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48 球技大会

 


 球技大会、それはバレーボールやドッチボールなど球技のみに絞られた学校行事。

 小中高どの年代の誰もが参加すると言ってもいい。


 そんな学校行事だが、当然俺は参加出来ない。


 理由は2つ。1つは俺が男だから。2つは俺がやらかしたから。


 小1の時、身体力テストの結果と俺が必死にお願いしたことにより、体育に混ざって参加して良いと先生から言われた。


 その時は俺は大層喜んだ。しかし、その参加して良いと言われた当日の体育。その日は確かドッチボールだった。




 普通にボールのキャッチミスによる突き指をした。




 うん、……まぁ、それ以降球技系統は禁止になるのは当たり前だよな。


 よって、俺は球技大会に参加出来ない。だが、みんなが楽しんでいる中1人教室で読書やただ指を咥えて観戦するのも嫌なので、




 審判をする事にした。




 どういう訳か? 身体動かしたかった。


 この学校の球技大会は1競技だけに絞られているから、審判をやっても俺のせいで何か問題が起きることは無い。だからこそ、審判をやろうと思ったのだ。


 今回の球技大会は、バスケ。


 前世では、中学の時にバスケ部だったのである程度ルールは知っている。だが、審判をやる以上うろ覚えではない。ちゃんと全て覚えてきた。


「悠人君、早速だけど審判お願い出来る?」

「分かりました。というか、いっそ全試合の審判させて下さい」

「うん、無理」


 やる気の満ちた返事をして、俺はバスケのコートに立った。


(……俺も混ざってバスケしたい)


「あっ、悠人君」


 すると、1人の知り合いの女の子が俺の元に来る。

 その子は嬉しそうに、


「見て見て、悠人君とお揃いの眼鏡」


 と話しかけて来る。

 とても似合っていたので普通に褒める。


「おお〜、良いじゃん。似合ってるよ」

「えへへ、ありがとう。悠人君も審判頑張ってね!」

「おう、そっちも試合頑張って」

「うん」


 因みに、今の俺はスポーツ用の眼鏡をかけている。しかし、これは俺のオーダーメイド。最近作って今日初めて持ってきてかけたもの。なので、彼女がそれを知り、かつ同じものをかけているのはどう考えてもおかしい。


(ふむ、……知らない間に知られている。いつも通りか)


 本当に日常茶飯事なので、あまり気にしない方がいい。



 〇〇〇〇


 実は球技大会、女子達はあまり乗り気では無かった。


 それもそのはず、良い所を見せようにも、経験者がモノをいうスポーツで未経験者が良い所を見せようにも不恰好な様子しか見せれない。

 そして、何より彼が参加出来ない。


 元々参加出来ないのは彼自身にも責任はある。だからといって全面的に彼が悪いとはいえない。


 1年当時、自分達と一緒に何かを出来る事に歓喜に満ちた。周りはキャッキャッウフフの状態。とても楽しい時間になる筈だった。


 しかし、彼は初球でキャッチミスの突き指。




 空気が180度変わってお通夜の空気である。




 だが、そんな空気よりも一瞬だけ彼の目からハイライトが消え真顔だったのが印象だったという。


 因みに、この時点で「木下悠人はヤンデレの素質あり」という判断が柳田から下された。しかし、それ以降彼がハイライトオフになる事は今の所なかったので消えつつある情報である。

 また、その一瞬の表情を瞬時に正面からブレずに撮った柳田が何よりも恐れられた。


 閑話休題


 というわけで、彼が審判をやりたいと言ったとしても、観戦から審判になるだけ。

 どちらにせよ見られるというのは変わらないので、今回の球技大会もやる気は出していない状態。


 やる気を出したとしても、スポーツの得意な一部の人間のみ。


 しかし、いざ試合が始まると、


「いいね、あれは確かにプッシングだった。いいよ悠人君、よく見てるね」

「悠人君のトラベリングでクルクル手を回した後の腕の動き好きなんだけど分かる?」

「あちゃ〜、悠人君の判定は厳しめだね。でも悠人君の性格を考えるに厳しいくらいが丁度いいかもね」


 審判をする彼を見て楽しむというものに。

 完全に楽しみ方を間違えている事に気付くものは少ない。


 試合をしている彼女達、特にボールを持っている子は、ただ観戦しているよりも彼に真剣に見つめられている為、いつも以上に緊張して全力を出せない。中には頰を赤く染め俯いてしまう。そして、俯いてしまっている子には、直ぐに審判である彼が「大丈夫か?」と声をかける。


 聞かれた本人は全然大丈夫ではないが。


 見られたいけど、見られたくない。

 試合中のボールを持っている子はいかに早くボールを手放すか。また、ボールを持っていない子はいかにしてボールを貰い彼の視線を自分に向けようとするか。

 そして、ずっとそれの繰り返しである。


 しかし、その元凶の木下悠人。


(すげぇ、……やっぱり混ぜてもらえないだろうか)


 彼女達の置かれている状況を察することよりも、早い試合運びを見て心を踊らせていた。そして、まだ混ぜてもらうことを諦めきれていない様子。



 数試合後、



「先生見ましたか! 今の試合の、えっと、そう、青チームの10番。3ポイントシュートを3連続で入れてますよ! いやぁ、見てて気持ちが良いですね! 」

「あの、悠人君」


 審判として試合を間近で見ていた彼は、いつにも増して興奮していた。その様子に、一緒に審判をしていた先生は少したじろぐ。


「でも、相手の赤チームの6番も凄かったです。背が高く、素早い動きでディフェンス。ドリブルしようにも直ぐにコースに入ってオフェンスチャージングを何度もさせていました!」

「悠人君!」


 このまま彼の熱い語りを聞いてはいたいと思う先生だが、その前に彼に言わなければならない事がある。そのため、少し声を大きくして彼の名前を呼ぶ。


 彼はいきなり大声で呼ばれたので驚き、直ぐに話す事をやめる。何か悪いことでもしたのだろうかと疑問に思うが、


「次、休憩ね」

「えっ、……はい」


 次の指示だった事に拍子抜けする。


 先生は思う。

 彼は先程からずっと審判をやっていた。いくら体力お化けの彼でも流石にずっと審判をやらせるのはいけない。季節は夏、少しの気の油断が命取りになるので、ここは自分が厳しく言って休ませよう。


「でも次決勝なんで……」

「ん、何か言ったかな? な?」

「いえ、何でもないです」


 先生の言葉に圧せられ、彼は何も言い返す事ができない。なので、近くの椅子に座って決勝を観戦する事に。


(もっと近くで見てぇな)


 と不満に思う彼であった。



 球技大会終了後、体育館で帰りのHRを行い解散となる。その後、生徒が自由に帰宅する中、彼はバスケットボールを持ちコートの上に立っていた。


「悠人君、お疲れ様!」


 自分を呼ぶ声に振り向く。そこには、里奈やマリア、明日香、柳田がいた。


「審判をなされている時からバスケをしたいと思ってらしたんですよね? 私達でよろしければ一緒にしませんか?」

「木下君、ずっとやりたくてうずうずしていたじゃない。やらない?」

「もう学校終わって自由時間だからしていいのよ。あっ、私は写真撮ってるから」


 彼はそれを聞いて納得して、バスケをすることにした。


「あっ、里奈ちゃん達だけずるい〜! 私も入る〜」

「私も〜!」

「今度は突き指しないようにね!」

「ちょっと縁起でもないこと言わないでよ!」


 そして、それを見た女の子達も続々とコートへと入る。5on5などのルールを完全無視して、ただ全員で楽しもうとする。

 彼のクラス全員、ざっと30人程でバスケ。


「じゃあジャンプボールからだな!」


 それでも彼は構うことなく、バスケをする。

 それは、先生に早く帰れと怒られるまで続いた。



 因みにバスケしている時に彼女達は、


(悠人君、ゴール下めっちゃ強いんだけど)


 彼の意外なプレイに地味に焦らされていた。





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