 

「新作のゲーム?」

「そうなの〜。今回は恋愛ゲームよ」

「タイトルは?」

「【息子と恋しよっ!】略して息恋!」

「……」

「あガガガッ!! まって、待って、話を聞いて!」


 俺の目の前で、起きている状況を説明すると、真夏が玲奈さんに関節技を決めている。


 原因は先も述べていたように、息子持ちの母に対し、息子と恋愛するゲームを持ってきた。明らかに、宣戦布告である。


「最近メディアでは、母×息子や息子×母が流行っているの〜。だから、流行に乗っかって作られたの〜。私の責任じゃないの〜」


 とは言いつつ、迷いなく真夏に携帯ゲーム機ごと渡そうとしていたからキレられた。


「悠人君の感想も聞きたいから〜。持ってきたの〜」

「……そうですか」

「大丈夫、悠人君はこの【娘と恋しよっ!】略して娘恋!」

「はぁ」


 ゲームとはいえ精神的BL体験は勘弁。せめて、相手は女性であって欲しいものだよ。


「これは凄いのよ〜。 赤ちゃんから育てるんだから〜」

「……たまご○ち?」

「あれとは違う〜。あれは育て方さえ分かれば好きなキャラが育つけど、これはどんなに育て方が同じでも同じように育たないランダム性が含まれてるの〜。それも何万通り以上!」

「へぇ……」

「幼少期、少年期、青年期に育てば、朝と夜の挨拶は当たり前。でも、反抗期も搭載。人生は自分の思い通りにいかないってことをゲームでも体験!更に、音声認識で実際に会話しているように出来るようにしたわ! あっ、でも声に出したくない時は、キーボードで打ち込めばオーケー!」

「……」

「ゲームの中で子育てを体験したのち、娘と息子と恋愛を始める。さぁ、let's むすこい!」


 あまりの迫力に真夏と俺はただ渡されるゲーム機を受け取る以外にすることはなかった。

 そして、玲奈さんはニッコリと微笑を浮かべていた。


「因みに、開発者でも数人くらいしか攻略出来てないから」


 いつも通りだな。リブシスの恋愛ゲームは、攻略させる気がない。



 因みに、優奈は早苗ちゃんと一緒に夜々ちゃんの家に遊びに行ったらしい。

 俺も行きたいと思ったのは、内緒の話。




 〇〇〇〇


「息子の隣で息子を育てて、そのまま恋愛するって複雑」

「母親の隣で娘を育てて、そのまま恋愛するって複雑」


 そもそも、隣に並んでやるゲームじゃないはずよね。でも、悠君は何も気にしていなさそうな顔でゲーム始めてる。でも、私だけソワソワしているわけにはいかない。

 なら、私もそのまま隣でやりましょうか。


 とりあえず、自分の名前を入れてと。


『息子の名前を決めてください』


「息子の名前ね〜」

「悩ましい」

「どうしようね」

「俺と真夏の頭文字とって、真悠(まゆ)でいいかな」

「じゃあ、私は悠真(ゆうま)ね」

「りょーかい」


 ふふふ、まるで新婚さんみたいね。

 まぁ、子育ての後私は息子と、悠君は娘と恋愛するんだけど。



 ……あれ? 現実にしたらなんて複雑な関係なのかしら。







『母さん、いや真夏! 僕といっしょに幸せになろうね!』


 なんか、普通に攻略できちゃったんだけど。

 流石に悠君の前で、音声認識機能で話さない。母親が隣でゲームのキャラに対して愛を囁くところなんて見たくないだろうし、私も見せたくない。

 悠君もそれを気にしているのかキーボードで会話を進めていた。



『大丈夫だよ、家事は僕に任せて!』


 ……なんか性格が悠君に似てるわね。


『何時も側にいるお父さんよりも幸せにしてあげるからね!』


 ……もしかして、悠君をお父さんと思っている?



 とりあえず、あとで玲奈に報告しときましょう。



「悠君、そっちはどう? 何とかなった?」

「いや、どうにもならん」



『今お父さん私の話を無視してお母さんとお話ししてたでしょ?! この浮気者! もう、お父さんはどこにも行かないよう私が管理するしかないのね』



「真悠のヤンデレが治らない」

「あ……」

 

 我が息子は、ヤンデレを育ててしまっていた。

 しかも、私の声がお母さんと認識されているらしい。

 所々で悠君に相談されていた。多分、その会話をゲーム機が認識していたのかもしれない。私の端末もそうだろう。


「あっ、監禁された」


 どうやら、私はハッピーエンドで、悠君はバットエンドに進んだらしい。


「どうするの? データ消す?」

「……しばらく続けるよ。まだ、やり直せるかもしれない」

『どうせゲームだからとか思ってるんでしょ? 絶対に消えないから 』

「突然プレイヤーに話しかけるのやめぇ」

『だって! 私だけ愛してもらいたいの!』

「そんなこと言われてもね」

『次元の壁くらい飛び越えてよ!』

「そんな無茶な」



 ……音声認識があるとここまで会話できるものなのね。



「1回消していい?」

『うるさい、馬鹿! でも、愛してる!』

「真悠、可愛い」

『えへへへへへへ、もうお父さんったら! お母さんの前で、だ い た ん!』

「真悠、ちょろいわよ」

『お母さんは黙ってて!!』


 恋愛ゲームも案外バカにできないわね。

 また、別の恋愛ゲームを悠君とやろうかしら。


 後日、玲奈に報告したら、最初の一言目に、



「まず、息子と隣同士に座って恋愛ゲームをしないで」



 と怒られた。



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