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39 取材が来たけど

 


「テレビの取材?」

「そうなのよ、悠人君。だから貴方には暫くはお休みして欲しいの」


 帰りのHRが終わり帰宅の準備を進めているところ、ミキTに職員室に呼ばれた。


「その様子だと、俺の事はバレてないんですね」

「うん、バレたらやばいじゃ済まされないからね。ただでさえ、来年ここに娘を入学させたいって言う人が多いんだから」

「本当にごめんなさい」

「まぁ平気よ。ファンクラブの入会規約が厳し過ぎるし、校門前の出入待ちはもちろんわざわざ引っ越してきて娘を入学させるのはタブーなのよ」

「はぁ、そうですか」


 そこまでしなきゃいけないって。まぁ、その話はいいか。


「どうして急に?」

「ここ数年でうちの学校の偏差値が結構上昇したのよ。だから、その秘訣とか聞きに来るんじゃないかしら?」


 はぁ〜、何だそんなことか。それに関しては俺は関係なさそうだな。


「いつまで休めばいいんですか?」

「1週間よ」


 結構長いな。





「というわけで、1週間学校を休むことになった」

「へぇ、じゃあ悠君ずっと家にいるの?」

「そだね」

「じゃあずっといてね」

「え?」

「最近不審者が出るらしいから、しばらくは宅配で食材買ってね」

「……そうなの? 分かった」


 俺、完全に専業主夫になる。


 家でずっとのんびりなんてしていられないから、掃除してるか。


「にーちゃずるい! 私も休みたい!」

「そうなこと言ったってしょうがないじゃないか。好きな料理作って待ってるから。早速明日は何が食いたい?」

「トムヤムクン!」


 あの、優菜。それ作ったことないんだけど。


「ダメ?」

「任せろ」


 ああ、やってやる。やってやるとも俺は優菜のにーちゃだ。トムヤムクンくらいレシピ通りに作ればいけるはずだ。


「悠君、材料はどうするの?」

「最近知ったけど男性用の宅配があるらしい。それで頼んだら、すぐに来るんだって」

「悠君、本当に料理するの好きなのね」

「……まぁね」


 別に料理するのが好きになっているというわけではない。偶にテレビで優菜や真夏が「これ美味しそう」って言ってるのを作ってるだけなのだが、別に言わなくてもいいか。


「真夏は何食いたい?」

「……海老チリかなぁ」

「おっけー」


 前に作ったことあるから大丈夫だろう。


 しかし、1週間。暇だな。





「というわけで1週間悠人君来ないからね〜」


 この先生の言葉は、全校生徒に対して死刑を告げたようなものだった。


 彼女達の中には、狼狽える者、涙を流す者、ショックで気絶する者、テレビ会社へ怒りを抱く者、様々な反応を見せた。


 数人を除いて。


 言わずもがな彼女達である。


 木村里奈、橘マリア、鮫島明日香、木下優菜、高橋早苗、柳田の6名。

 彼女達は元々木下悠人からL○NEによって伝えられた為、ショックを受けてなかった。


 柳田は新聞が書けないため、1週間の空白の原因を作ったそのテレビ会社が潰れないか心配になっていた。

 それに常に彼の背中を追っかけていたため、その前までどう過ごしていたのか忘れてしまっているので悩んでいる。


 結局、妹を除いた全員は「おーい悠人君〜、ゲームしようよ〜」の勢いで彼の家に遊びに行っても、家に上がれるので、会いに行けばいいじゃんと気楽に考えていた。

 鮫島明日香に至っては、家が隣である為、ほぼ毎日晩御飯を一緒に食べている。


 彼が自分達は他の子よりも大事にしてくれているのは火を見るより明らか。


 彼がみな平等と言って学校では自分から話しかけないようにし、常に話しかけてくる女の子に対応している。そして文通。

 彼の優しさと共に自分達を少しでも他の子達の嫉妬から避けさせる為でもあるのではないかと推察する。


 用事がある時は必ずL○NEで。ツイッターも自分達をフォロー後は、他の子達もフォローしていた。


 それでも他の事で嫉妬される事はあるが、可能な限りそれを防ぐように動いている。


 なので彼女達(妹除いて)は、


「あばばばばっ!」


 演じる。


「そ、そんな……」


 演じる。


「どっ、どうしましょう!?」


 演じる。


 自分を他と同じと思われるために。

 彼の行動を無駄にしないために。


「でも私は家に帰ってあまえちゃうもん!」


 しかし、妹は地雷を踏む。

 何故なら身内だから。



 ちなみに、偏差値の上昇の理由はやはり木下悠人である。



 授業で教科書というものは必ず読むもの。しかし、その間に退屈で寝てしまう生徒が複数人出てしまうものである。

 なので、当時1年の担任は考えた。



 悠人君に読ませてみたらいいのでは?



 そうして木下悠人に相談したところ、そういう事ならと協力を得ることが出来た。


 結果は大成功。寝るどころか、目をギラギラさせる程である。特に国語の教科書、恋愛モノの音読は人気を博した。


 先生はそれだけに留まらず、それを録音した。もちろん木下悠人からの許可を得ている。


 木下悠人はそれを忘れているが。


 そして、そのボイスレコーダーを他クラスの先生に渡し使わせることによって学年全体の授業の関心、意欲、態度を良くさせた。

 しかも、ファンクラブにアップされた事により、家で聞くことも可能となった。つまり家庭での勉強にも使用出来るようなったのだ。



 悠人式スピードラーニングが完成した。



 ここまで聞くと分かるだろう。

 浅野小学校全体だけでなく、彼のファンの同級生、後輩の成績も上げる事となったのだ。


 関係ないどころか実行犯であった。





「みんな抜け殻みたいに元気が無い?」

「そうなの。みんなテンションが低くてテレビ映りも最悪。結局取材の話が無かったことにされたらしいの」

「何それ笑えないんだけど」


 今の明日香の聞いて分かる通り早速休み1日目にして、取材が取り消しになるという結果が。


「逆に生徒に無理させてる学校と思われたんじゃ?」

「それは平気。先生も元気無かったから」


 おいおい、ブラックと思われたんじゃないか?


「……ちなみに」

「ちなみに?」

「そのテレビのリポーターさん。木下君のこと知ってたわ」

「マジかよ」


 各地に散らばってんの? 俺のファンって。


 その後学校から連絡があり、先生から明日から学校に来ていいと言われた。





 その次の日、


「悠人君! 待ってたよ!」


 教室で待ちに待っていた知り合いの子達に囲まれて胴上げされた。


 感想を言うと、天井にぶつかりそうですごく怖かった。


 まぁ、案の定全員ミキTに怒られてたけど。



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