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22 お嬢様学校からの誘い

 


 平日の朝


 家の外のポストを開けて見ると、綺麗な手紙が入れてあった。


 明らかに存在感がありすぎる。絶対見て欲しいと思って送ったのが分かる。


 真夏宛かな? 宛先を確認すると、


【木下悠人様へ】


 真夏ではなく俺宛だった。


 ん〜マリアかエリナさんが何かの招待状を送ってくれたのか? それならL○NEで連絡が来るはずなんだよな。


 とりあえず中身を見てみようか。


【木下悠人様。この度、我が聖アテネ女学園との生徒との触れ合い会にご招待したくこの手紙をお送り致しました。今回の触れ合いで箱入りであるお嬢様方に殿方との免疫をつけさせる為に、是非とも木下悠人様のお力をお借りしたいと思っております。


 どうかご検討をお願い致します】



 ……簡単に言えば男性サンプルか。まぁ度々マリア、エリナさんにパーティに誘われて他の人にバレないよう女装して参加しているけども。


 あのウエディングドレスを着た俺の噂は貴族の間で広まったらしいし。


 俺がマリアとパーティに参加するたびに「あの殿方はいないのですか?」と毎回聞かれているのを見ている。


 その度に俺は内心ヒヤヒヤしているが...。


 しかし、お嬢様学校…か。堅苦しいのは嫌だしここは断ろ……う?


 不意に視線を上げると、



 ジーッ



 高価そうなスーツを着ている女性と目が合った。


 多分この手紙を今入れたばかりだったのだろう。


「あっ…どうもおはようございます」


 とりあえず俺は挨拶をする。


「えっ? あっおはようございます。今日はいいお天気ですね」


「お手紙をたった今拝見しました。ですが私にも都合があるのでお断りさせてもらいたいのですが…」


「そこを何とかして貰えないですか?」


「いや…しかし」


 やめて。そんな懇願するような目で見ないで。何故俺にこだわりを持っているのだろうか。他にも男はいるだろうに。


「ほら、あの…別に俺じゃなくても良いじゃないですか? 」


「いえ…悠人様でないといけないんです」


「はい?」


 どうゆうことだ?


「…また来てもいいですか? 今日は平日、悠人様にも予定があると思いますので」


「えっ…ええ、構いません。では今週の日曜に来てもらえますか?」


「あっ、ありがとうございます!!」


 深々と頭を下げる女性。その様子から何か切羽詰まっている感じがしてならない。


「えっと、林美奈子はやしみなこと言います」


 と言うと同時に名刺を渡してくる。それを受け取り、


「ではまた日曜に!」


 彼女はご機嫌な表情を見せ鼻歌を歌いスキップして去る。まだ行くとは言ってないのにあれだけ喜ばれるとは。


 はぁ…優柔不断なばかりにまた面倒ごとを先延ばししてしまった。


 名刺を見る。あっ…あの人学園長なんだ。


 とりあえず話だけだ。日曜は真夏も休みだしこの後話して、


「なーに話してたのかなぁ?」


「おっ、真夏」


 振り向くと直ぐ後ろに真夏がいた。


「ポストの中身取りに行くだけなのに妙に長いなぁって思ったら何の話?」


「聖アテネ女学園からのお誘い」


「聖アテネ…貴族の学校からのお誘い?」


「知ってんの?」


「エリナの母校なの。前に少し話を聞いたことがあるのよ」


「なるほどな」


 俺は真夏に手紙を渡す。


 俺から受け取った真夏は、その手紙を少し目を通し、


「男性サンプルね」


「つまりそゆこと、詳しい話は日曜に聞こうと思ってな。……断りきれなかったよ」


「悠君がしたいようにすればいいの。日曜は空けておくから」


「ありがとう」


 …聖アテネ女学園、今日マリアに聞いてみるか。





 ーー学校にてーー


「聖アテネ女学園ですか?」


「おう、何か知ってる?」


「知ってるも何もお母様の母校であり、私が通う予定だったのです。でも急にどうしたんですか?」


「実はその女学園の男性サンプルになって欲しいって手紙が」


「えっ!?」


 一応持ってきた手紙をマリアに渡す。マリアは食い気味にその内容を確認して、


「でもその様子だとまだ返答していないようですね」


「当たり」


「いつからですか?」


「知らない」


「……やめておいた方がいいです。貴族の学校ですので一般には知られていない場所にあります。もし監禁でもされたら助けを呼ぶことも出来ないでしょう」


「監禁って……そんなことは」


「お母様から聞いたところその学園に通っている間に4件ほどあったらしいですよ?」


「ああ、断るね!」


 ああ、恐ろしや恐ろしや。一生をそこで暮らす何てことあったら困るじゃ収まりきらないしね。



 pipipi!



 おっ…エリナさんから通知がきた。エリナさんにも聞いてみようと思って連絡しといたんだよな。


 えっーと……なになに、




【絶対に参加しないで下さい】




 えっ? 貴族学校ってそんなにも男の扱い悪いの? 怖いんだけど。


「マリア…俺、貴族が怖くなってきたよ」


「お金と権力がある分好きなことができますからね」


「まぁ、行かなきゃいいだけだしね」


「私も悠人様とお別れだなんて嫌ですから」


「俺も嫌だな、マリアと話せなくなるのは」


「ふふふ、ありがとうございます♪」


(可愛い)





 ーー日曜当日ーー


「______と言うわけでお断りしたいのですが...」


「そっ…そんなっ!?」


 あからさまにガッカリしている林さん。仕方ないことですよ。監禁されることがあるって話聞いちゃったら。


 ちなみに真夏も隣にいるが、ずっと黙っている。


「どうにかなりませんか?」


「どうにもなりません」


「話だけでも……」


「そこら辺は聞きます。そういう話でしたから」


「ありがとうございます」


 この前言ってた「俺じゃないとダメ」って話を聞かせてもらおうじゃないか。


「この前言った悠人様じゃないといけないのは…今回参加する学園の生徒の殆どが悠人様のファンなのです」


「あ……ウエディングドレスの一件で?」


「はい」


「でも何で今になって?」


「流石に7歳の男子を招き入れるのは心細いだろうとの配慮です」


 ……まさか貴族からのファンが出来るとは。しかも変に気を使われてるし。


「でも…それだけなら俺じゃなくても触れ合い会は他の男性でもいいんじゃないですか?」


「それが…悠人様がいいとの一点張りで話を聞いてくれないんです」


「そしてみんなお嬢様だから断りづらいと?」


「はい」


 大変なんだな。貴族の学校で働く人って。


 ……。


「ところで何故俺が断るか理由わかりますか」


「やはり…監禁事件ですか?」


「はい、聖アテネ女学園で起こったことのある監禁です。俺は身の安全の為に断ろうと思っています。分かりますね?」


「……はい」


「会場が別になれば……参加するかもしれないです」


「! 本当ですか!?」


「全く悠君はお人好しね」


 真夏が溜息を吐きながら言う。


「ごめん」


「いいのよ、最初から分かってたから」


 どうやら見透かされていたようだ。


「会場は…悠人様がパーティに初めて参加なされた場所ではどうでしょう?」


「良いですね。そこなら俺も少なからず安心して参加出来ます」


「ではそのようにいたします!!」


「それで…いつやるんですか?」


「はい、来月日曜日になります」


「分かりました。その日は空けておきます」


「送り迎えはいりません。私も付き添いで参加させていただきますので」


 真夏がそう言う。


 なるほど、それなら俺もさらに安心して参加出来るな。


「分かりました。本当にありがとうございます!!」


 まぁ…大変そうだし、これくらいは大丈夫だよね?




 こうして俺は…聖アテネ女学園の触れ合い会に参加することになった。


 実を言うと不安だがな。




 ーー後日ーー


「悠人様らしいと言うのでしょうか...」


 絶賛マリアに呆れられています。


「いやぁ…断りきれなかったよ」


「私も参加します!」


「…へ?」


「私がいるだけでも皆様に少しは抑止力が働くはずです。ドレス姿見たいですし!」


「うん、理由絶対に後者だよね? でもお願いします」


「お母様にも連絡を」


 と言って携帯で連絡をするマリア。


「いやエリナさんは忙しいだろうに」


 毎日仕事で外国とか行ったり来たりしてるらしいし、


「返信来ました!」


「速ぇよ!」


「えっ…と、【参加する日教えて? その日のスケジュール取り消すから】とのことです」


「エリナさんマジパネェっす」





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