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30 運動会 後

 

 お昼ご飯を食べ終わり午後の部が始まる。そして現在は、



「これから〜!! 赤組の勝利を願って〜〜!! 応援を始める〜〜!! 用意はいいか〜〜!!」



 ‘’おお〜!!’’



 各色組の応援です。


 ああ〜、懐かしいな〜。俺も前世でやってたな。「燦々と輝く太陽の色は〜赤!!」とか、「 みんな大好きリンゴの色は〜赤!!」とか、「お前らの血の色は〜赤!!」とか言って全員の士気を高めてたんだよな。



「私たちの大好きな悠人君の好きな色は〜」



 ‘’赤〜!!’’



 すまない、俺は青が好きなんだが。



 応援は赤、黄、青、緑の順で行われる。


 ちなみに現在俺は先生側の席の裏側で待機している。


 何故かって? 「応援して欲しい」って先生に頼まれたから。俺としても何かしたかったし、ちょうど良かったからOKした。



 青春、超大事。



 更に先生と俺からのサプライズのため、生徒には秘密、もちろんのこと真夏や優菜にも言ってない。


 真夏達には「トイレ行ってくる」と言って席を外した。多分もう少ししたら探しにくるかもしれない。


「悠人君、もう少しで出番だから」


 と俺のクラスの担任のミキ先生、通称ミキTが話しかけてくる。


「分かりました、ミキT」


「ふぇへへ〜、いや〜先生の中では1番好感度が高いから嬉しいなぁ〜」


 ミキTは体をクネクネさせて喜んでいる。3年間お世話になってるとあだ名も普通に言う。


  「さて喜びは後、悠人君行ってらっしゃい!」


 こういう大事な時にはすぐ元に戻ってくれるから俺としても他の先生よりは信用がおける先生なのだ。


「おう!」


 俺はミキTからマイクを受け取り大きく息を吸う。



「声が足りん!! もっと声をはれぃ!!」














『声が足りん!! もっと声をはれぃ!!』


 とマイクからの大声が校庭を響き渡る。


「一体誰の声だっただろうか?」などと言う者は誰もいない。この場にはその声の主が誰か声を聞いた瞬間に分かっているからだ。


 だが、いつも温厚な彼が大声を発することは彼の母親、妹、そしてよく知る友人でさえも驚きを隠せなかった。


 何処から来るのかと全校生徒、保護者が彼の姿を視線で探し始める。


 実際に応援して欲しいと彼に頼んだ先生達は応援の仕方や振りも教えた。しかし、この男気溢れる声に心が震えた。


 しかし、そんなことを御構い無しに彼はマイクをミキTに渡し(なんかうっとりしていたので投げ渡しではなく手渡し)、裏側から走る。


 全速力でグラウンドを走り朝礼台の上に立つ。


 彼女達は更に彼の姿に驚愕する。


 彼の服装は黒い学ラン。そしてつばの付いている帽子。昔のヤンキーを感じさせるその姿、そしてそれが木下悠人と相まって女性達の興奮が止まらない。


 保護者側ではそれを抑え込み無言でビデオカメラを彼に向け続けている。自分の声のせいで彼の声が聞こえなければ周りにも迷惑がかかるからだ。自分だけではない、この瞬間を撮ろうとする者は私だけではないと。興奮するのは自宅で帰ってからだと。



「これからテメェらのさらなる士気向上を願い応援を開始する。用意はいいか〜!」



 ‘’ぉぉ〜’’



「声が足りんぞぉ!! 用意はいいか〜!!」



 ‘’おお〜!!’’



「よぉ〜し! テメェらのやる気は分かった〜!! 始めんぞぉ!!」



 のちにこれをどういう気持ちでやっていたのかと聞くと木下悠人はこう言うだろう。


「俺にこうしろってゴーストが囁いてきたんだ」







 応援はとても上手くいきました。現在の種目は騎馬戦。




 ‘’おおおおぉぉ〜〜〜!!!!!’’




 目の前で死闘が繰り広げられています。


 普通騎馬戦って体当たりするっけ? 騎馬でサイドステップ可能だっけ? しかも少し遠い場所で見ているせいなのかか女の子達の取っ組み合いが百裂拳を打ち合っているように見える。


「獲ったどー!!」


 騎馬に乗っている女の子が帽子を高々と上げ俺を見る。


 凄いかっこいいです。


 しかし、それを他所に現在俺は、



「どうしてこんな事したの?」



 真夏に説教されています。現在俺は学ランのまま正座させられています。


「黙っていたのは悪かった。先生に頼まれたんだ」


「でも、ここまでする?」


「調子乗りました」


「目立ちたくなかったんじゃ?」


「今思うと男だから目立つの仕方ないから、静かに過ごすのは中学生からでいいかなと……吹っ切れました!!」


「悠君!」


「ごめんなさい」


 真夏の説教は毎回100%俺が悪いので反論出来ない。


「まぁまぁ、真夏。悠人も反省はしていませんが、良いものが見れたじゃないですか」


「そうよ〜、カッコよかったじゃない〜」


「いける! いけるわ!! 悠人君、今すぐに事務所行きましょう!!」


 よし、全員真夏を宥める気がないのは分かった。美雨さんに至っては興奮しすぎて俺を事務所に連れてこうとするし。


「奥様、後でBlu-ray に焼いておきますね!」


「グッジョブです、リボン」


「あっ、それ私にも〜」


「私も欲しい!!」


「あんた達は黙ってて!!」


 なるほど、この5人の会話では真夏がツッコミ役か。


「あの真夏。いつまで正座してればいいんだ?」


「あっ、もういいよ。痛かったよね大丈夫?」


「大丈夫、足が痺れただけだ」


「そう、じゃあ背中に寄っ掛かりなさい!」


 そう言って俺に背を向ける真夏。


 じゃあって何さ。しかし、せっかくだからまた寄っ掛からせてもらおう。




 真夏の背中に寄っ掛かってしばらく経つと、


『次の種目は借りもの競争です!』


 俺は無言で真夏の背中から離れ、カメラの調整を行う。


 借りもの競争。まずスタート地点から約30m先にある机に向かう。その机の上には借りてくるお題を書いた紙がいくつかある。その中から1枚を取り、そのお題を借りてくる。そんな単純な競技。


「さっきまでゆったりしてたのにいきなり真面目顔になる悠人様マジ尊い」


「リボンさん、少し撮らせて下さい」


「はい、もちろん! イェーイ!」


 ウインクをしながらピース。


 うむ、素晴らしい。やはりスーツ姿の女性は絵になるな。


「リボン、減給」


 エリナ、えげつねぇ。


 しかし、それはおいとかないと。今回は一番最初に優菜が出るのだ。リボンさんに悪いがここはカメラに集中。


「にーちゃー!!」


 毎回カメラ目線でいい顔を見せてくれるとは優菜は本当にいい子だよ。優菜、たとえビリッケツでも俺の中では1番だ。


 そう思っていると、スターターピストルの音が聞こえる。ついに始まった優菜の最後の種目。もちろん優菜は1番で机に到着、そして1番手元に近い紙を取る。それを見た瞬間、俺に向かって走ってくる。


「にー「真夏、行ってくる!」


 すぐさま優菜と合流。どうやらお題は俺らしいな。


 そしてゴール。1位である。


「優菜、お題は何だった?」


 こう【大切な人】とかだったら嬉しい。と思いながら少しワクワクしながら優菜に聞いてみると、


「穏やかな人!」


 さっきまで穏やかではなかったんですが?


「あの、お兄さん! 帽子貸してください!」


 そう話しかけてきたのは優菜と同じ走者の子。お題は帽子か。まぁ俺のじゃないし別に問題はない。帽子を渡す。


「ありがとうございます!」


 手に持って行くかと思いきや帽子を被ってから走り去って行く女の子。




「お兄さん! 黒いハチマキ貸して下さい」


 ハチマキを渡すと、渡したハチマキを頭に巻いて走りだす女の子。




「お兄さん! 学ラン貸して下さい!」


 学ランを脱いで渡すと、学ランを着て走りだす女の子。




「お兄さん! 来てください!」


 なるほど、男か。


 その女の子ついて行く。恋人繋ぎなのは黙っておこう。




「お兄さん! 来てください!」


 えっ? もう一回? 同じお題は無いと思うんだけど? というか全員俺の元に来るっておかしくないか? 俺から借りて来る競争になってんぞ。


「お題見して?」


 流石にお題が男が何度も出てくるのはおかしい。


【玉がついてるもの】


 目玉か。なるほど、頭のいい子だな。


 そしてお題を確認した先生が赤い顔をしていたのは黙っておこう。



 そんなこんなで午後の部が進み、


『これより浅野小学校運動会を閉幕致します!』


 運動会が終わった。


 どの色組が1位かはどうでもいい。優菜が笑顔のまま運動会を終えれたのだ。それ以上の喜びはないだろう。


 レジャーシートやカメラを片付け帰宅の準備をする。


「じゃあ悠人君、みんな、またね〜」


「では皆様、また今度!」


「今度は誰かの家で集まりましょうね」


「今度ゲーム送るからね〜、ばい〜!」


 と美雨さん、リボンさん、エリナ、玲奈さんは去って行く。


「じゃあ悠君、私達も帰りましょう」


「おう」


 優菜達は運動会の片付けをしているため、一緒には帰れない。


 真夏と家に帰宅。


 さて今日は頑張った優菜のためにステーキでも焼くか。


「だがその前に……」


 リビングで今日撮った優菜の写真の厳選しますか。


「さて、今日の悠君の写真を厳選しよっと。ああ〜今日の悠君もカッコいいなぁ〜♪」


 そして、真夏も真夏で自室で同じようなことをしていた。




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