閑話 私の好きな彼は人気者
私は木村里奈。 至って普通の女の子だと思う。私には好きな人がいる。その人の名前は木下悠人君。
最初に見たのは入学式だった。
入場して着席した後にみんなの視線が先生側の座席に向けられていた。何かなと思って見てみると1人の男の子がいた。遠くて顔はよく見えなかったけど雰囲気でわかる。
私はそのまま目が離せずにいた。そして気がつけば入学式は終わっていて教室に移動する時間だった。
クラス表を見ても彼の名前は誰も知らなかった。ただ木下悠人という名前が1番男性につけそうな名前だったので期待して私は3組の教室に向かう。
そして教室に入ると、
あの時の男の子がいた。
私は嬉しさを抑えきれずに声に出してしまった。それを彼に見られてしまって、恥ずかしくなったけど。
私はすぐさま彼の座っている席まで近づいて挨拶した。すると彼は私の顔を見て返事をしてくれた。そして私は初めて彼の顔を見た。バランスの取れたカッコいい顔、ニキビ一つない健康な肌、身だしなみをきっちりしているイケメンだった。
その時私の心が彼に鷲掴みされた。そして彼に心を盗まれた。私は一目惚れしたのだ。でも彼は返事をしたらすぐに目線を本に向けてしまった。私はすかさず、
「あの、隣いい?え……あっ別に嫌ならいいんだけどぉ」
顔は赤いままだけど聞いてみないとわからない。お母さんが言うには男の人は女の人が近くにいること自体が嫌いと言っていた。だから断られるだろうと思っていた。
でも彼は、
「好きにしていい。別に嫌ではないから」
彼はそれを許してくれた。私はすぐにその席に座った。言質は取ったのだ問題はないはず。
「じゃあ失礼します」
「どうぞ」
「えっと、木村里奈です。……よろしくお願いします」
「木下悠人だ。よろしくぉ!」
……噛んだ。彼の顔を見るとプイッと背け顔を赤くしていたのでわざとではないだろう。私はそれを見て少し頰が緩んでしまった。
「ふふ、よろしくね」
私はこの出会いを大切にしようと誓った。
その後席替えがあったが運良く彼の隣の席となった。気がつけばいつも彼を見ている。
(まぁ、他の女の子も見ているんだけど)
そして彼を見ていて分かったことがある。
彼はすごく優しい。
常に素っ気ない態度をして冷たいように見えるが、実はそうじゃなく根はすごくいい人。多分他の女の子達も気づいている。そりゃあみんな彼のこと好きだしいつも見ているんだから気づくに決まっているんだけど。
彼は自己紹介では本を読んでいる時は話してこないでと言っていた。しかし、彼の自己紹介を知らない他クラスの女の子は普通に話していく。だが、彼はそれを怒らず本を閉じて会話を優先させるの。そして話している子の目を見て話を聞く。
でも男の人、それもイケメンの彼に見つめられながら話すことが出来る子なんていないためすぐに会話は途切れる。でも彼はそれに気を利かせて「無理はするな」と声をかけフォローする。それも何人にもしていたことは驚いた。多分もう50人は超えたね。
後彼は休み時間中図書室にいることが多い。彼の趣味は本を読むことだから当然だと思うけど。彼の借りた本を取り合うのは普段の日常風景になってた。
彼は常に端っこに座っている。彼が図書室の端っこに座って本を読んでいる姿はとても絵になる。窓から射し込む光が彼の魅力を引き立たせまるで天使が舞い降りたような姿に誰もが魅了された。でも私は彼と一緒にいるのが一番好きなのでいつも隣に座る。
彼はそれを拒まない。私は嫌われてない、信用されていると思えるからとても嬉しい。本を読む理由も彼と一緒に居たいから。
それに私が階段で落ちた時彼は自分の体を使って私を守ってくれた。本当は私が守らなきゃいけないのに。そして一緒に倒れている彼の胸を触っていた。いわゆるラッキースケベ。私はその時目の前が真っ白になった。
彼に嫌われる。ただそれだけを思って……。
でも彼は私を保健室まで運んでなおかつ事故だと言ってそれを許してくれた。やっぱり彼は優しい。
しかし残念なことに彼は彼女を募集していない。入学式後のHR終わりの質問した時に、
「今はいらない。そういうのって面倒だろ」
と言っていた。だから今告白するのは良くないと思う。でも他の女の子からラブレター貰ってた。
当然彼は断る。だけど彼はそれを手紙を書いて返事を返すのでそれ目当てでラブレターを書く子も多い。そのあまりの多さに彼は、
「多すぎる。そろそろ俺に飽きてくれないか」
とボソッと言い、私が、
「無理だよ。悠人君カッコいいもん」
「世辞はやめてくれ」
「ほんとだよ?」
「……そうか」
「うん!」
「お前も可愛いぞ」
「うぇ!?」
今はこんな会話だけで嬉しいけど、いつかは恋人として隣同士で一緒にいられたら嬉しいな。