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23 触れ合い会 前

 


 携帯のアラームで目が醒める。


「ああ〜」


 怠い気持ちを抑え込み布団から出る。


 今日は聖アテネ女学園の触れ合い会。参加すると言った手前やっぱりやめたというわけにはいかないが、


「でもこのスケジュール表を見るとどうしようもないんですけど……」




 06:00 会場集合並びにドレスの準備


 07:00 女生徒との触れ合い


 10:30 幼稚園児並び保育園児の読書会


 12:00 昼食


 13:00 女生徒との触れ合い


 20:00 終了




 ……移動時間含めて考えると4時起きしないといけないって絶対夏コミ始発で行く人だよこれ。


 しかも、


「悠人様はサインを書かれないんですか?」


 って言うから絶対サイン会みたいなことやるんだろうなと思ってデザイン考えた。


「真夏、優菜起きろ」


 一応木下家全員で参加することになった。あの話し合いの後で優菜を仲間外れにするのはどうかと思い誘ったのだ。まぁ返事は「行く!」と元気よく言ってくれた。


「んぁ? あぁ、後5分」


「ん、おはよ悠君」


 真夏は起きたが、優菜は絶対に二度寝するやつだな。


 とりあえず優菜は真夏に任せて、飯作るか。


 そして触れ合い会の支度をして、会場となる場所へと真夏の車で向かった。




 ーー会場ーー


「「「うっ……わ」」」


 俺含めみんな引いてます。


 入った途端に50mはあろうレッドカーペット敷かれ、オーケストラの演奏。そして大きな看板で、


【木下悠人様に最高の御感謝を】


 とあるのだ。


 そして今日参加するお嬢様方がそのレッドカーペットの横で綺麗な列になって並び、



 ‘’本日我が聖アテネ女学園の触れ合い会に参加していただき誠に感謝いたします!!’’



 と深々と頭を下げて俺を迎えている。


 一般人からしたら対応の仕方のスケールが違うし大き過ぎる。まぁ貴族と一般人の価値観が元々違うのだから仕方のない事かもしれない。


 しかし思う。


(貴族ってマジパネェっ)

 

 俺、真夏、優菜はレッドカーペットの上を歩く。そしてしばらく歩くと、


「木下悠人様、木下真夏様、木下優菜様、本日は参加して頂きありがとうございます」


 林さんが挨拶しに来た。


「いえいえ、約束ですから」


 と俺は返答。その後軽く会話をし、いよいよドレスの準備。俺と真夏、優菜は分かれて、それぞれ更衣室へ。


「悠人君久しぶり〜♡ 元気してた〜?」


 更衣室に入ると、坂田ルナさんが俺を待っていた。


 坂田さんは俺が初めてパーティに参加した時にドレスを見繕ってくれてた人。まぁ結局この人が仕立てたウェディングドレスを着てパーティに参加したけど。


 あれ以降ウェディングドレスの発注が何度かあったと坂田さんから聞いた。あくまでそれは結婚用ではなく着るだけらしいが。


 そしてマリアとパーティに参加する時にはいつも坂田さんが見繕ってくれる。まぁ殆どは女装するので「良いドレスを着せたいわ〜」と文句を言われてるけど。


「今回はドレスなのよね?」


「はい、お願いします」


「うふふふふ♪ ずっと楽しみで仕方なかったわよ!」


 坂田さんはドレスを何着か持ちジリジリと近づいてくる。


(これまた着せ替え人形になるやつだ)


 と思いながら、


「早めにお願いしますね?」


 と言う事しか俺には出来ないだろう。


「ふっふっふっ……遅くなりそうよ」


 なんでやねん。




 ーー真夏サイドーー


「こちらになります」


 案内人に更衣室まで案内される。


「ありがとうございます」


「ママ早く着替えてにーちゃと会お!」


「そうだね、早く悠君のドレス姿を見たいね」


 優菜は悠君のドレス姿を見たくてうずうずしている。それは私も同じ。


 当たり前のようだが悠君はカッコいい。女装をせず道を歩けば誰もが目を奪われ振り向くだろう。


 そして優しい。初対面の人間にも礼儀正しく、女性の接し方がわかっている。接し方が分かっていても相手に惚れられるのは仕方ないことだと思うけど。


 告白は断っていたけどいっぱいラブレターを貰っていた。付き合えないけど文通はしてあげていた。優奈を寝かしつけた後1人リビングで返事を書いているのをほぼ毎日見ている。


 ファンクラブも出来た。悠君の新聞も作られた。それを知った悠君は当初動揺はしていたがその存在を認めたらしい。


 私の息子の優しさは何処までいくのか。


 まぁ、ちゃっかり新聞を毎週貰っているのは秘密だけど。


 今回は何処ぞのお嬢様達。仕事以外じゃお目にかけるだけでも珍しいというのに。それが今は右も左も何処を見ても貴族だらけ。


 それがみんな悠君のファンと言っているが、本心は婚約を結びたいと思っているはず。


 何も起きなければいいが……。


「ママ! 早く行こ!」


 優菜は私のスーツの裾を引っ張り急かすようにしている。


「全くせっかちなんだから」


「にーちゃのドレスを見たいからね!」


 そして私と優菜は会場へと向かうが、会場に着いても悠君の姿が見えなかった。


「悠君は何処ですか?」


 と近くの使用人の方に聞くと、


「まだお着替え中です。はやくでてこないですかね?」


 ふーん、まだ時間はあるしいいと思うんだけどね。一応更衣室にいるか確認していこう。


「悠君いる〜?」


 更衣室の前で数回ノックし確認、


「いる〜」


 と悠君の声が聞こえる。少し安心。


「さぁさぁ、悠人君今度はこれを着てちょうだい!!」


「ええ、これ露出多くないですか? 」


「大丈夫よ!! 私のコレクション用だし」


「コレクションかい!」


 えっ、何それ見たい。と思っているうちに、


「にーちゃ、入るぞぉ〜!!」


 問答無用で入り込む優菜。私が止めても時すでに遅し、優菜はデザイナーの隣に行っている。


 そしてしばらく悠君のドレスを見た後、


「……露出高いのもいいけど、にーちゃはもっと華やかにしたほうがいい。ピンクとか」


「あら分かってるじゃない。貴方名前は?」


「にーちゃの妹の優菜です!」


「へぇ……妹、ならこの更衣室に入っても問題なさそうね」


 いや問題あるでしょ!


「そちらの女性は悠人君のお母さんかしら?」


「えっ? ああ、悠君の母の真夏です」


「坂田ルナよ。よろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


「おっ真夏。どうだ? たまには露出度高いの着るのもいいかもな」


 と悠君が見せてきたのは赤いチャイナドレス。


 ……凄く色っぽいです。


「似合ってるよ」


「ありがとう、まぁこれは会場では着ないけどな」


「当たり前よ悠人君。流石にお嬢様方に食べられてもおかしくないわ」


「おっとそれは勘弁」


「さて着せ替えはこれまでにしてこっちよ」


 と出したのは薄ピンクのウェディングドレス。


「貴方はこれ以外ありえないわ」


「俺、婚約者いないんですけど?」


「安心しろにーちゃ! 私が妻だ!」


 グーサインを出して力強く言う優菜。


「何とっ!?」


 そして驚いたように言う悠君。度々見かけるこの会話はとても微笑ましい。


「はいはい、着替えちゃうわよ〜」


 そしてウェディングドレスに着替え始める。


 ウェディングドレスを身にまとう悠君は2年前のあの時よりも綺麗でカッコいい。


「真夏、優菜写真撮ろう」


 もちろん断る理由はない。それは優奈も同じ。


 写真を撮る。優奈も私も悠君の腕を組んでいる。それを拒まず笑顔でいる悠君。


 唯幸せな時間がそこにはあった。


「さぁ、触れ合い会よ。大変だと思うけど頑張ってね?」


「はい」


「またね♪」


 投げキッスをする坂田さん。そして返しに投げキッスを返す悠君。悠君が言うにはこれが挨拶のようなものらしい。


 ……ちょっと羨ましい。


 そして更衣室を後にした。



 少し時間が経ち、


【ではこれより触れ合い会を始めます】


 アナウンスが会場に響き渡る。すると次の瞬間、



 ドタドダっ!!



 お嬢様方が地震が起きそうな勢いで悠君の前まで来たかと思えば、



 ヒョイと悠君を持ち上げ連れ去っていった。



 連れ去っていった……。



 連れ去っていった……?



 連れ去っていった!?



「悠君!!」「にーちゃ!?」



「あ、見つけましたよ。真夏、優菜ちゃん」


「本当です。あれ、悠人様は?」


 マリアちゃんとエリナが今合流したが。


 しかしそれよりも、


「連れ去られちゃった」


「「えっ!?」」



 触れ合い会は始まったばかり。




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