4 入学式
7年目の春の訪れ。それは小学校に入学するということだと思う。転生してついに待ちに待った入学式。
しかし学校に行くと言った時の真夏と優菜はやばかった。凄い剣幕で反対してきたんだからな。やはり自分の知らない所に息子預けるのだから反対はされるのは当然だと思うよ。何とか説得して、納得はいかないけど行かせてくれると約束してくれた。
そして約束通り学校に通うわけだ。
いい出会いがあると嬉しいんだけど。この世界の女性は肉食系すぎる。大和撫子みたいな草食系が存在しないんじゃないかと怪しいくらいに。
そして俺は思った、
いなければ作ればいい……と。
ふふ、とりあえずまず女の子達に男性(俺)を投入。男性に免疫がないのだから若い内に男性(俺)と関わることで免疫をつけてもらい、自然に話せる関係になるという訳だぁ!
上手くいくかね? いくだろ? 大丈夫、小学生だし、思春期入る前だから平気平気。
だから自然に話せる女性は1人2人くらいはいるはず……だよな?
そして入学式といえばスーツなんだが、スカートではなくズボンである。スカートでもいいらしいけど俺はズボン一択なんでね。
「悠君〜、行くわよ〜」
「あいよー」
「にーちゃ! 行こ!」
車で学校に向かう。普通に家から歩いて10分くらいなのだがそれでも心配だと車を出してくれたのだ。
(自転車買おう)
真夏にも仕事があるし、俺の為にあまり無理をさせてはいけないしな。
学校に着き車から降りる。すると、
ギョッ!?
とした眼差しで女達は俺を見る。
「嘘……男の子?」
「……可愛い」
「はぅぅ」
「どうしてこんなところに?」
「ショタ萌えー!!」
と聞こえてくる。まぁ小学生くらいの男の子を見るのは珍しいもんなのかね。いや……男を見ること自体が珍しいのか。
そして真夏はその視線を向けられていることに心配したのか、
「大丈夫? 帰る?」
と言ってくる。真夏には悪いがせっかく来たのだ、ここで帰るのは勿体無い。
「平気平気、大丈夫。写真撮ろう」
とりあえず写真を撮ろう。入学式の鉄板とも言えるな。看板の前に立って、誰にカメラで写真を撮ってもらおうか。
そして近くにいた女性に、
「写真撮ってもらっていいですか?」
とお願いする。
「うえぇ!? わっ……私がですかぁ!?」
「あ……嫌なら別の人に「やらせて下さい!!」じゃあお願いします」
その女性に俺の携帯、真夏のカメラを渡す。その後入学式の看板の前に3人で並び、それぞれ3枚ずつ撮ってもらった。それと他の女性達も自分の携帯を俺の方に向けてんだけどな。
「ありがとうございます」
とりあえず笑顔でお礼を言う。最低限のマナーだよな。
「いえ、こちらこそ」
嬉しそうなのはいいんだけど、
「羨ましい」
「何あの女調子に乗っちゃって」
「ギルティ!」
「私にも声かけてくれないかな…」
……何か嫉妬されることさせてごめんな。
でも用は済んだので、
「真夏、優菜、行こう」
当たり前だが入学式の会場は体育館。着くと学校の先生が案内してくれる。ここで真夏と優菜は保護者席に移動する。そして俺は椅子の場所まで案内してもらっている。その間にも先生は俺のことをチラチラと見る。
そして、
「え……ここなんですか?」
「はいそうですよ」
俺が案内されたのは明らかに生徒がハブられた感じというか先生側の位置にある。俺は問題児かなんかですかね。
でも女子に囲まれて座るよりマシだな。
「ありがとうございます」
先ほどと同じようにお礼を言う。
「いえ、仕事ですから」
と言い顔を赤らめさせたまま俺の2メートルくらい離れた場所の席に座る。
てかさっきから笑顔でお礼言ったら顔赤くするんだな。気をつけねば。とりあえずスマイル禁止だな。
『これから第34回浅野小学校の入学式を開式いたします』
始まった。まぁ適当になるわな。前世と変わらず校長先生の話は長げぇよ。てか最後俺について話したしな。男だから仕方ないね。それよりも俺の方を見続けている女子達が気になる。
その後も適当にやり過ごし、
『以上で浅野小学校の入学式を閉式いたします』
おっ、終わったな。後はうれしーたのしークラスへの移動なり。と言いたいところだが、周りがピリピリしている。なんだ?
まぁそれは放っておいて俺個人に配られたクラス表を見ると、
「俺は……3組か」
とりあえず小走りで俺は自分のクラスに向かう。
クラスに着くと誰もいなかった。席も決まっていなかったので左端っこの1番後ろの席に座る。俺ははじっこスキーなんでな。
その後すぐに女の子が1人入ってくる。そして俺を見ると、
「うっしゃ!!」
とガッツポーズ。
貴方は体育系ですか?
そして俺の所まで来て、
「1年間よろしくね!!」
と言ってくる。まぁ挨拶は返すのが常識なので返すが、
「ん、よろしく」
なるべく素っ気なく返す。変に誤解されても困るからな。優しくし過ぎて私の事好きかもと思われたら何かと面倒だ。
「えへへ、よろしく」
それでも顔赤くするって、ラノベで主人公に惚れたヒロインくらいだろ。もう開き直った方がいいのか?
そしてその子は体をもじもじさせながら、
「あの、隣いい? えっ……あっ、別に嫌ならいいんだけどぉ」
と聞いてくるので、
「好きにしていい。別に嫌ではないから」
と言った瞬間に、
「じゃあ失礼します」
おおう、遠慮しないのね。別にいいけど。
「どうぞ」
「えっと……木村里奈です。よろしくお願いします」
「木下悠人だ。よろしくぉっ!」
……噛んだ。普通に。わざとじゃない。
「ふふ、よろしくね」
あっ、なんか仲良く出来そう。
その後俺は家から持ってきた本を読む。その間にも、入って来た女子が最初の木村さんと同じような反応をする。そして挨拶してくる。とりあえず返事をする。
そして最後に先生が入って来て、
「皆さん入学おめでとうございます。これから1年間仲良くしていきましょう」
まぁ……そうなるな。とりあえず小学校の勉強はしなくても平気だからのんびりと生活しますか。
「私としては悠人君と仲良くなりたいけど」
そういうのは黙っておくべきだぜ先生。その後はテンプレの自己紹介。みんな最後に俺に一言言ってくる。
ああ、この時点で察した。小学1年でも肉食だということにな。目をギラギラさせてんだもん。みんな獲物を見つけた猛獣だ。
そして俺の番がきたので、
「木下悠人だ。趣味は読書。読んでる時はあまり話しかけてこないで欲しい」
これでいいだろう。冷たい人間を装い距離を取らせるのだ。最初の草食女子を作る計画?諦めたわそんなもん。その間に食われるのがおちだ。
自己紹介の終わった後は席替えだ。どうやら全員したかったらしいな。誰もが男の隣の席に座りたいのだろう。木村さんは青い顔してたけど。
くじで決めることになり、最初に俺が引く。そして場所は……木村さんがいた席だ。俺はその席に座り本を開く。だが前では、
「あぁぁぁぁ!!!」
「なんで逆側の端っこなの!」
「やったぁ!! 悠人君の前の席!!」
「おしい!!席1つ離れてる!!」
「私は右隣ですわ!」
と騒がしい。話しかけないでとは言ったけど騒がしくするのも勘弁して欲しい。しばらく様子見でもしてようかね。というかいつの間にか木村さんは最初俺が座っていた席に座っている。
「木村さんは俺の席当たったのか?」
「えへへ、当たっちゃって」
満面の笑みで席の番号を見せてくる。うはっ…いい笑顔。
木村さんとは何か縁がありそうだなと思っていると、
「少しよろしくて?」
声をかけられ、その方向へ顔を向けるとそこには金髪ドリルが……て失礼だな俺。カスタードコロネ……も失礼だな。ぐるぐる……もダメってどうでもいいな。如何にもお嬢様って感じのオーラを纏っている女の子がいた。
「先ほど自己紹介しましたが私は橘マリアと申します。以後お見知りおきを」
そして手を差し出してくるので、
「木下悠人だ。こちらこそ」
と握手する。初対面の相手に対して握手を拒むなんて非常識なこと出来ないしな。
「ええ!? ……よっ、よろしくお願いいたします!」
と俯いて顔を赤くする。
……自分から握手求めて返されるとは思っていなかったみたい。お嬢様っぽいから男と接する機会があると思ったけどそうでもないのか。
あれ? ちょっと待って俺握手しちゃったね。ということは、
「「「私とも握手してください!!」」」
……この後めちゃくちゃ握手した。質問もいっぱいされたしね。
そして帰りのHRが終わって帰宅だ。明日は...教科書の配布くらいか。とりあえず帰る準備をする。
「じゃあね!!」
「また明日」
ははっ! 多分これ毎日クラス全員にやるんだろうぜ。そう思うとなんか笑える。でも返事するだけだし問題ない。
女の子達は俺に挨拶をすると教室を出て行く。男性を求めているといってもやはり自分の生活もあるからそっちを優先するよな。塾やら稽古やらで大変だろう。俺ビバ暇人。
「私も稽古があるのでお先に失礼いたしますわ」
「頑張れよ」
「え?……あっ、ありがとうございます」
……前世の癖だ。こういう所も気をつけないといけないな。
「悠人君じゃあね」
「おう…また明日」
最後に木村さんが挨拶してくる。俺は手を振りながら……てまた癖が出ているではないか。
「うん!」
まぁ笑顔になってるし別にいいかもしれない。
初日だから結構心配だったけどあんまり問題は起きなかったな…。これからどうしようかね。
あっでも木村さんと橘さんは仲良く出来そうな感じはしたね。
てか俺……友達作れるのかしら。
「むーー!! 遅い!!」
出会い頭に優菜は怒っていた。どうやら校門前でずっと待っていたらしい。てか1時間以上も待つって。
「先帰ってもよかったんだぞ?」
「一緒に帰りたかったの!」
「ごめんな」
「ママも待ってたんだよ!」
「何処にいるんだ?」
「車」
そして優菜に案内され車の場所まで行くと、
「えへへ〜♪ やっぱり悠君のスーツ姿カッコいいよ〜!!」
俺の写真見ながら満面の笑みを浮かべていた。…褒められるのは嬉しいけどなんか複雑な感じがするな。
「あっ! おかえりー!」
「ただいま」
「じゃあ帰ろうね〜」
車が出発する。俺は優菜と一緒に後ろの席に座っているが、俺は車酔いなので窓際に座り窓を開けて外の空気を入れている。そうしていると、優菜が顔を近づけてスンスンと匂いを嗅いできた。そして、
「女の匂いがする!」
君は俺の妻か何かですか?
「にーちゃどーゆー事!!」
「握手とか話し合ったり…したからかな?」
「どっちの手で握手したの!?」
「……右だけど?」
と言うと優菜は右腕を掴んで腕を組んでくる。
「優菜……これは?」
「匂い消し」
「随分と原始的だな」
こうなると離れなさそうだな。可愛いからいいけどな。
「学校はどうだった?」
真夏に不意に聞かれる。
「普通だったよ」
「……そう」
「友達作れるといいんだけどな」
「にーちゃには無理!! 友達通り越して彼女作る!!」
おいおいなんてこと言うんだ。彼女だなんてまだ早いだろう。
「そんなことはな「確かにそうなっちゃうね〜」……え?」
「女の子は男を求めるのよ? 友達止まりなんてその子が可哀想よ」
……確かにそうかもしれないな。友達作りは諦めるしかないのか
「友達を作るのは……辞めとくよ」
「それが1番いいわ」
「でも仲良くなれそうな人は「その子誰?」
あの……最後まで喋らせて?
「木村さんと橘さんだな。隣の席だから話す機会が多いかも」
「ふ〜ん。関わり過ぎるとその子達いじめられちゃうから気をつけてね?」
「了解です」
「ふふ、悠君なら平気よ」
はぁ、この先の学校生活楽しくやっていけるのか?
そういや、
「自転車欲しいから買ってくれない?」
「自転車で学校行きたいんでしょ? 分かるわ」
「で……いいの?」
「いいよ。気をつけてね?」
「ありがとう」
「その代わり防犯腕輪持って行くのよ?」
「おけおけ」
「にーちゃ安心しろ! 優菜が守るから!」
「10年後に期待しているよ」
「むがぁ〜!!」
ポカポカ叩いてくる。すごく可愛い。
友達作らないとは言ったけど優菜みたいに話しやすい相手が出来るといいんだけどな…無理か。
やっぱり男は生きにくいな。