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38 4年生、眼鏡作る

 


 俺も小学4年生となり、2度目の高学年になった。クラスも相変わらず里奈、マリア、明日香、柳田の4人と同じになったわけだが、絶対マリアが何かしてると思う。多分マリアが何か根回ししてると思うんだよ。


 でも、みんなと同じクラスなのは嬉しいので深く考えませんがね。


 まぁ、それはさておき、最近俺に起こった出来事を話そうと思うんだよ。



 実は最近、



「……ゆ、悠人君? せっ、先生何かしちゃったかなぁ? あっ、もしかして字汚かったかなぁ?」



「あっ、すみません。黒板の字が全然見えなくて、半眼になってただけです。全く、全然、これっぽっちも、先生の字が汚いというわけではありません。逆に達筆で読みやすく、とても綺麗です」



「そう? ありがとう!」



 目が悪くなった。


 ふむ、夜中に手紙の返事を書いていたのがダメだったか。


 一応言っておくが、ちゃんと説明しないと先生が早とちりでネガティブな状態になって授業にならなくなるからであって他意はない。





「木下君、そんなに目が悪いの? 席1番前よ?」


「うん、字どころか先生の顔もモザイクだな」


「えっ、じゃあ私の顔も?」


「絶賛モザイク修正中だな、これじゃ遠くから誰が来ても分からん」


 顔を判別出来ないだけじゃなく、何をするにも支障をくらう。特に自転車は障害物や人がとにかく危ない。早急に眼鏡を購入するしかない。


「眼鏡、買ってくる」


「コンタクトレンズは?」


「怖くて無理だ」


 女装時のカラーコンタクトは坂田さんに入れてもらったけどな。


 コンタクトレンズは、管理が面倒でいちいち買わないといけない。

 眼鏡はかけて、レンズ拭いてで終わり。ぶっ壊さなきゃだけど。


「それは困るわね」


「そうなのか? てか、いつから聞いてた?」


 いつものように、急に話に入ってくる柳田。彼女が突然入ってくるということは、何かまずい事になるかもしれない。


 実際何度かまずい事があったらしいが、詳しくは知らない。


「悠人君の私物化により、眼鏡専門店が多数潰れる」


「あれか、有名人が使ってたから使う的なやつ?」


「そう、だから悠人君が眼鏡一つ買って毎日かけているなら……眼鏡系女子はその眼鏡を次の日買いに行くわね」


 何それ怖い。


「えぇ……じゃあオーダーメイド?」


「それもアウトね。私の新聞は真実しか書かないし、口コミでどうせ広がる。その眼鏡がオーダーメイドなら、写真を載せた瞬間、材質、色、形状その他諸々全て調べ尽くされるから無駄ね」


「ちょっと待って、その話からすると俺のいつも来てる服とかも」


「悠人君マニアならそれぞれ一着は確実に手に入れてる。ましてや、悠人君スボン派だから上下揃えられるだけじゃなく着られるもの。因みに私は今履いてるズボン持ってる」


「まじでか」


「私も木下君の付けているその腕時計気に入ったから買ったわ」


 もちろん、色も同じ銀色なのは俺が知る由もないが。


「あっ、やっぱり良いよねこれ。誕生日に貰ったんだよ〜」


「ヘぇ〜、いつも付けてるけどいつ買って貰ったのかしら?」


「そうだな、5歳だから6年前か?」


「長持ち以前に、学校通う前から付けてるってどういう事?」


 知らんな。


 というか、俺の価値観が随分と歪んでいる気がする。





「眼鏡、ですか?」


「うん、今はもう顔と字が碌に見えてないしな」


「ふむふむ、そうですか。でしたら、私が協力致します」


「協力?」


「はい、眼鏡はフレームやレンズで顔の印象を大きく変えます。なので、悠人様に似合わない眼鏡も一緒に作りましょう」


「ほぉ〜、え? 似合わない方も作るの?」


「そうです! 悠人様はとても顔が整っています。第一印象では間違いなく初対面の女性にも好印象です。なので、それを消し去りましょう」


「消し去ってどうすんだ?」


「これ以上、悠人様に惹かれてしまう女性を増やさないようにするのです」


「それは名案。では早速お願いしたい」


 なるほど、人は7割以上顔で印象を決めるからな。


 これから先の中学、高校も顔を地味にブサイクにしておけば、新しく出会う子達が俺に振り向くなんてないだろう。同級生のイケメン君達に全員掻っ攫って貰うというのは良い案だ。


「では早速、作ります。それと同様に似合う眼鏡を作ります。なので、視力やデザインのために私の家に来てください」


「おう、何から何までありがとう」


「いえ、お気になさらないで下さい」


「お礼は何をすればいい」


「手作りのケーキを」


「承知」





 ーー数日後の橘家にてーー



「それではこれをどうぞ」


「おお〜、これがか」


 俺の手に渡されたのは、俺の顔に合わせて作られた、俺が完全にブサイクメガネ野郎になる眼鏡、通称ブサメガネ。


「悠人君、早速付けてみて!」


「楽しみね」


「さぁ、写真を撮りますか」


「にーちゃ、早く早く!」


「お兄さんが一体どんな感じになりますかね?」


 初めてお披露目というわけで、みんな揃っていらっしゃる。そして、みんな楽しみで仕方ないようだ。


 俺も面白そうな感じになりそうで気分を高め、早速その眼鏡をかける。


「どうだ?」


 そして、




「すっっごい不細工だね!!」




 里奈が、




「凄い醜いわ」




 明日香が、




「とてもファニーでアグリーです」




 マリアが、




「ぷっ……あははは!! これは酷いぃぃ!!」




 柳田が、

 



「あのお兄さんが、こんなにも変になるなんて! 凄いです!」




 早苗ちゃんが、




「あのカッコいいにーちゃが凄い陰キャな不細工になった!」




 最後に我が愛しき妹優菜が、みんなが俺を罵る。





 ………俺は窓を開けて飛び出そうとする。


「悠人様! ここは3階です!!危ないですよ!?」


「止めるなマリア! 俺は、俺は、……もうダメだ! そうですよ、どうせ俺は顔だけの男ですよ。顔だけ取り柄の男なんですよ。醜くなったら捨てられるその程度の男なんですよ。どうせ、みんな裏ではちやほやされて調子に乗ってる、あまえ上手で、穀潰しで、無能で低脳、何も出来ないと思って罵ってるに違いない。そうです!私がゴミ屑穀潰し男性木下悠人です! 」


「何を口走ってるか分からないけど、悠人君がそんな人な訳ないよ!だから落ち着いて!」


「木下君、これは醜くする為に作ったんだからその効力は仕方ないじゃない!」


「にーちゃ、早まっちゃダメ!! 逝くなら私も逝く!」


「優菜ちゃんもお兄さんを止めて!」


「悠人様、こんな所で死なれても困ります! 悠人様にはもっと私と一緒にいて貰いたいんです!」


「そこは大丈夫だ。マリアはとても素晴らしく、愛嬌のある女性だ。他に素晴らしい殿方はいずれ見つかる」


「そこで真顔になって返さないで!」


「悠人君は本当に面白いわ。やっぱり来て良かった」


 ほぼ全員が俺を取り押さえて床に押さえつけられる。


「みんな悠人君が落ち着くまで、上に乗って!」


 体重の軽い優菜と早苗ちゃんが率先して俺の上に乗る。そして、里奈、マリア、明日香が俺の腕と足を抑える。


「ぐおぉぉ〜! やめろ、俺は男だ。優しくしろ!! そして死なせろ」


「悠人君、貴方は力強すぎるのよ。だからこれくらいしないと。というか、死ぬと聞いて離すわけないでしょ」


 柳田がそう言っているが、とりあえず今は早く死にたい。


「悠人、一緒にお茶を飲みま……一体どういう状況かしら?」


 エリナが部屋のドアを開けて、入り口で立ち尽くしたまま、呆れた顔で押さえつけられた俺と押さえつけているみんなを見ている。


「悠人様が死にたがってます」


「悠人、とりあえず貴方を気絶させましょう。その後、ベットに鎖で繋いでおきましょう」


 真面目な顔して何言ってんだ!


「へへ、エリナ。俺は醜く、汚い男なんだよ。腐腐腐……」


「何を言っていますか、悠人はとても良く出来た人格者ではありませんか。顔が眼鏡で悪く見えようが、悠人に変わりはありません。私が顔だけで悠人を見定めたと思いますか? 長い付き合いのある私の言葉が信じられませんか?」


 エリナぁ。そんな事言われたら、信じないわけにはいかないじゃないか。


「……エリナ。俺、頑張るよ。エリナが、みんなが誇れる人間になるよ」


「悠人は悠人のままでいいのです。焦る必要はありません」


 そうかぁ、俺はいつも急ぎ過ぎなんだな。ゆっくりと、ゆっくりとみんなが誇れる人間になるよ。


「ありがとう、とても嬉しい。でも……さりげなく俺の上に乗らないデェ!」


「これは戒めです。少しは反省して下さい」


 凄い飴と鞭! でも自業自得なのは否定出来ない!


「俺が悪かった、だからみんな降りてぇ!」



 ‘’ダメ(です)’’



 そして、それは10分は続いた。


 俺に心を許してくれるのは嬉しいけど、もう少し扱いをよくして欲しいと思った。



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